http://hrp-newsfile.jp/2015/2087/
文/政務調査会チーフ 小鮒将 人
◆ロシアを苦しめる「経済制 裁」の内容について
現在、ロシアは欧米から「経済制 裁」を受けています。
日本ではロシア経済について、あま り報道されませんが、実際は深刻な 影響を与えており、強気のプーチン 大統領もさすがに厳しさを認識して いるようです。
ひとくくりに「経済制裁」と言って も内容は様々です。昨年3月のウク ライナ危機を受け、最初に、以下の 経済制裁を行いました。
・ロシア政府・財界要人の入国禁止 ・ロシア政府・財界要人の在外資産 の凍結
第1弾の経済制裁は、一般のロシア 国民には、影響はありませんでした が、資産家・富裕層は、欧米での資 産が運用できなくなり、大きな痛手 となりました。
さらに昨年7月、ウクライナ上空で 発生したマレーシア航空機撃墜にロ シアが関与している可能性が高まっ た事で、以下の制裁が加わる事とな りました。
・ロシア大手銀行への融資禁止 ・ロシアへのエネルギー関連技術供 与の禁止
第1弾は主として個人に対しての規 制でしたが、第2弾は、企業が対象 となるもので、撃墜事件がいかに、 欧米諸国の怒りを買ったのかが分か ります。
◆さらに「原油安」がロシア 経済に大きな影響
さらに、第2弾の経済制裁と機を一 にするかのように、原油価格が急落 しはじめました。
昨年の年初から、100ドル前後の高 止まりを続けていましたが、昨年7 月から急落は始まり、現在はおよそ 40ドル前後です。経済制裁に加 え、原油安は深刻な影響を与えてい ます。
元々ロシア経済は、原油及び天然ガ スのエネルギー資源の輸出に大きく 依存しており、大幅な資源安は、ロ シア国内の景気及び、国家財政を厳 しくし、それに連動してロシアの通 貨ルーブルも急落しています。
ロシア中央銀行は、急落を食い止め るために度重なる金利の利上げを行 い、この結果、物価が急上昇し、家 計に厳しい影響を与えています。
ウクライナの紛争そのものは、ロシ ア、ウクライナ、欧州による交渉が 合意に達し、ひとまず停戦に至って いますが、本質的な問題の解決では なく、経済制裁が解除される見通し も立っていません。
また、原油安について、底を打った 感はあるものの、上昇のトレンド (傾向)の見込みもなく、現在ロシ ア経済には大きな不安が残っていま す。
◆巻き返しとしての中国・北 朝鮮との関係強化
こうした中、ロシアのプーチン大統 領は、経済制裁に対しての対抗策を 進めています。まず、中国とのガス 供給の交渉が昨年5月、妥決しまし た。
元々、この交渉は価格が折り合わ ず、20年近く続いていたのです が、欧米の経済制裁への対抗措置と して、プーチン大統領は中国側へ譲 歩を行い、契約締結につながりまし た。
また、北朝鮮との関係改善について も注目されています。
今年5月、ロシアで行われる「対独 戦勝70周年記念式典」に金正恩氏 の出席が決定し、金氏が北朝鮮の指 導者となって以来、初の海外訪問と なりました。
ロシアは、北朝鮮に対して様々な支 援を行います。米ハドソン研究所主 席研究員の日高義樹氏によると、具 体的に以下の支援を検討していると の事です。
1.朝鮮半島での共同軍事演習 2.原油や天然ガスなどの供給 3.港湾、道路などのインフラ整備 の支援 4.食料増産の援助 5.北朝鮮核兵器の小型化を技術支 援
ロシアの本音はアメリカへの牽制で ある事は明白で、どこまで北朝鮮の 支援を行うかが未知数ですが、特 に、共同軍事演習及び、核兵器の性 能向上については、日本の安全保障 にも重大な影響が出てきます。
このように、欧米とロシアの緊張状 態が続くことは、日本にとっては好 ましいものではありません。
特に現在、中国の軍事的な拡大路線 が懸念されているわけですが、その 中で、ロシアは、中国への牽制とも なるべき非常に重要な国家でありま す。
◆日本がとるべき考えとは
「ウクライナ危機」は、ロシア側 が、一方的な侵略の意図をもって進 められたものではありません。元 は、ウクライナがロシア側からEU 側への移行を意図した事がきっかけ となったのです。
ウクライナは建国時より、EUとロ シアの間の「緩衝地域」としての役 割を果たしていたのですが、2013 年、大規模な市民によるデモの結 果、親ロシアのヤヌコビッチ政権は 崩壊、現在はEU側につくことを選 択しました。
しかし、ロシアとしてはEUと直接 国境を接する事になり、国益の立場 からこの事を決して容認できないの です。
とは言いつつも、ロシアの手法もか なり強引で、中間的な立場を持って いた国からも非難され、結果として 経済的な苦境に立っています。
そして、プーチン大統領は、明るい 見通しを国民に示すために、様々な 手を打っているのが実情です。
日本は、まず日米同盟の堅持を掲げ つつ、安全保障の観点からも、ロシ アとの友好関係を強化することが非 常に大切です。
安倍総理は、ソチ五輪の開会式にお いて、欧米諸国の首脳たちの多くが 欠席した中、数少ない出席者の一人 でした。当然プーチン大統領として は、恩義に感じているでしょう。
欧米諸国と歩調を合わせるべき局面 もありますが、日本は、ロシアがこ れ以上、中国・北朝鮮との関係を深 め、東アジアの安全保障上の危機と はならないよう、常にロシアへの配 慮を続けていく事が必要です。
ウクライナをめぐるロシアと欧米諸 国との緊張状態は、まだ見通しが立 たない状態ですが、日本は今後も慎 重な対応を続けていくことが、国益 にかなう事にもなります。
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