平ミキプルーンかっけぇ!!!


皆様ごきげんよう.
いきなり取り乱した麻呂です.
今年の大河は,視聴率は何だか芳しくなさそうなんですが,個人的には最っ高!です.
天上の帝とか麻呂達のドロドロっぷりとか,ミキプルーン無双とか,言い出したらキリがありません.



…ちょっと話を戻して,

前回 からあんまり間を開けてませんが,こーゆーのは勢いが大事ですので,立て続けに行きましょう!


では,前回 に引き続きまして,今回は


誘導電動機


を紹介していきましょう.



○前回のあらすじ
直流電動機はシンプルな制御則の可変速駆動系ではあったが,効率の問題や,保守の難しさから,鉄道事業者は他の可変速駆動系の出現を待ち望んでいた…!
そこに彗星の如く颯爽と出現し,一挙に天下を治めたのが,誘導電動機であった…!



2. 誘導電動機

2.1 誘導電動機のトルク発生原理


誘導電動機の回転部は,下の図のような鳥かご状の導体部品で構成されております.この図からも分かるように,シンプルで軽量かつ堅牢な構造が誘導電動機の特徴とも言えます.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


この回転子に対して,下の図のように,回転する磁界(回転磁界)を照射してみます.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


すると,"ペア"の導体棒には,回転磁界より若干遅い回転をしていた場合,時々刻々変化する磁場が与えられる状況になります.


磁場の変化により,"ペア"の導体棒にはファラデーの法則より誘導起電力が発生するため,"ペア"の導体棒には誘導電流が流れます


回転子の構造を見て分かるように,回転子に一切の電源が接続されていない状態で誘導電流が流れることがポイントです.つまり,ブラシを必要としない,ということです.


※短絡環でペア以外の導体棒間でもループを構成するため誘導電流が発生しますが,うまい具合にキャンセルし合って,ペア導体棒間の誘導電流の成分のみが生き残ります.


導体棒に電流が流れると,回転磁界が作用し,フレミング左手則により回転力が発生します.これが,誘導電動機のトルク発生原理なんです.



大事なポイントは,回転子が回転磁界より"若干遅い"という点です.


回転子が回転磁界に対して相対運動をすることによって誘導起電力が発生するがために回転力が発生するのです.


もし回転子が回転磁界と全く同じ速度で回転していたとすると,誘導起電力が発生しないためにトルクも得られません.


回転子が回転するには,空気抵抗,慣性抵抗,走行抵抗その他諸々の抵抗に打ち勝ちながら回転する必要があるため,回転を維持するためには必ずトルクが必要です.


すなわち,誘導電動機の回転速度は,回転磁界の速度に比べて"少しばかし"遅いと言えます.この遅れ具合を表す量を"すべり"と言います.


回転磁界の回転速度をω[rad/s],すべりをsとしたとき,回転子の回転速度ω_{m}[rad/s]は以下の式で表現できます.


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
…(01)


このすべりは,電動機として使用する前提では0以上1以下の数値で,遅れの度合いが大きいとき程sは1に近付き,回転子の回転速度が回転磁界の回転速度に近いほど遅れの度合いが小さくなり0に近付きます.

通常,鉄道用の誘導電動機では,電動機として使用するときは概ね2~3%(0.02~0.03)程度と言われております.



ここで恐らく,「そもそも回転する磁界ってどうやって作りだすの?」という疑問が浮かんでくると思います.

一定の電流が流れているコイルを回転させれば簡単に回転磁界が得られますが,恐らくその場合はブラシを使うことになり,直流電動機で発生した問題:ブラシ摩耗粉の問題をクリアできず,全く無意味になってしまいます.

次節にて,巧い方法を用いた回転磁界の作り方について紹介いたします.



2.2 回転磁界の発生原理


下の図のように,各相を120[deg]ずつずらして配置したコイルに,平衡三相交流電流を流してあげることによって,モータ内部に回転磁界を作り出すことが可能です.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


これによって回転磁界が発生する理由を探っていきましょう.


平衡三相交流電流を


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
…(02)


といたしましょう.

