着信5 2 | PLUTO KISS

着信5 2

edgeを飛び出し、宝条はターボダッシュに乗り、貿易港ロゼッタへと向った。
重剣を背中に、手には睦月と葉月の思いを添えて。
社長が大事を起す前に、なんとか事態を食い止めて、四方を助け出さなければ。
そう思っている矢先のことだった。
「よぉ。急いで何処に行くんだ?」
突然頭上から声が降ってきた。
見上げると、そこには箒に跨って空を飛んでいるクロノスがいた。
「な・・・?!」
「あ、以外な感じで驚いてるな?語尾にいつもの変なクセつけてないからか?ごめんなぁ、アレ演技なんだわ。」
そういい、クロノスは跨っていた箒を掴むと、そのまま宙で回転し、箒で宝条の進行を妨げた。
とっさに避けるが、思わずバランスを崩し、宝条はそのままターボダッシュから投げ出される。
「クロノス・・・どうして?」
「ああ、アンタがノアを知らないって言うから、おかしいなぁって思って悪いがアンタのことを調べさせてもらったよ。そしたらなんと・・・80年以上も前にも存在しているんだよ。『宝条光』っていう、実験サンプルが。」
実験サンプル。
その言葉に宝条は酷く反応を示した。
「・・・どうして・・・?」
「ふふふ・・・特別に教えてやるよ。俺はedgeに普段は勤めているけれど、本業は、君も知っている人体実験『プロジェクト・アルカナム』を行っていた研究所の処理班なんだ。」
微笑んでそう言うクロノスに、宝条は息を飲んだ。

プロジェクト・アルカナム。

それは、宝条自身が受けた過酷な人体実験。
80年以上前、研究所の人間が何処からか人を買い、人を攫い、人を騙し、研究所に多くの子供たちを集め、そこで人体実験を行っていた。
人体実験の内容は『遥かに人間を超えた力を持つ新たなる人間』の生成。
不老不死、人離れした戦闘能力、超能力、研究者たちの様々な夢が子供の身体を犠牲に生成されていった。
その内の一人に、宝条もいた。
正確には、その日まではまだ「豊穣光」だった。
彼自身が人体実験を施されて、人間でなくなってしまう前、同室で、漢字が違えど、同じ読み方をする同性の子供がいた。
それが、本当の宝条光。
同室で二人への人体実験は行われた。
豊穣も宝条も、同じメニューの人体実験を施された。
それは、新型の細胞移植だった。
名前こそ知らないが、その細胞を移植することで、いつまでも長く生き続けられ、より人間から離れていくらしい。
その細胞を移植されて、宝条は無事でいられたものの、豊穣の方は死にはしなかったが、拒絶反応を起こし、そのまま反応がなくなってしまった。
そんな彼を研究員たちは、投与した細胞を液体状にしたポッドの中に漬け込み、本物のモンスターにさせようとしていた。
行動の意味がわかっていた宝条は、ポッドから豊穣を連れ出し、共に研究所から逃げ出した。
子供二人が逃げ出したことで、研究所内部では騒動となり、プロの賞金稼ぎを雇い、子供たちを見つけ出した。
しかし、賞金稼ぎを雇ったことが間違いだった。
二人の子供は殺されてしまった。


「あの日が君と彼の終わりと始まりの日。そうだろう?豊穣光。」
頬を掠めたのは、食器のシルバーだった。
よく見れば、クロノスの手にはこれでもかというくらいシルバーが握られている。
「・・・闘うしか、ないんだろう?」
「そうさ。闘うしか道はない。さぁ、最終演奏を始めようか。」






いったい何処で道は歪んでしまったのか。
それはきっと誰にもわからない。