着信4 2 | PLUTO KISS

着信4 2

一方その頃、クロノスの方も怪しい動きをしていた。
「やっぱりそうだ・・・あの宝条光って子・・・何処の国の名簿を見ても、戸籍がないし、出生の記録もない。」
飛行艇の中の自室で、パソコンの画面と向かい合っているクロノスがそう呟いた。
「ただ、もしかしたら・・・あの子の再誕・・・それがこの時期の、この子だとしたら・・・。」
クロノスは確信した様子でパソコンの画面をそのままに自室から飛び出していった。
パソコンの画面に映し出されていたのは80年以上前に存在していた2人の子供の記述。
よく似た、2人の。


「ファイナルプログラム・・・『フラッド』を?」
「ああ。早く起動できるように修復を急いでもらいたい。動力源は特殊なものを既に動力炉に入れてある。幾らでも電圧が上がろうが、同時機動しようが動力は落ちない。フル稼働で作業に取り組んでくれ。」
睦月に頼み込んでいる社長。葉月のいない研究科の研究室の実験台の上に座ってラーメンを鍋から直接食べようとしていた時、突然社長がやってきた。
いつもなら携帯のメールか電話機能を利用してあらかじめアポイントを取ってから研究室にくる真面目な人なのに。
不思議に思いながらとりあえずは社長の言葉にイエスで答えて、早々に退室してもらったが、何かがひっかかる睦月。
「お前はどう思う?葉月。」
いないと思われていた葉月は、山積みにされた薬品箱の向こう側で飴細工を1人黙々と作りながら2人の話を聞いていたのを睦月は初めから知っていた。
睦月からの呼びかけにため息をつきながらも、葉月は手を休めずに答える。
「上からの命令じゃないのか?」
「上・・・と言うと?」
「だからつまり、国家のお偉いさん。」
「政府側から?」
「そう、政府の犬どもさ。例え話だが、よく物語上であるだろう?隣国と付き合いが悪くなり、段々と喧嘩が紛争へ、紛争が大規模な戦争へ。そしてその戦争の終止符を打つために最後に出てくるのはやっぱり最強武器。いわゆるラストウェポンってやつ。社長はその合間をはしょって、いきなりラストウェポンに手を出すつもりなんじゃねぇの?」
さもどうでもよさそうな声色で淡々と口を動かす葉月だが、彼の目は確実に疑いと反抗の目になっている。
「やっぱり葉月もそう思う?俺もね、それを考えたんだ。だから、社長の話を聞きながら、今の世界状況を思い返してみたんだけれど、ラストウェポンを使うほどの紛争も大きな戦争はないんだ。」
睦月の話を聞きながら幾つかの飴細工を完成させた葉月は、指を鳴らして手の内に小さな箱を出すと、その中身の小さなひとつを睦月に向って投げた。
お互い背中を向け合った状態で喋っているというのに、睦月はその小さなものをまるで背中で見ていたかのように片手で受け取ると、手の平に転がした。
そこにあるのは、青薔薇の指輪。そして葉月が握るのは紫の指輪。
「・・・フラッドを起動させる理由が分からない。でも、俺はもしかしたら社長が・・・何か大事を始めようとしているのかもしれないと考えている。だから、覚悟がいると思うんだ。睦月、すまないが、指輪を。」
葉月の言葉に睦月は頷いて自分の指に指輪をはめた。葉月も自分の指に指輪をはめると、出来上がった飴細工を片手に、睦月に一本差し出す。
「これから頭をフル回転させるんだ。二進数・稼働率の計算、その他云々をするためには糖分は必要だろ?」
受け取った小鳥の姿をした飴細工は睦月の口の中に放り込まれると無残にも砕け散った。
「でも、下手をしたら俺たちもこうなる。」
口の中で砕け散った小鳥を見せると、葉月は薄く笑って残りの飴を口の中へと放り込むと、研究室の奥へと姿を消していった。
睦月も、研究室の扉に鍵をかけると、研究室の奥へと姿を消していった。
研究室の奥にある厳重な扉は重たい音を立ててゆっくりと閉まった。


「葉月」
「睦月」


「「ラストオーダーだ。」」