着信3
鋼の音が響きあうトレーニングルーム。宝条と四方は午後のシエスタを訓練に当てていた。
四方はロッドを構え、宝条はミスリルバスターソードを構えて、激しい戦いを繰り広げる。
そんな2人の様子を、他の社員は思わず無言で見入っていた。
宝条の身体よりも大きなミスリルバスターソードを軽々と振り回す宝条も凄いのだが、そのミスリルバスターソードを短いロッド一本で受け止め、弾き返し、尚且つ反撃し返す四方も、たいしたものだ。
お互いの武器が、デジタル時計が深夜0時を知らせたのと同時に、交じり合い、トレーニングルームに鋼の音を響かせると、2人は同時に鋭い目つきから柔らかな表情になり、突然笑い出した。
「っ・・・ふ・・・あはははは!!!ちょっ・・・!ないっ!それはないよ四方さん!!何?!0距離魔法連射って!!ビックリしましたよっ!」
「クククッ・・・!!お前こそなんだよ、避けたと思ったらすぐに腹貫こうってしやがって!ちょっとスーツ裂けたし!!」
2人の雰囲気は穏やかなものなのだが、今までの2人の様子を伺っていた周りの者からすれば、今の背筋も凍るような戦い・・・否、トレーニングの中の何処に笑いの要素があったのか、全く理解できない。
その為、笑い出した2人を見て、周りは完全に引きつった顔をしている。勿論、2人はそんなこと気づきはしないのだが。
「にしてもあの2人、本当に強いよな・・・。」
「ああ、まるでedgeの魔物だな。」
これは周りの社員の会話。周りにいた社員たちは口々にそう言う。
そんな彼らを他所に、2人はトレーニングルームから出ると、共同大浴場へと向った。
「やっぱりいい汗かいた後の温泉は気持ちいいね!」
「・・・僕、こんな大きなお風呂始めてです。」
「あ、そっか。いままで部屋のシャワーだったからねー・・・ちゃんと温泉もあるんだ。こっちにも来ていいんだからな?」
「はいっ!」
お風呂でひと汗かいて、脱衣所で着替えていると、宝条の視界に初めて見る人物が入ってきた。
髪の毛が肩まで伸ばされていて、一見色もただの緑に見えるのだが、よくよく見てみると、根元は深緑で、毛先に向ってだんだんと薄くなっている。
耳につけられているピアスは印象的なルビー色のガラス細工。瞳の橙は白い肌によく映えていた。
そんな彼の顔には、不思議なメイクが施されている。
クロノスと同じマジックメイク班の人間だろうか?と、一瞬考えたが、四方が後ろから違うと断定した。
「あいつが気になるのか?まあ、アレだけ凄いメイクしてりゃあ気にもなるのは分からなくも無いが・・・彼は同じ特殊総務課の戦闘社員の1人だよ。確か今まで遠征任務で東洋の方へ赴いていたんじゃないかな。ついでに商売もやってくるって言ってたな・・・。」
四方が色々と彼について教えている間に、彼はすっかり着替え終えてしまったらしい。珍しくも、彼も宝条と同じでスーツを着用しないらしく、ゴスロリ系の服を着ていた。
彼が脱衣所から出て行こうとすると、こちらに気がついたのか、微笑んだ。
「やぁ、四方っち。久しいね。」
「やぁやぁ、ルナッち。お土産はー?」
「お土産ぇー?いやいや、無いよ?」
「酷い!任務に出る前に買ってきてくれるっていったじゃない!いったじゃない!」
「あっははは!!冗談!ちゃんと買ってきてるよ。四方っちの執務室の冷蔵庫入れて置いた。」
「いやっふー!ルナッち大好き!」
上半身裸のままルナに飛びついていった。
(アンタまるで子供だな・・・。)
宝条は冷ややかな眼差しで四方を見ていた。
ルナは宝条に気がついたようで、四方を引き離すと、宝条に向って話しかける。
「初めまして・・・だよね?俺は特殊総務課のルナ。戦闘スタイルは道化師。まぁ、道化師のやってるようなことで戦うって感じかな。」
だから格好も顔に施されたメイクも派手なのかと理解した。
「初めまして。僕は宝条光。特殊総務課・・・戦闘スタイルは前衛型魔法重剣。」
「ああ、やっぱり君が!話は四方からよぉく聞いてるよ!」
ルナは、宝条の腕を引くと、くるくると回りだした。
「わー!ほんとに小さーい!!かっわいいー!!」
「ちょ・・・やめ・・・あばばばばばっ・・・。」
ぐるんぐるんと振り回される宝条は完全に目を回している。ルナはそんな宝条の様子に一切気がつかないといった感じで容赦なく回り続ける。
「おーい、ルナ。光は玩具じゃないんだぞー・・・放してやれ。」
四方の声にはっとした様子でルナは急いで宝条を放してやった。
