5個目の夢 5
ざく・・・ざく・・・ざく・・・
農機具や鈍器といった凶器を持った村人たちが近づいてくる。
村人は俺のいる祠の前までくると、ニタニタと笑っていた。
「白神様、お祭が始まります。会場へ向いましょう。」
柵につけられた南京錠を外し、ドサリと地面に落ちた。
ゆっくりと開かれる扉。
俺は咄嗟に走り出して、逃走した。
「白神様が逃げたぞぉぉおお!!!」
「捕らえろー!!!」
一斉に村人が凶器を掲げ、奇声を上げながら追いかけてくる。
俺は絶対に捕まるものかと森の中へ逃げ込んだ。
木々の間を抜けて、草木をかき分け、奥へ奥へと進んでいく。
「あっ・・・!」
途中で地面に広がる木の根に足が引っかかり、俺は転倒した。
が、転倒だけでは済まず、地面がなくなった・・・つまり、崖から落ちたってことで・・・。
「うわぁぁぁあああ!!」
軽く10メートル下に落ちたが、葉っぱがクッションのかわりとなって助かった。
「・・・こっち。」
上体を起すと、赤い風車を持った男の子が指を指し示してこっちへ行けと促す。
「君は・・・楓の兄弟?」
「うん。早く、こっち。みんなが追いついちゃう。」
俺の前を駆けていく男の子を俺は追いかける。
男の子はどんどん山奥へと入って行き、周りの風景は空すら見せてくれないほど緑に包まれる場所へと移っていく。
しばらくして男の子は昔は立派な屋敷であったであろう廃墟の中へと手招き、俺もその中へと駆け込んだ。
入口に鍵をかけると、男の子は囲炉裏の前に腰掛けていた。
俺も囲炉裏の前へ行き、男の子と向かい合うように座ると、男の子は語りだした。
「僕は薫・・・君たちには迷惑をかけていると分かっている・・・。だけど、僕らを救って欲しい。ここでは僕らは何にも触れることが出来ないから・・・触れる君たちに、お願いしたいんだ。」
「・・・そうか。俺たちに出来ることなら、何でも言ってくれよ!助けてくれたお礼としてさ。」
「ありがとう。でも、これは口にしちゃいけないんだ。悪いんだけど、この屋敷内で僕らに何があったのかを知って、僕らが何を求めているのか、僕らの立場になって考えて欲しい。」
「わかった。任せておいて。」
男の子は、嬉しそうに笑って消えてしまった。
それと同時に、屋敷の雰囲気が変わった。
どこか冷たく、重いというか・・・悲しくて、残酷というか。
よくわからないけれど、とても・・・言葉に出来ない冷たさ。
「ん?」
ふと、自分の手を見ると、ウェルダーから貰った指輪と、ノエルの指輪が光っていたことに気がつく。
何だ?
――ず・・・いて・・・!シン・・・!――
ぷつりぷつりと聞こえる声。それは、ウェルダーのものだった。
「ウェルダー?!ウェルダーなのか?!」
――よかっ・・・。シェリル・・・君、掴まってると・・・だけど。――
「何?聞こえないよ!」
――急いで!!!もう俺のほうも限界なんです!!シェリルとノエルは別行動してる!!今はシェリルの囚われてる蔵の解除方法を探してるんだけど・・・うわあああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!――
「ウェル・・・ぐっ・・・!!?」
ゴスッ!!!!!!!!
