ニーチェはアルトゥル・ショーペンハウアーなどから強く影響を受け、その幅広い読書に支えられた鋭い批評眼で西洋文明を革新的に解釈した。実存主義の先駆者、または生の哲学の哲学者。ニーチェは、神、真理、理性、価値、権力、自我などの既存の概念を逆説とも思える強靭な論理で解釈しなおし、悲劇的認識、デカダンス、ニヒリズム
、ルサンチマン、超人、永劫回帰、力への意志などの独自の概念によって新たな思想を生みだした。『曙光
』(1881年)において、ニーチェは動因としての快楽主義の役割を斥けて「力の感覚」を強調する。道徳と文化の双方における相対主義とキリスト教批判もまた完成の域に達した。この明晰で穏やかで個人的な文体のアフォリズム集でニーチェが求めているのは、自分の見解に対する読者の理解よりも、自らが特殊な体験を得ることである。この本でもまた、後年の思想の萌芽が散見される。