1対2と、逆転を許してしまった斗亜留高校は、何とか1点を取り返そうと、攻めに転じる。


しかし、攻撃をしようとすればするほど、ディフェンスに人数が掛けられないため、逆に、危ないシーンを何度も作ってしまう。


そのため、迂闊には攻められなくなった斗亜高校は、ディフェンスを重視し、カウンター狙いで、戦わざる終えなくなってしまう。


結果、どんどん苦しい状況に追い込まれる斗亜留高校。


二階堂「ダメだな……あれじゃ、話にならねぇー!」


河井出「仕方ないよ。相手の方が、ボールを奪ってから、攻撃に転じるまでが早い

     からね。奪われたら速攻を喰らうから、こちらの攻撃も慎重になってしま

     う…イコール、点は入りにくい。」


真二郎「こう言う時、普通なら、流れを変えるために、選手を交代させるとか、動き

     を指示するとかするもんだけど……」


二股を見る真二郎。


真二郎「あの先生じゃ~なぁ~。」


ため息をつく真二郎。


真二郎の予測どおり、この状況でも、二又は全く動こうとしなかった。


時間だけが過ぎ、後半も残り10分を切る。


ボールがサイドラインを割ったところで、攻勢高校が動く。


なんと、攻守にわたって活躍してきた8番を下げたのだ。


真二郎「なんだと!!!」


阿部 「やったぜ!どういう理由か知らないが、8番がいなくなれば、かなり楽にな

    るな♪」


波野 「いや、わからないぜ!!もしかしたら、代わった奴は、8番よりも上手いかも

    よ!」


河井出「今代わった選手は、レギュラーの人じゃないよ。」


波野 「マジか!!!だったら、うちにもチャンスが有るんじゃ……」


河井出「う~ん……どうかな。」


阿部 「なんでだよ!?」


河井出「守り続けるのは、攻め続けるより辛いよね。」


阿&波「はぁ?」


芽嶋 「そうだね。守りは、ほんのちょっとのミスで、得点を奪われる可能性が有る

    し、攻撃以上に慎重さが求められるもんね。」


河井出「そう!うちは、守るのに必死で、みんなかなりバテてるから…残り時間も

     ほとんど無いし、8番なしでも、勝てるって思ったんじゃない。

     次の試合の事を考えて、温存って所でしょう。向こうは余裕ってことだよ。」


河井出の予想どおり、8番がいなくなっても、ほとんど状況は変わらず、一方的に攻め立てられる斗亜留高校。


三沢 「先生!このままだと、本当に負けちゃいますよ。」


二又 「そうだね……」


三沢 「そうだねじゃないでしょ!」


二又 「うん……そうだね………」


三沢 「…あのね……!!!」


少し、苛立ちを見せる三沢。


その時、二又がチラッと腕時計に目をやり、真剣な眼差しで、時計を見つめた。


三沢 「おや!少しは、やる気になりました?」


二又 「………後、50分か……」


三沢 「は~ぁ?何言ってるんですか!そんなに時間が有るわけないでしょ!!!

    もう、5分も有りませんよ!!!!」


二又 「ん?何の話?」


三沢 「なんのって、試合時間の話に決まってるでしょ!!!」


二又 「ああ!そっちね。」


三沢 「そっち?……先生は、一体何の話をしてるんです!!?」


二又 「いやね、今日は、桂 震笑(かつら しんしょう)の落語会が有るんだ。

    試合が終わったら、寄席に行こうと思っててね……寄席が始まるのが、大体

    50分後ぐらいだから、試合が終わったら、直ぐに移動しないと間に合わない

    な~ってね♪」


三沢 「………また……また、そんな話ですか!!!?

    うぬぬぬぬぬぬぬぬ……うらーーーーー!!!!」


二又の、あまりの無責任さに怒りを爆発させた三沢は、ベンチに座っている人間を振り落とし、ベンチを持ち上げ、鬼の形相で、今にも二又に投げつけようとしている。


恐ろしい状況に、部員達の視線が、グランドから三沢の方に一斉に移動する。


真二郎「い、いかん!!!二階堂!!!止めろ!!あの人を止められるのは、お前の怪力だけ

     だ!!!」


二階堂「お…おう!!!止められるかな……


三沢 「も~ぅ!!いい加減にしてよね!!仮にも、サッカー部の顧問でしょう!!!

    もう少し、顧問らしくしなさーーーい!!!!」


二階堂「姉さん!!!落ち着いて!!!」


後ろから、三沢を羽交い絞めにする二階堂。


しかし、二階堂のパワーを持ってしても、三沢を完全に止める事が出来ず、二階堂を振りほどこうと暴れだす。


三沢 「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


真二郎「まずい!白浜!!加勢に行ってくれ!!!」


白浜 「了解であります!!」


白浜も加勢し、ベンチを投げさせないように、三沢の両腕をガッチリと押さえる。


こんな状況でも、二又は一切動じず、ボ~っと試合終了の時を待っていた。


三沢 「あんた達!放しなさい!!!」


審判 『ピー!ピー!ピーーーー!!!』


部員達「………エエッ?」