20年ぐらい前、テレビのアニメを見ていた子供たちが急にけいれんを起こし病院に運び込まれました。
この「ポケモンショック」に全世界が「テレビは脳の発達に悪い」という単純な解釈をしました。

 

実際に発達初期の脳はとても敏感で外部からの刺激に影響されます。
これをきっかけに社会的な要望が高まり、文部科学省は2003年、「脳を育(はぐく)む」を脳科学の領域として立ち上げました。
人間の子供の脳の発達を理解することは今後の社会の発展に重要だからです。

ここで重要なキーワードは「臨界期もしくは感受性期」と「可塑性」です。
臨界期という大切な時期に脳のあらゆる機能が形成され、その具体的な仕組みとして脳の可塑性が利用されるからです。

脳の可塑性には「機能的可塑性」と「形態的可塑性」があります。
臨界期には可塑性の性質が一時的に高まりあらゆる脳機能の神経回路が集中的に形成されます。
神経細胞は電気信号を伝えることで情報処理を行いますが、機能的可塑性は神経回路網の結合を電気活動によって強めたり弱めたりし、形態的可塑性は神経回路網を極端に変化させます。

形態的可塑性は発達に伴って無くなりますが、機能的可塑性は一生残るので私たちは生涯にわたり学習することができるのです。

ではなぜ臨界期がおこるのでしょうか。
大脳皮質には興奮性細胞と抑制性細胞の2種類があり、この2つのバランスが正常に発達したとき可塑的な変化が起ります。
脳内の抑制機能を操作することで、可塑性の引き金となることが動物実験で証明されています。

この実験では本来の臨界期だけでなく生涯にわたっていつでも可塑性を取り戻すことができます。
一方、臨界期を早めるなど、臨界期の時期を人工的に操作することにも初めて成功しています。

臨界期の仕組みは視覚だけでなく聴覚、言語や物体の識別能力なども同じです。
最終的に臨界期の仕組みが明確になると、大人の脳に可塑性がない理由も明らかになります。
それによって大人の脳に臨界期レベルの可塑性を取り戻すことも可能になるはずです。

例えば日本人が苦手な英語の「L」と「R」の区別を少しずつ教えることにより最終的には大人でもネイティブの発音を認識することも可能になるのです。


慈性幸佑

http://open-waseda.jp/gakubu/regist/

http://yomijuken.jp/