きがつけば私は車の中にいた
ゆめのはなし
少し癖のある黒髪が窓から入り込む風で靡いた。
助手席に座る友人はいつも通りの緩い対応で話を続ける。
名前は、知ってる。しかしあえて明かさないことにしよう。その方がきっと面白い。
運転席には、名も知らぬ友人。
これまた黒髪の男は整髪料で髪をいじっている。
知らないはずのその人と、私は仲良く話してる。お友達らしい。
「しかし、こいつにこんな可愛い友達がいたとは知らなかったよ」
「可愛いとか久しぶりに言われた」
「ラジカさんかーわいー」
「なんだその心のこもってない可愛いは」
「あ、ばれた?」
むかつく、なんて言いながら三人で他愛のない話を続ける。
私は一人後部座席に座り、悠々と流れる窓の外に目をやった。
ふと、違和感。
「、あ」
違和感の正体は、赤。五つの、赤。規則正しく並べられた、五人の、赤。
赤が赤に染まる。サンタが五人、死んでいた。
なんだ、あれは。上手に思考が回らない。事態に理解が追い付かない。上手に息が出来ない。
あれ?呼吸ってどうやるんだっけ?
「どーしたの?ラジカ?」
名を知る友人が私の異変に気づいて後ろを向いた。
そして私の視線の先を探し、捉えたらしい、彼の瞳がぐらり、揺れる。
そうしたあとすぐに彼は名も知らぬ友人に叫んだ。
「×××!車止めろ!!早く!!!」
「はぁ?何言ってんだよ急に」
「馬鹿!外見てみろ!!!」
その一言に名も知らぬ友人は窓の外に目を凝らし、探した。あの、赤を。
すると近くにあった空き地に車を止めて、二人が駆けだす。
名を知る友人が駆けだす前に、私を見て、言う。
「お前は?どうする」
「、車、おいてけないでしょ」
「・・・そうか」
二人の姿は、やがて小さくなっていった。
ひとりになって、落ち着くと、思い出される、先ほどの赤。
肌の色は、白。首と爪が、赤。首の皮膚と肉は掻き毟られて、指と爪の間には肉片が挟まっていた。
ああ、ああ、あんなに、酷く、死んでしまうなんて。
なんて、いたいたしい。
呼吸が、儘ならない。駄目だ、二人が帰ってくるまでに、普通に、気丈に、振舞わなければ。
「ラジカ」
戻ってきた二人に、外の空気を吸うよう促され、私は車から降りた。
「・・・大丈夫?」
「ん、へ・・・き、」
自分で言って、馬鹿だと思った。手は震え、膝は笑い、立つことで精一杯。
「ばーか、全然だいじょぶそうに見えねんだけど?」
「それ、は、・・・」
震える唇を隠すため、頬に手を添えた。その手すら震えているのだから、あまり意味は無かった。
するとその手の上に添えられたのは名を知る友人の、私よりはるかに大きな掌。
その掌は、器用に指を動かしていつの間にか私の目尻を濡らす滴を拭った。優しい手だった。
「うぁ、・・・ぁ」
「意地っ張り、可愛くねぇの」
「はは、××ちゃんかわいいーねぇ」
「お前それ凄い不謹慎」
「えー?だってかわいいじゃん」
その場の空気をぶち壊すような発言に少し肩が軽くなった。
「な、ん・・・か、ごめ、」
おずおずと謝ってみれば、二人は笑って私の頭を撫でた。