まず,下の図のように,垂直軸上向きを0[deg]とし,そこからθ[rad]だけ回転した軸をθ軸としましょう.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


A相電流によって発生する起磁力をθ軸に投影すると,A相起磁力のθ軸成分が抽出できます.そのθ軸成分起磁力は,各巻線の巻数をNとすると,


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
…(03)


となります.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


同様に,上図のように,B相/C相巻線電流に起因するθ軸成分起磁力を求めると


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
…(04)


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…(05)


となります.


式(03)~(05)の和をとれば,θ軸成分起磁力を求めることが出来ます.

加法定理とか色々とすんごく面倒臭い計算をすれば,以下のように求められます.


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき

…(06)



この(06)式の意味するところを調べてみましょう.


θを[deg]単位に変換して横軸とし,縦軸を3NI/2としたグラフをプロットすると,以下のグラフのようになります.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき


このグラフでは,(06)式におけるωt(時間と考えてよい)が,0からスタートして1/6周期ずつ進行しているグラフが描かれております.


この図を見れば分かる通り,時間の経過とともに,磁場が最大となる角度θが時々刻々とプラス方向に移動していることが分かります.

つまり,磁場が回転している,と言えます.



このように,120[deg]毎に配置したコイルにそれぞれ三相交流電流を流すことによって,回転磁界が得られるのです.



このグラフからも分かるように,三相交流電流の角周波数ω[rad/s]が大きければ大きいほど,回転磁界が素早く移動することが予想できます.


実際,この回転磁界の回転速度は三相交流電流の角周波数と比例します.このグラフでは"比例"というよりも"一致"となるのですが,三相交流電流が流れるコイルのセット数を2, 3, 4, …と増やしていくと,1セットのコイルが回転磁界を発生させる範囲が360[deg]/2, 360[deg]/3, 360[deg]/4, …と狭まるため,セット数に応じて回転磁界の速度が反比例して落ちていきますが,依然として角周波数に比例することは変わりありません.


このコイルのセット数を"極対数"といい,変数pで表します.


極対数がpで電源の角周波数がω[rad/s],すべりがsとすると,(1)式より,誘導電動機の回転速度は


ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
…(07)


と表すことが出来ます.


(07)式から,回転速度を自在に制御するためには,


・極対数p
・すべりs
・電源周波数ω


を変えればよいことになります.


ただし,極対数を変更することはモータの構造自体を変更することと同義で,鉄道車両への適用は実際難しいと言わざるを得ません.


また,すべりについては,後述するように増大させると効率が悪化するため,特殊な事情を除きあまりおススメできません.


残るは電源周波数です.


一昔前は,交流電源の周波数を自由自在に操る術がなかったため,誘導電動機は専ら電源周波数に拘束され一定速で回転するモータとして主に産業用に使用されることが多かったのです.


直流電動機全盛の時代には,恐らく誰も"誘導電動機を鉄道車両の主電動機として使おう"だなんて微塵も思っていなかったはずです.


半導体技術が進歩し,大電力を扱えるパワートランジスタ等のバルブデバイスが出現するやいなや,電圧と周波数を自在に制御できるVVVFインバータと呼ばれる電源装置が開発されてからというもの,誘導電動機が可変速駆動系と見なされ始め,やがて鉄道車両にも適用されるようになってきました.


現在では,もはや90年代以降に建造された電気鉄道車両のほとんどが誘導電動機を用いたタイプと言っても過言ではないでしょう.


通勤型車両は勿論,山間部を走る車両や,果ては新幹線車両まで誘導電動機が幅を利かせております.



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
(通勤・近郊型車両:E231系@東海道本線根府川駅)



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
(山間部向け近郊型車両:E127系@大糸線稲尾駅)



ゆる系ヲタクエンジニアのつぶやき
(新幹線型車両:700T型@台湾高鉄燕巣MWS)



…ここまでで相当長くなってしまいましたねw


今回は誘導電動機序論ということで,次回以降に詳論を書いていこうと思います.
恐らく次回は"主要な特性"だけしか書けないと思います.
その後が本番の"ベクトル制御"です.


このシリーズ,ぶっちゃけ疲れるwww
でも,書きながらでも復習が出来て中々に有意義なんで,しばらく続けていきます.



では.



※本ブログの内容について,鉄道事業者その他関係各所に問い合わせることはご遠慮くださいm(_ _)m
何か指摘事項等ございましたら,コメントあるいはメッセージで私までお問い合わせください.浅学故に間違いも多々あるかと思いますので,ご指導いただければ幸甚です.