5個目の夢 | PLUTO KISS

5個目の夢

    『   、君をD-Angelに向いいれよう。』

    『アンタは?』

    『私は霧崎歩。D-Angelのボスだ。』

    与えられた耐熱性の黒いスーツと二丁銃。それを受け取ったときの重みの意味が俺は皆とは違った。

    皆にとっては「殺られる前に殺る。」という意思の重さ。
  
    でも俺にとっては「ひと1人分の命」の重さ。

    銃を握るのが嫌いだった。
    
    でも、握って引き金を引かなければ俺は殺される。

    殺される前にこちらが打たなければ。俺だって生きたい。

    生きる意味なんてもう見えていなかったけれど。

    それでも引き金を引くんだ。

    顔に飛び散った、相手の血が俺の涙の代わりだった。









カラカラカラ・・・


優しい風が吹いている。

心地よいその風に優しく起され、俺は起き上がる。

(・・・そうだ、あの日俺はD-Angelでスーツと二丁銃を受け取ったんだ。)

この手は血に濡れている。

幾多の人々を殺めてきた殺人鬼の手。

この世で最も汚くて、最も最悪な手。

溢れる涙を止めることは出来ない。

その術を俺は知らない。

ただただ声も無く泣いていると、後ろからスッと手が出てきて、俺の視界をやんわりと塞ぎ、空いた手で引き寄せられた。

「泣かないで。」

それはシェリルだったようで、ほのかに彼から香る香水のような甘い匂いに落ち着いた。

「ああ、悪い。これは自分の記憶のはずなのに、どうしても受け入れられなくて。」

「ええ、私も貴方だったら、同じ立場だと思います。」

「ありがとう、シェリル。」

小さく微笑んだシェリルに手を離してもらい、やっと周りの風景に目がいった。

幾つもの風車が棚田のような土地に突き刺さり、風によってカラカラと回っている。

ここは・・・一体?

「そういえば、ウェルダーとノエルがまたいないみたいだけど・・・」



・・・リンッ



シェリルに声をかけている途中、自分の言葉を遮るように鈴の音が鳴った。

音の鳴るほうへ視線を向けると、そこには白い着物を着た男の子が2人いた。

どちらも同じ顔で、2人の間に鏡でもあるのかと思ってしまうほどだ。

男の子たちは赤い風車と黒い風車を持っていた。

よくみれば、赤い風車を持ったほうの男の子の手首には鈴のついたブレスレッドが見えた。

先ほどの鈴の音は彼のものだったようだ。

「あの、君たち。ここは何処かな?」

男の子たちはお互いの顔を見合わせ、何を互いの間で納得したのかは知らないが、頷いて走り去られてしまった。

「えー・・・。ちょ、それはない。俺泣くぞ!!」

「子どもは恥ずかしがり屋さんが多いですから、そう怒らないで。」

「怒ってねぇよ!泣きそうだよ!!」

くそぅ!無視さんはいかんぞ!!

「待てゴルァ!!!」

全速力で俺は逃げていく男の子たちを追いかけた。

後ろでシェリルが「顔大変なことになってますよ。」とか言ってたけど気にしないもんね。




しばらく走っていくと、小さな村に着いた。

名前は分からなかったが、とにかく村。

「ここにあの子たちいるのかな・・・あ、すみませーん!」

村の入口のすぐ近くに、荷車に荷物を乗せているおじさんがいた。

その人に声をかけると、すぐに振り返り、「なんじゃね。」といいながら俺の顔を見ると、はっとしたように驚いて、「大変じゃぁぁぁあああ!!!」と叫びながら村の中へと消えていってしまった。

「え・・・あの。」

「マスター。何かしたんですか?」

「ううん。何もしてない。多分。うん。俺は悪くないはず。」

何故逃げられたのか分からないが凄く心が悲しくなっているのだけは間違いない。

逃げ去ったおじさんのほうへと歩みを進め始めると、今度はおじさんが大群のような村人を連れ、砂埃を巻き起こしながらこちらへとやってきた。

やばい・・・殺される?

村人だと思われる人々は俺の前で立ち止まると、食い入るように俺を見て「まさか」「嘘だろ」などと声を上げている。

そんなに見られたら、穴空いて死にそう・・・死んでるけど!

「白神様だ!!」

村人が声を揃えてそう言った。

「・・・はぁ?」

「白神様だ!白神様がこの村にもやってきたのじゃ!!おい!早く屋敷を空けろ!!」

「おい、こっちのお方はもしかしたら若紫様じゃないか!?」

俺を見て白神様だと言った村人の隣で、別の村人がシェリルを見て更に叫ぶ。

「おお!!若紫様だ!!!急げ!お2人を早く屋敷へお連れするんだべ!!」

何か一致団結した村人たちは、俺とシェリルの腕を掴むと、嵐のように再び走り出した。

「やめてぇぇぇぇええええええぇ!!!」

「・・・・・・。」

泣き叫ぶ俺の横で、シェリルは揺さぶられるような感覚に耐えられないのか、顔色を悪くしていた。