ウェルダーの悲鳴に気を取られていると、いきなり頭部に激しい痛みが走り、壁に叩きつけられた。
何事かと思い、顔を上げると、木槌を構えて立っている農民がいた。
「!!」
「見つけた・・・白神様。」
再び振り下ろされる木槌を交わして、俺は屋敷の中を駆け回った。
今はまだこの屋敷から出るわけにはいかない。
楓と薫のことを知らないと、おそらくこの村からは出られないだろうし、彼らを救うこともできないのだから。
いくつかの部屋を逃げ隠れながら入っていると、子供部屋にたどり着いた。
室内には2つずつ、学習机と箪笥、座布団が置いてあった。
おそらくここが2人の部屋だったのかも・・・。
「これは・・・?」
どちらかの机の上に一冊の日記帳が置かれていた。
それを、俺はぱらぱらと捲ってみた。
1895年 8月 2日
僕らは村の繁栄のために生贄にされることが決定付けられた、黒紙が届いた。
薄々、数日前からもう分かってはいたことだけれど、実際目の前に届いたそれをみて、心が痛んだ。
僕だけならまだしも、薫まで生贄にすることはないのに・・・。
1895年 8月 3日
この村には白神様がいない。白神様がいないということは、元々人間であった若紫様も
いないということになる。
だから、100年に1回の儀式を迎えた今日、村人は気が滅入っていたようだ。
・・・あの人は何かたくらんでいたみたいだけど。
1895年 8月 4日
ついに儀式の日だ。外では村人が今か今かと、僕らの死を楽しみにしている。
父も母も、楽しみにしている。
誰からも情けなんてかけてもらわなくてもいい。
僕らは最期までひとつであれば、もうそれで構わない。
年 月 日
どうして僕らを切り離したの?僕らは同じ目的のために、生贄になったはずなのに。
帰して。
帰してよ。
薫のところへ帰して。
こんな暗くて狭いところ・・・いやだ。
帰して。帰して。帰して帰して帰して帰して。
か
え
し
て
よ
「・・・なんだか、心が、痛い。」
日記を読んでいると、悲しいって気持ちはあったけれど、俺のものではない涙が自然と流れた。
誰かが、俺の目を借りて、泣いているんだ。
ズブッ・・・
「・・・うっ・・・。」
口から血が流れた。
突然のことに何が起こったのか分からない。
お腹に痛みがある。
視線を下へ向けると、お腹を貫通した刃が見えた。
銀色の美しい刃は、俺の血にまみれて怪しく輝いていた。
「う・・・そ・・・――――」
ずりゅっ・・・
ゆっくりと引き抜かれると、身体はバランスを失い、床へと崩れ落ちた。
横たわる俺を、抱え上げると、農民は、屋敷を出て行った。
農機具や鈍器といった凶器を持った村人たちが近づいてくる。
村人は俺のいる祠の前までくると、ニタニタと笑っていた。
「白神様、お祭が始まります。会場へ向いましょう。」
柵につけられた南京錠を外し、ドサリと地面に落ちた。
ゆっくりと開かれる扉。
俺は咄嗟に走り出して、逃走した。
「白神様が逃げたぞぉぉおお!!!」
「捕らえろー!!!」
一斉に村人が凶器を掲げ、奇声を上げながら追いかけてくる。
俺は絶対に捕まるものかと森の中へ逃げ込んだ。
木々の間を抜けて、草木をかき分け、奥へ奥へと進んでいく。
「あっ・・・!」
途中で地面に広がる木の根に足が引っかかり、俺は転倒した。
が、転倒だけでは済まず、地面がなくなった・・・つまり、崖から落ちたってことで・・・。
「うわぁぁぁあああ!!」
軽く10メートル下に落ちたが、葉っぱがクッションのかわりとなって助かった。
「・・・こっち。」
上体を起すと、赤い風車を持った男の子が指を指し示してこっちへ行けと促す。
「君は・・・楓の兄弟?」
「うん。早く、こっち。みんなが追いついちゃう。」
俺の前を駆けていく男の子を俺は追いかける。
男の子はどんどん山奥へと入って行き、周りの風景は空すら見せてくれないほど緑に包まれる場所へと移っていく。
しばらくして男の子は昔は立派な屋敷であったであろう廃墟の中へと手招き、俺もその中へと駆け込んだ。
入口に鍵をかけると、男の子は囲炉裏の前に腰掛けていた。
俺も囲炉裏の前へ行き、男の子と向かい合うように座ると、男の子は語りだした。
「僕は薫・・・君たちには迷惑をかけていると分かっている・・・。だけど、僕らを救って欲しい。ここでは僕らは何にも触れることが出来ないから・・・触れる君たちに、お願いしたいんだ。」
「・・・そうか。俺たちに出来ることなら、何でも言ってくれよ!助けてくれたお礼としてさ。」
「ありがとう。でも、これは口にしちゃいけないんだ。悪いんだけど、この屋敷内で僕らに何があったのかを知って、僕らが何を求めているのか、僕らの立場になって考えて欲しい。」
「わかった。任せておいて。」
男の子は、嬉しそうに笑って消えてしまった。
それと同時に、屋敷の雰囲気が変わった。
どこか冷たく、重いというか・・・悲しくて、残酷というか。
よくわからないけれど、とても・・・言葉に出来ない冷たさ。
「ん?」
ふと、自分の手を見ると、ウェルダーから貰った指輪と、ノエルの指輪が光っていたことに気がつく。
何だ?
