お屋敷に着くとそこはとてつもなく豪邸だった。


 こんな遅い時間でも門には守衛さんみたいな人が2人。


 ご主人様の家もそこそこ豪邸ではあるが、ここは全く比べ物にならないぐらい広かった。




保乃「この部屋使ってな。あと先お風呂入っといで。」


森田「すいません、ありがとうございます。」


保乃「あ!そう言えば自己紹介まだやったな。田村保乃です!」


森田「森田ひかるです。」


保乃「ひかる…じゃあひぃちゃんやな!あれ?もしかして森田商事の社長の娘さん?」


森田「いや、そういうわけでは…」


保乃「なんや、そっかぁ。」


森田「保乃さんは…」


保乃「おじいちゃんが田村財閥の社長やで。」




 田村財閥って確か明日の商談の…。




保乃「そんなことよりお風呂入らんとやな。廊下出て左真っ直ぐ行ったらわかると思うわ。」


森田「…い。」


保乃「ん?」


森田「ごめんなさい、なんでもないです。」




 本当はお風呂なんか入りたくない。


 というか入れない。


 でもこんな私を家に招き入れてくれて寝床まで用意してくれたのに、この汚い身体でいるのは失礼だろう。


 私は覚悟を決めてお風呂へ向かった。






 保乃さんの言う通りに進むとお風呂場に着いた。


 中は予想を超える広さで、テレビで見たことあるような温泉旅館並みだった。


 恐らくこんな豪華なお風呂に入れるのは最初で最後だろう。


 私は服を脱ぎ、出来るだけ湯船を視界に入れないようにして中に入った。




森田「ハァハァ…大丈夫…。」




 少し息苦しいが、大丈夫と自分に言い聞かせる。


 しかし、壁から流れ出てくるお湯の音によって私の胸は締め付けられていく。


 私は水が苦手なのだ。


 昔からご主人様に水や熱湯をかけられ、時には湯船の中に沈められたこともあった。


 その頃から水を見たり音を聞いたりするだけで息苦しくなってしまうのだ。


 だからお風呂も数日に1回、湿らせたタオルで身体を拭く程度。




森田「ハァハァ…。」




 呼吸を整えようと深呼吸をするも、どんどん苦しくなっていく。




森田「ハァ…オェ…」




 視界が揺らぎ出し、座っていることすら難しくなってきた。


 でもここで倒れてしまうと保乃さんや田村財閥の方々に迷惑がかかってしまう。




森田「あと…少し…。」




 私は力を振り絞り、床を這いながら脱衣所に向かった。


 しかし、なんとかたどり着いたものの意識が朦朧とし、動けなくなってしまった。