自分の人生で一番辛かった事。


それを解決できるような仕事を「自分のビジネス」にしてみてはどうだろうか。


自分自身が体験した事だからこそ、その事に対する重要性も体で理解できる。


そしてそれを解決できるプロになり、人の助けになれるのであれば、それは自分の誇りになるだろう。


そしてそれは人に与えられた夢でも志でもない。

自分の体験を通して培った自分だけのオリジナルである。





新幹線の中、私は静かに目を閉じました。


そして自然と考えるのを止めたんです。

頭で考えたって出てこない。

じっと頭にイメージが浮かぶのを待ちました。

すると、答えはすぐに出て来たんです。






自分の人生で一番辛かった事。

それは父が仕事で辛そうな顔をしている事でした。

これまでの人生、私だって色々な経験をして来たし、辛い思いをした事もあります。

でもね、私にとって一番辛かった事は、やはり父のその顔を見る事だったのです。





父は成功したビジネスマンでした。

努力家だったしハングリー精神があった。


たった10年間で7階級も昇進した記録は異例中の異例だそうで、父の血のにじむような努力がうかがい知れます。

60歳を越え、体調を崩しながらもいまだに活躍し続ける現役の強者です。





でもね、父の若い頃は本当に辛そうだった。

本当に辛かったかどうかなんて本人にしか分からないけれど、少なくとも私にはそう見えた。

事実、写真が全てを物語っています。

ある時を境にパタリと父の笑顔の写真が無い。

私の記憶でも父の笑顔が思い出せるシーンがほとんど無いのです。







私は自分の人生で、父の辛い顔を見るのが一番辛い事でした。

別に感傷に浸るわけでは無いし、自分を哀れむわけでもありません。

だけれども、とめどもなく涙が溢れてくる。

「自分の人生で一番辛かった事」という問いに対し、私の体がこんなにも反応している。

これを信じずに他に何を信じるというのか。


私はこの時の体験を軸にしながら、自分のビジネスの構想を広げていく事に決めたのです。





夢無き男 その18