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バス停までそんなに遠くないので皆走っていく事にした。足立だけが北区の不知火池行きに乗り、他の者は京都駅方面のバスに乗って帰って行った。足立は、バスの中でいいバイト仲間ができて良かったと喜びを感じていた。
幸いバスを降りる頃は降っていた雨も小ぶりとなり、バス停からアパートまで徒歩10分と言うそんなに遠くない距離なのだが、バス停から足立の借りているアパートの周辺は、人家が少なく街灯が数十メートルおきにしか無いし、街の明かりも無い。時間は夜11時を過ぎている。こんなに夜遅い時間は初めてだ。
「コツコツ…」と言う足音で静かな夜道を歩いていると、しばらくして足立は自分の後ろから同じく「コツコツ…」と言うヒールの足音に似た足音がした。フッと気になって後ろを振り向いたが街灯が数メートル後ろにあるだけ、誰もいない。足立はまた歩き始めたが、急に誰かが近くで自分を見ているような気がし始め薄気味悪さを感じた。次第に足早となり、ついにはジョギングのようなスピードで走り始めた。後ろを見ると、誰かが自分の後ろに立っていそうな気がする。
やっとアパートの明かりが見えてホッとしたが、急いでポケットから鍵を出し、ドアを開けた。ドアを開けた瞬間、今部屋に座っていた誰かが、すぐ左にある洗面所に入って行った。そんな空気の流れのような気配があり、足立は、ドアを閉めてそのまま体の右側に体重を移すようにしてそっと洗面所の奥を覗き込んだ。気のせいか誰もいない。
「そりゃそうだろうな、俺以外に誰もいないのだから…」
そう思った足立の額には汗が流れている。走って帰って息が乱れていたが、息を殺していたせいで一気に大きな呼吸をし始めた。
「気のせいか…、しかし、なんか薄気味悪いな。」