「ごめんねっ!つい・・・!」
「悪いな。ルナは可愛いもの大好きだから。」
「・・・あんまり嬉しくない。」
男が男に可愛いだの言われて嬉しいはずがない。その気持ちは分からないでもないのだが、ルナには言っても無駄だといった様子で四方は宝条に首を振って「諦めろ」と伝えた。
それから3人は脱衣所から出ると、しばらく雑談でもとロビーで話していたが、宝条がいつの間にか夢の世界に落ちていたため、そこで今日はお開きという感じに。
「四方は新しい相棒がいるんだねー・・・いいなぁ。しかも可愛いし。」
「おいおいやらんぞ光は。」
「えー・・・まっ、いいもんね!まず僕の戦闘スタイルに合わせてくれるような人材ってなかなかいないから、最初から期待はしてないけど。」
「相変わらず1人が好きなんだな。」
「ええ。道化師は・・・1人で2人役。役者より、よくできた役者ですからね。じゃ、おやすみなさーい!」
そう言い、立ち去ったルナの後姿を見送る四方の横で宝条が身じろぐ。
「・・・孤独なの?」
「え?起きてたのか?」
「・・・孤独は・・・辛いよね。ただ先の見えない闇の中で、1人彷徨うんだ。それって・・・とても悲しいことだよね。」
寝ぼけ眼でそう言うと、宝条は再び夢の世界へと落ちていった。
(・・・・・・ルナと同じで、光も、今まで1人だったんだろうか・・・。)
ルナの過去を知らない。宝条の過去を知らない。勿論、2人が口にしてくるまで四方は聞くつもりなど無いのだが、2人の闇を取り除ければいい。いつか、そうなれば、2人は心の底から笑えるんじゃないかと考える。
宝条が隠している右目も、最初は単なるものもらいか、ちょっとした怪我かと思って、取った方が治りが早いと言ったが、彼は病気でも怪我でもないといった。
先刻、お風呂に入っている間も、片目は瞑ったままだった。
ルナだって同じなのだ。ルナはいつも自身を隠すように派手なメイクと、奇抜な衣装で周囲の人間を楽しくさせる。だが、それは偽りの姿。自身の本性を見られないように必死に隠しているだけ。
「・・・どうして俺の周りには、こう手のかかる子がいるんだろうな・・・。」
四方は宝条を背負うと、部屋へと向った。
「・・・んあ?」
宝条が気がつくと、いつの間にか自室のベッドだった。
いつ戻ってきたのか分からない。記憶を辿っていくと、お風呂上りで途切れているのを思い出し、そのまま寝てしまったのだと把握した。
「・・・あ。」
リビングへと向うと、ソファーで四方が珍しく眠っていた。
仕事をしていたのだろう。パソコンをつけっぱなし、読んでいたであろう資料はテーブルから落ち、ソファーにもたれかかっている四方の顔に掛かっている眼鏡はずり落ちている。
(・・・四方さん眼鏡するんだ。)
珍しい四方の眼鏡姿をもっと間近で拝もうと近寄って顔を覗き込むと、黒い瞳と目が合った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
お互い何も言わないまま数十秒。宝条にはそのたった数十秒が数十分、数時間にも感じた。
四方が眼鏡を置いて、ふぅ・・・と、一息つくと宝条の肩を掴んできた。
「何、人の顔みてんだ?」
「ひぃっ・・・!!すすすずびばぜん・・・!!」
「何言ってるのかわかんねーよ・・・。落ち着け。」
パソコンの横に置かれていた携帯食料を無理矢理口に詰め込まれ黙らせられた宝条は、もごもごと口を動かしながら必死に空気を求める。
そんな様子の宝条を他所に、四方は着崩したYシャツを調えながら、キッチンのほうへと消えていきながら、昨日のことを説明した。
「・・・じゃあ僕を運んでくれたのは四方さんだったんですか?なんか、すみません。」
「気にすることはないさ。軽かったから問題ない。」
「そういうの女性に言ってくれませんかね。」
宝条が寝癖を整えている間に、四方は軽い朝食を用意し、テーブルに並べた。
手を合わせて2人で食べ始め、しばらくしてから室内に電子音が鳴り響く。
「・・・誰か来た?」
「みたいだな。出てくる。」
四方が玄関へと向かい、扉を開くと、そこにはルナがいた。
「おはよーちゃん!四方っち!今日ね、今日ね!久々の休暇だから市街地の公園でサーカスきてて、そこで一緒に大道芸やるのっ!見に来てね!」
既に着替えてばっちりメイクも施したルナは元気よく室内へ入ってくると、四方にチラシとチケットを渡してきた。
