4個目の夢 3 | PLUTO KISS

4個目の夢 3

シェリルにキスをされると、俺の爪がシェリルの色に変わっていった。

俺を見る、シェリルの瞳は、一層輝きを放っていた。不覚にも、それが綺麗だと思った。

「ロッド、拾っていただきありがとうございます。ウェルダー、貴方の分も。」

ウェルダーに首飾りを投げ渡すと、彼はソレを受け取ってはにかんだ。

「よくもよくもよくも!!!!私のお人形さんを!!!」

女の子は怒り狂い、人形のメイドを操ってシェリルに襲い掛かる。

シェリルはというと、避ける様子も無くただ突っ立っているようだが、そうでもないようだ。

人形のメイドが襲い掛かるまであと1mというときに、スッと手を差し出す。

ただ、それだけのはずなのに。

 ドンッ!ドタッ!!  ドタドタッ!!

「なっ?!」

見えない壁に弾き返されて、人形のメイドたちは女の子のほうへと飛び、バラバラになった。

その体は焼き焦がれ、使えるものではなくなった。

「よくもっ!!」

次々と窓や扉から人形が入り込む。

人形のメイド、人形の執事、人形の母親、人形の父親、人形にされた人々。

襲い掛かる人形たちにウェルダーとノエルも戦い始める。

ウェルダーがトンファーで殴り倒す。

ノエルが剣で切り倒す。

シェリルが見えない壁で次々と弾き飛ばし、焼き焦がす。

(・・・違う。こんなこと間違ってる。)

だって彼らは・・・、この女の子に人形にされた人だった人たちだろ?

だったら・・・。

俺は女の子に近づいた。

「あら、ようやく私のお人形さんになる気持ちの整理がついた?いい子ね。最初からそうやって素直にしていればよかったのよ?」




パンッ。



女の子の頬を叩いた。

決して女の子にしてはいけないことだとは分かっている。

けれど、この子はこうでもしないと、きっとわからない。

「え・・・。」

「君は間違っている。」

俺は女の子の目線に合わせてしゃがみこみ、目を見て話した。

「なぁ、君はこんなことしたいわけじゃないだろう?」

「何を言って・・・。」

「みんなを人形に替えて、君はこの空間から誰も逃がさないようにする。それはどうしてかな?本当は、皆とたくさんお喋りして、たくさん遊びたい。そうじゃないのか?」

俺の言葉に女の子はピクリと反応する。

だが、決してイエスとは言わない。

「私は私だけのお人形さんが欲しいの!何処でも買えるようなお人形さんじゃ嫌なの!!」

「・・・君は本当は寂しかったんだろう?」

「違う!私は!!」

「友達が欲しかったんだろう?」

「・・・ッ!!」

最後の言葉でボロボロと泣き出した女の子を俺は優しく抱きしめてやった。

気がつけば、周りの人形たちの動きも止まっていた。

「・・・っう・・・ごめんなさぁい・・・!!」

「寂しかったんだね。」

なだめながら、俺は女の子の話を聞いた。

女の子は、いつだって1人。

周りには誰もいない。

それが当たり前。

女の子は捨てられた子供だった。

物心つく頃には気がついたら1人だった。

だから生き抜くために、盗みを働き、悪事の数々を起して生きながらえてきた。

しかし、10歳にも満たない頃。

人体売買を目的をする組織に連れ去られ、売られた。

売られた先は黒魔術を好む宗教団体。

薄暗い中、大人たちに囲まれて切り刻まれた。

そして生涯の幕を閉じた。

ずっと愛を求め続けて。

「・・・人の愛を知らないから、ずっと求めていたんだよね。」

「誰かにいて欲しかったの・・・だから、人形にしちゃえば、皆逃げないって思ったの・・・。」

「でも、それはいけないことだよ。君に人形にされた人たちだって、君と同じ人なんだから。」

「うん。・・・ねぇ、お兄ちゃんは私の友達でいてくれる?」

「もちろん!!」

そう言うと、微笑んで女の子は消え始めた。

「おっと。俺より先に逝っちゃうのか・・・最後に名前くらい教えてよ。」

「ハル。」

「そっか。じゃあな、ハル。また会おうな。」

ハルは消えてしまった。

それと一緒に、周りの人形たちも消えていった。

消えていく人形たちも、どこか微笑んでいるようだった。

「みんな逝けたようですね。」

シェリルの声に頷きながら、俺はいつまでも天へと登って消えていく彼らの光を見つめていた。

ふと、その中で、落ちてくる光りの粒があった。

それは俺の目の前まで降りてくると、俺の胸元に飛び込んでいった。

まさか・・・と思い、首飾りを出してみると、宝石が少し形を取り戻していた。

「やった!記憶の欠片が戻ったんだ!」

「ふふっ。これで何か思い出してくるのでしょうね。」

「ああ!」

早く思い出したい。

けど、心の何処かで思い出したくないとも思う。

何か、嫌な感じがするんだ。














「・・・彼が自分の記憶を取り戻したようですね。」

「ええ。そうですね。でも、記憶は人にとって大切なもの。決して忘れてはいけないことが多々あります。」

天使と死に神は仕事場の庭にある噴水に互いに背を向けた状態で腰掛けて会話をしている。

天使は足元に山積みにした志望者リストを足台にしてシンの書類に目を通している。

「でも、問題は彼だけではない。」

「そう、彼だけではない。」

死に神は処理済の書類を足台にして四枚の書類に目を通している。

シェリル、ウェルダー、ノエル、そして誰かもう1人のもの。

「でも、4人はUGで生まれた存在。そんな彼らも人と同じなのですか?」

天使が死に神に問う。

死に神は、天使にただ一言与えた。

「人も彼らも我々も、原点は一緒なんです。」