――ず・・・いて・・・!シン・・・!――
ぷつりぷつりと聞こえる声。それは、ウェルダーのものだった。
「ウェルダー?!ウェルダーなのか?!」
――よかっ・・・。シェリル・・・君、掴まってると・・・だけど。――
「何?聞こえないよ!」
――急いで!!!もう俺のほうも限界なんです!!シェリルとノエルは別行動してる!!今はシェリルの囚われてる蔵の解除方法を探してるんだけど・・・うわあああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!――
「ウェル・・・ぐっ・・・!!?」
ゴスッ!!!!!!!!
ウェルダーの悲鳴に気を取られていると、いきなり頭部に激しい痛みが走り、壁に叩きつけられた。
何事かと思い、顔を上げると、木槌を構えて立っている農民がいた。
「!!」
「見つけた・・・白神様。」
再び振り下ろされる木槌を交わして、俺は屋敷の中を駆け回った。
今はまだこの屋敷から出るわけにはいかない。
楓と薫のことを知らないと、おそらくこの村からは出られないだろうし、彼らを救うこともできないのだから。
いくつかの部屋を逃げ隠れながら入っていると、子供部屋にたどり着いた。
室内には2つずつ、学習机と箪笥、座布団が置いてあった。
おそらくここが2人の部屋だったのかも・・・。
「これは・・・?」
どちらかの机の上に一冊の日記帳が置かれていた。
それを、俺はぱらぱらと捲ってみた。
1895年 8月 2日
僕らは村の繁栄のために生贄にされることが決定付けられた、黒紙が届いた。
薄々、数日前からもう分かってはいたことだけれど、実際目の前に届いたそれをみて、心が痛んだ。
僕だけならまだしも、薫まで生贄にすることはないのに・・・。
1895年 8月 3日
この村には白神様がいない。白神様がいないということは、元々人間であった若紫様も
いないということになる。
だから、100年に1回の儀式を迎えた今日、村人は気が滅入っていたようだ。
・・・あの人は何かたくらんでいたみたいだけど。
1895年 8月 4日
ついに儀式の日だ。外では村人が今か今かと、僕らの死を楽しみにしている。
父も母も、楽しみにしている。
誰からも情けなんてかけてもらわなくてもいい。
僕らは最期までひとつであれば、もうそれで構わない。
年 月 日
どうして僕らを切り離したの?僕らは同じ目的のために、生贄になったはずなのに。
帰して。
帰してよ。
薫のところへ帰して。
こんな暗くて狭いところ・・・いやだ。
帰して。帰して。帰して帰して帰して帰して。
か
え
し
て
よ
「・・・なんだか、心が、痛い。」
日記を読んでいると、悲しいって気持ちはあったけれど、俺のものではない涙が自然と流れた。
誰かが、俺の目を借りて、泣いているんだ。
ズブッ・・・
「・・・うっ・・・。」
口から血が流れた。
突然のことに何が起こったのか分からない。
お腹に痛みがある。
視線を下へ向けると、お腹を貫通した刃が見えた。
銀色の美しい刃は、俺の血にまみれて怪しく輝いていた。
「う・・・そ・・・――――」
ずりゅっ・・・
ゆっくりと引き抜かれると、身体はバランスを失い、床へと崩れ落ちた。
横たわる俺を、抱え上げると、農民は、屋敷を出て行った。