半ば強引だったが、四方はそれを受け取ると、嵐のように去っていくルナの後ろ姿を見送った。
四方はロッドを構え、宝条はミスリルバスターソードを構えて、激しい戦いを繰り広げる。
そんな2人の様子を、他の社員は思わず無言で見入っていた。
宝条の身体よりも大きなミスリルバスターソードを軽々と振り回す宝条も凄いのだが、そのミスリルバスターソードを短いロッド一本で受け止め、弾き返し、尚且つ反撃し返す四方も、たいしたものだ。
お互いの武器が、デジタル時計が深夜0時を知らせたのと同時に、交じり合い、トレーニングルームに鋼の音を響かせると、2人は同時に鋭い目つきから柔らかな表情になり、突然笑い出した。
「っ・・・ふ・・・あはははは!!!ちょっ・・・!ないっ!それはないよ四方さん!!何?!0距離魔法連射って!!ビックリしましたよっ!」
「クククッ・・・!!お前こそなんだよ、避けたと思ったらすぐに腹貫こうってしやがって!ちょっとスーツ裂けたし!!」
2人の雰囲気は穏やかなものなのだが、今までの2人の様子を伺っていた周りの者からすれば、今の背筋も凍るような戦い・・・否、トレーニングの中の何処に笑いの要素があったのか、全く理解できない。
その為、笑い出した2人を見て、周りは完全に引きつった顔をしている。勿論、2人はそんなこと気づきはしないのだが。
「にしてもあの2人、本当に強いよな・・・。」
「ああ、まるでedgeの魔物だな。」
これは周りの社員の会話。周りにいた社員たちは口々にそう言う。
そんな彼らを他所に、2人はトレーニングルームから出ると、共同大浴場へと向った。
「やっぱりいい汗かいた後の温泉は気持ちいいね!」
「・・・僕、こんな大きなお風呂始めてです。」
「あ、そっか。いままで部屋のシャワーだったからねー・・・ちゃんと温泉もあるんだ。こっちにも来ていいんだからな?」
「はいっ!」
お風呂でひと汗かいて、脱衣所で着替えていると、宝条の視界に初めて見る人物が入ってきた。
髪の毛が肩まで伸ばされていて、一見色もただの緑に見えるのだが、よくよく見てみると、根元は深緑で、毛先に向ってだんだんと薄くなっている。
耳につけられているピアスは印象的なルビー色のガラス細工。瞳の橙は白い肌によく映えていた。
そんな彼の顔には、不思議なメイクが施されている。
クロノスと同じマジックメイク班の人間だろうか?と、一瞬考えたが、四方が後ろから違うと断定した。
「あいつが気になるのか?まあ、アレだけ凄いメイクしてりゃあ気にもなるのは分からなくも無いが・・・彼は同じ特殊総務課の戦闘社員の1人だよ。確か今まで遠征任務で東洋の方へ赴いていたんじゃないかな。ついでに商売もやってくるって言ってたな・・・。」
四方が色々と彼について教えている間に、彼はすっかり着替え終えてしまったらしい。珍しくも、彼も宝条と同じでスーツを着用しないらしく、ゴスロリ系の服を着ていた。
彼が脱衣所から出て行こうとすると、こちらに気がついたのか、微笑んだ。
「やぁ、四方っち。久しいね。」
「やぁやぁ、ルナッち。お土産はー?」
「お土産ぇー?いやいや、無いよ?」
「酷い!任務に出る前に買ってきてくれるっていったじゃない!いったじゃない!」
「あっははは!!冗談!ちゃんと買ってきてるよ。四方っちの執務室の冷蔵庫入れて置いた。」
「いやっふー!ルナッち大好き!」
上半身裸のままルナに飛びついていった。
(アンタまるで子供だな・・・。)
宝条は冷ややかな眼差しで四方を見ていた。
ルナは宝条に気がついたようで、四方を引き離すと、宝条に向って話しかける。
「初めまして・・・だよね?俺は特殊総務課のルナ。戦闘スタイルは道化師。まぁ、道化師のやってるようなことで戦うって感じかな。」
だから格好も顔に施されたメイクも派手なのかと理解した。
「初めまして。僕は宝条光。特殊総務課・・・戦闘スタイルは前衛型魔法重剣。」
「ああ、やっぱり君が!話は四方からよぉく聞いてるよ!」
ルナは、宝条の腕を引くと、くるくると回りだした。
「わー!ほんとに小さーい!!かっわいいー!!」
「ちょ・・・やめ・・・あばばばばばっ・・・。」
ぐるんぐるんと振り回される宝条は完全に目を回している。ルナはそんな宝条の様子に一切気がつかないといった感じで容赦なく回り続ける。
「おーい、ルナ。光は玩具じゃないんだぞー・・・放してやれ。」
四方の声にはっとした様子でルナは急いで宝条を放してやった。
「ごめんねっ!つい・・・!」
