5個目の夢 6 | PLUTO KISS

5個目の夢 6

シンが攫われた頃、シェリルも危険な状態にあった。

「うっ・・・ぐ・・・。」

蔵の中に入ってきた1人の農民。

鍬で幾度もシェリルを襲い、翼がボロボロになっていた。

もはや飛び立つことはできない。

いくらシンと契約し、力が倍増したといえど、シンの傍にいなければ、力は発揮できない。

「若紫様が消えると、白神様には貴方に与えている力が戻り、死者を蘇らせる力が倍増する。さぁ、若紫様。おやすみなさい。」

トドメの一撃といわんばかりに鍬を振り下ろす。

咄嗟にシェリルは避けた・・・はずだった。




パキンッ



首飾りが砕け散った。

それと同時に動きが止まるシェリル。

もう力尽きたのかと思い、近寄る農民だったが・・・シェリルの目がマムシのように鋭い目つきに変わった。

「・・・貴様・・・俺に勝てると思うなよ。糞が。」

蔵の中は一瞬にして、赤に染まった。



ぽたり・・・ぽたり・・・


髪を、頬を、顔を伝う赤。

シェリルは横たわる人間だったものをしばらく見下ろしていたが、踏みつけて蔵から出て行った。

「・・・ふん・・・貴様らの魂がシンに勝てると思うな。」

頬を伝う赤を拳で拭い、手についた赤を舐めながら、シェリルはゆっくりと歩み始めた。




同時刻、ウェルダーも大変危険な状態にあった。

必死にシンに呼びかけていた彼は、シンに声が届いたと同時に悲鳴を上げて途絶えた声。

その時、ウェルダーは一組の夫婦に襲われていた。

「・・・貴方たちは・・・。」

「あの子は何処?もうすぐ始まるの・・・生贄のあの子たちがいないと・・・。」

「あの子たちは・・・生贄になることで、新しい神になるんだ。それはとても名誉なこと・・・。」

意味の分からないことを口走る夫婦は、斧と鎌を構える。

「あの子が欲しい。」

呟きと同時に目にも止まらぬ速さで駆け出してきた夫婦のスピードにウェルダーは追いつけず、足と腕に切り傷をつける。

「いっ・・・?!・・・これは、不味いですね。」

ウェルダーは本契約をしているわけではないので、本来の力を発揮できない。

そして自分の能力値より遥かに上回る何かの力を得ている夫婦。彼はそれに勝てる見込みがない。

(・・・逃げないと!)

炎の壁を互いの間に出現させ、ウェルダーはその場から逃走を図った。

そして、何処にいるかも分からないシンに呼びかけた。

(気付いて・・・気付いてシン!)

呼びかけていると、ようやくシンに声が届いたようで、微かにシンの声が聞こえた。

ウェルダーは、その微かな声に必死に呼びかける。

「急いで!!!もう俺のほうも限界なんです!!シェリルとノエルは別行動してる!!今はシェリルの囚われてる蔵の解除方法を探してるんだけど・・・」

その時だった。

前方から襲い掛かる刃物の雨。

「うわあああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!」



無数の刃物がウェルダーを切り刻む。

地面に倒れるウェルダーは、貼り付けられ身動きがとれなくなった。

血溜まりの中に倒れる彼の瞳はもう、光をやどしておらず、呼吸は浅かった。

「・・・この人は、あの子たちの魂を持っていなかったわ・・・。」

「仕方ない・・・この人は捨ててしまおう。」

夫婦がウェルダーに近寄り、もう灯火を消しかけているその身体に触れようとしたときだった。

「・・・!?」

夫婦は信じられないものを見た。

血の気はなく、焦点すら定まらないウェルダーが立ち上がったのだ。

しっかりと立つことのできていない身体は、猫背気味に視線も地面をみている。

そして、何かぶつぶつと呟きながら、右手を握り締め、そのまま後ろへと振りかざすと、自分の体の二倍もあるであろうチェーンソーのようなものを出した。

チェーンソーは形が安定しておらず、常に形がぶれており、まるで力が反発し合っているようだった。

ウェルダーはチェーンソーを掴んだまま、夫婦へと突撃し、2人の身体を貫いた。

崩れ落ちた夫婦を見るウェルダーは未だ何かを呟きながら、立ち尽くしていたが、突如電池の切れた人形のように崩れ落ちた。