■法律違反ではないが・・・許されるのか
自民党は2025年春、新人候補を対象に
第一子100万円、第二子以降は1人50万円
を支給する「子育て・介護支援金」制度を発表した。
財源は国から政党に配分される
政党交付金=私たちの税金である。
政党交付金は使途を党が自由に決められる仕組みのため、法的には何ら問題はない。
だが「合法だから正しい」と言い切れるだろうか。
■“二重取り”が生む不公平感
新人候補がこの一時金を受け取っても、家庭では一般国民と同じく児童手当(0~2歳:月1万5千円/3歳~高卒:月1万円)を満額で受給できる。
100万円+児童手当という“二重取り”は制度上可能だ。
選挙に挑む意欲を支える目的と言われても、
「子育て世代の負担軽減」という大義は国民全員に共通するはずだ。
なぜ自民党候補者だけが、一気に100万円を手にできるのか──そこに強烈な違和感が残る。
■一般家庭との待遇格差
児童手当を18年受け取って得られる総額は約234万円前後だ。
自民党新人候補は一瞬でその半額近くを得ることになる。
しかも保育園・介護サービスの実費精算ではなく現金一括支給だ。
子どもの人数や介護の負担が同じでも、立候補するか否かで手当水準が大きく分かれる構図は、子育て支援策として公平性を欠くと言わざるを得ない。
■税金の“私物化”という批判
政党交付金は国民が幅広い政治参加を支えるための公費だ。
本来、党派を超えて国民全体の民主主義を底上げする理念で導入された。
それを自党候補者の生活支援に充当することは、
「税金を自分たちの陣営だけに優遇して使う」姿に映る。
金額の大小ではなく、公のお金を党内で閉じて循環させている点が問題視される。
■透明性の欠如も火種に
支給条件や金額は党内で決定し、外部監査もなく領収書提出義務もない。
どの候補に、実際にいくら配られたのか。
保育・介護費に使われた証拠はあるのか。
詳細は一般公開されていない。
税金由来の資金を「実質私的」に扱っているという構造が、制度への不信を増幅させている。
■政治家だけを優遇しない仕組みへ
子育て・介護と政治活動の両立支援は必要だ。
しかし、それならば
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全政党・無所属候補も対象にした公的制度にする
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実費精算方式で無駄遣いを防ぐ
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受給状況や使途をオンラインで即時公開する
――こうした改革が不可欠だろう。
■終わりに
「法律違反ではない」
「ほかの政党もやればよい」
という開き直りは、納税者の理解を得られない。
100万円という額面は象徴にすぎない。
問題の本質は、公金を政党の内輪だけで自由に分配してしまうガバナンスの甘さだ。
子どもを産み、介護を担うのは政治家だけではない。
真に求められるのは、候補者だけでなく社会全体の子育て・介護負担を軽減する普遍的な制度である。
自民党はまず、自党内だけの“特別扱い”が国民の信頼を損なっている現実に向き合うべきだ。