「悪いな。ルナは可愛いもの大好きだから。」
「・・・あんまり嬉しくない。」
男が男に可愛いだの言われて嬉しいはずがない。その気持ちは分からないでもないのだが、ルナには言っても無駄だといった様子で四方は宝条に首を振って「諦めろ」と伝えた。
それから3人は脱衣所から出ると、しばらく雑談でもとロビーで話していたが、宝条がいつの間にか夢の世界に落ちていたため、そこで今日はお開きという感じに。
「四方は新しい相棒がいるんだねー・・・いいなぁ。しかも可愛いし。」
「おいおいやらんぞ光は。」
「えー・・・まっ、いいもんね!まず僕の戦闘スタイルに合わせてくれるような人材ってなかなかいないから、最初から期待はしてないけど。」
「相変わらず1人が好きなんだな。」
「ええ。道化師は・・・1人で2人役。役者より、よくできた役者ですからね。じゃ、おやすみなさーい!」
そう言い、立ち去ったルナの後姿を見送る四方の横で宝条が身じろぐ。
「・・・孤独なの?」
「え?起きてたのか?」
「・・・孤独は・・・辛いよね。ただ先の見えない闇の中で、1人彷徨うんだ。それって・・・とても悲しいことだよね。」
寝ぼけ眼でそう言うと、宝条は再び夢の世界へと落ちていった。
(・・・・・・ルナと同じで、光も、今まで1人だったんだろうか・・・。)
ルナの過去を知らない。宝条の過去を知らない。勿論、2人が口にしてくるまで四方は聞くつもりなど無いのだが、2人の闇を取り除ければいい。いつか、そうなれば、2人は心の底から笑えるんじゃないかと考える。
宝条が隠している右目も、最初は単なるものもらいか、ちょっとした怪我かと思って、取った方が治りが早いと言ったが、彼は病気でも怪我でもないといった。
先刻、お風呂に入っている間も、片目は瞑ったままだった。
ルナだって同じなのだ。ルナはいつも自身を隠すように派手なメイクと、奇抜な衣装で周囲の人間を楽しくさせる。だが、それは偽りの姿。自身の本性を見られないように必死に隠しているだけ。
「・・・どうして俺の周りには、こう手のかかる子がいるんだろうな・・・。」
四方は宝条を背負うと、部屋へと向った。
「・・・んあ?」
宝条が気がつくと、いつの間にか自室のベッドだった。
いつ戻ってきたのか分からない。記憶を辿っていくと、お風呂上りで途切れているのを思い出し、そのまま寝てしまったのだと把握した。
「・・・あ。」
リビングへと向うと、ソファーで四方が珍しく眠っていた。
仕事をしていたのだろう。パソコンをつけっぱなし、読んでいたであろう資料はテーブルから落ち、ソファーにもたれかかっている四方の顔に掛かっている眼鏡はずり落ちている。
(・・・四方さん眼鏡するんだ。)
珍しい四方の眼鏡姿をもっと間近で拝もうと近寄って顔を覗き込むと、黒い瞳と目が合った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
お互い何も言わないまま数十秒。宝条にはそのたった数十秒が数十分、数時間にも感じた。
四方が眼鏡を置いて、ふぅ・・・と、一息つくと宝条の肩を掴んできた。
「何、人の顔みてんだ?」
「ひぃっ・・・!!すすすずびばぜん・・・!!」
「何言ってるのかわかんねーよ・・・。落ち着け。」
パソコンの横に置かれていた携帯食料を無理矢理口に詰め込まれ黙らせられた宝条は、もごもごと口を動かしながら必死に空気を求める。
そんな様子の宝条を他所に、四方は着崩したYシャツを調えながら、キッチンのほうへと消えていきながら、昨日のことを説明した。
「・・・じゃあ僕を運んでくれたのは四方さんだったんですか?なんか、すみません。」
「気にすることはないさ。軽かったから問題ない。」
「そういうの女性に言ってくれませんかね。」
宝条が寝癖を整えている間に、四方は軽い朝食を用意し、テーブルに並べた。
手を合わせて2人で食べ始め、しばらくしてから室内に電子音が鳴り響く。
「・・・誰か来た?」
「みたいだな。出てくる。」
四方が玄関へと向かい、扉を開くと、そこにはルナがいた。
「おはよーちゃん!四方っち!今日ね、今日ね!久々の休暇だから市街地の公園でサーカスきてて、そこで一緒に大道芸やるのっ!見に来てね!」
既に着替えてばっちりメイクも施したルナは元気よく室内へ入ってくると、四方にチラシとチケットを渡してきた。
半ば強引だったが、四方はそれを受け取ると、嵐のように去っていくルナの後ろ姿を見送った。