http://hrp-newsfile.jp/2015/2131/
文/HS政経塾4期生 西邑拓 真(にしむら たくま)
◆政府の電力システム改革
2016年4月より、電力の小売が全面 自由化されます。
これまでは、電気の大口使用者への 小売事業への参入のみ認められてい ましたが、この度の全面自由化で、 家庭などへの小売り事業に対する参 入規制も撤廃されることになりま す。
現在、日本は、(1)電力需給を チェックする機関の設置、(2)小売 事業の全面自由化、(3)大手電力会 社から送配電網を分社化する(発送 電分離)という3つの段階で電力シス テム改革を推進しています。
そして、今月3日、政府は改革の3 段階目である発送電分離を義務付け る電気事業法の改正案を閣議決定 し、2020年4月に発送電分離を実施 することが目指されています。
◆公益事業における規制緩和 事情
電気は、国民の日常生活や生産活動 にとって必要不可欠なことから、適 切な料金で安定的な供給がなされる 必要があります。
その一方で、同事業は規模の経済性 などの自然独占性の性質を有するこ とから、参入規制などを敷く必要が ある事業として、「公益事業」に分 類されます。
現今の「地域独占」に対し、規制を 緩和し新規参入を認め、同事業に 「競争の原理」を取り入れること で、利用者の選択の自由を増やすの が「電力自由化」です。
また、電気事業では発電、送電、配 電、小売の業務が同一企業の下で維 持されてきました。
これに対し、垂直的に統合された企 業を業務内容別に分離する「発送電 分離(アンバンドリング)」は、新規 参入企業が、既存大手企業に比して 公平な条件で送配電網を利用するこ とができるようにさせ、これにより 競争環境の改善が進むことが期待さ れています。
◆電力自由化が価格に与える 効果
では、電力自由化によって、実際に 価格は低下するのでしょうか。
諸外国における電力自由化等による 電気料金への影響調査において、 「電力自由化開始当初に電気料金が 低下していた国・州もあったが、概 ね化石燃料価格が上昇傾向になった 2000年代半ば以降、燃料費を上回 る電気料金の上昇が生じている」と 指摘されています。
【参考】 『諸外国における電力自由化等によ る電気料金への影響調査(平成25 年3月)』 http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2013fy/E003213.pdf
「欧米諸国の先行例を改めて吟味す る電力全面自由化はやはり愚策だ」 (石川和男 [NPO法人 社会保障経済 研究所代表] http://diamond.jp/articles/-/47345
このように見ると、電力自由化は、 必ずしも電気料金の低下につながる わけではないということがわかりま す。
◆安定供給網体制の整備に対 する懸念
また、電力自由化の重大な懸念事項 として、「競争の導入によって、電 力供給の安定性が失われる」という ことが挙げられます。
その一例が、2000年夏から2001年 冬にかけての「カリフォルニア電力 危機」です。
アメリカ・カリフォルニア州では、 1996年に電力自由化が実施されま したが、電力需要が拡大する中で、 発電事業者が発電所新設に対し消極 的姿勢をとったり、既存発電設備が 運転停止になるなどして、電力需要 は供給を大きく上回り、電力卸売価 格は増大する一方となりました。
その中で、小売価格に対しては、政 府によって価格規制が行われていま した。
したがって、電力小売業者は卸売価 格の上昇を、小売価格に転嫁するこ とができなかったことから、「逆ざ や」が生じました。
その中で、大手電力会社の一社が破 たんに追い込まれる一方、発電事業 者が代金回収に懐疑的となったこと から「売り渋り」を行い、結果とし て輪番停電を行わざるを得ない状況 にまで発展しました。
この事例から、電力自由化によっ て、国民生活にとって不可欠な電力 が十分安定的に提供されなくなり、 電気事業が「公益事業」としての役 割を果たさなくなる可能性が懸念さ れるわけです。
◆安定的かつ安価な電力供給 網整備の前提条件は、原発の 再稼働
日本の産業競争力の強化にとって欠 かせない、安定的かつ安価な電力を 供給することは、電気事業を担う者 にとっての使命とも言えます。
その使命が十分に成就されるために も、適切な競争環境の整備に向けた 取り組みと共に、電力供給量の確保 そのものに向けた取り組みが重要に なります。
原発は、火力や水力発電に比べて、 安価で大量の電力を提供することが できるのは周知の通りです。この点 から、競争の有無に関わらず、原発 再稼働は電気料金低下にとっての大 きな前提条件と言えます。
したがって、日本は、各地の原発の 再稼働に向けた取り組みに邁進すべ きことは言うまでもありません。
同時に、電力自由化を行った場合、 「競争環境下において、重要な電源 としての原発を、誰が維持・促進し ていくのか」などといった「設計 図」が示される必要があります。
以上のことから、日本は今一度、 「電気事業の公益性」という原点を 鑑みた上で、「電力システム改革」 の是非を検討すべきです。
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