『源氏物語』はフィクション。確認。 | El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

2015年1月4日から「Diario de Libros」より改名しました。
メインは本の紹介、あとその他諸々というごっちゃな内容です。
2016年4月13日にタイトル訂正。事務机じゃなくて「事務室」です(泣)。

こんにちは。百人一首を一部覚え始めている、エドゥアルド・ルイスです。きっかけはもちろん、今年のNHK大河ドラマ『光る君へ』。百人一首の歌人のうち7人が出ているので、人物関係暗記の助けにもなるかとメモに書いてテーブルに置いています。

そんな枕から今日は『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 前編』を紹介。あらすじは第一回から第十九回まで収められています。

 

もちろん出演者紹介・インタビューも充実。多彩な出演者の役への意気込みや解釈が読み応えあります。

面白いのが藤原行成役の渡辺大知さんの書にまつわる話。ご本人は「書道は苦手」(p.82)と仰ってましたけど、題字・書道指導の根本知(ねもとさとし)さんから見ると「驚いたのは藤原行成役の渡辺大知さんの書のうまさです。行成は字で評価されている人。渡辺さんは指先が器用で、リズム感覚もよく、すぐにお手本どおりに書いてくれます。」(p.144)いやぁ、本人からだけだと、わからないものなんですなぁ(笑)。こうした裏方のコメントにも面白い発見があるのは、平安時代という時代劇全体から見ても珍しい題材なのもあるのでしょう。

 

そんななじみの薄い時代ですから、時代考証担当の倉本一宏さんの記事はドラマを深読みするうえで必読。登場人物FUJIWARA多過ぎ問題の歴史的起源や平安人なりのソーシャルディスタンスの取り方など、よく解ります。結婚観についての記事は武士の時代と全く違う「婿取り婚」がキーワード。夫婦別姓とか男女対等そうに見えますけど、妻の実家側の経済的負担が一方的な割に子供は夫の姓を名乗るなど結構厳しい。この構造では打毬後に汗拭きながらのボーイズトークの論理が貴族の男子として正しくなってしまいます。「まひろがあんなショック受けるのはどうなの?当時はあれが普通だったんでしょ?」とはウチの母で確かにその通りなんだけど、ほら、どんな常識も改めて言葉にするとショック大きいもんだから……。

あとこの場で書いとくと『源氏物語』は「あくまで空想上の話」(p.202)。プレイボーイの代名詞・光源氏は、プレイボーイ性も含め、沙織殿とおなじく、フィクションの産物です! 現実と混同されるようになったのは時代が遠くなったからか、紫式部の筆力が偉大過ぎたからか……。

 

「プレイバック大河ドラマ」は1976年放送の『風と雲と虹と』。平将門と藤原純友が主人公です。加藤剛も緒形拳もカッコイイよなぁ。荒々しさが武士っぽいですが、時系列としては紫式部よりも前。まぁ武士の時代への道はいったん首チョンパされたってことで。こちらも吉永小百合さんや草刈正雄さんの回想が収められています。

 

そんな『光る君へ』、平安時代だからさぞ穏やか、女性主人公だからさぞむせるような平和へのメッセージてんこもり、とか、そんな見てない内からの妄想は捨ててしまえ!なのは第一回から視聴している方ならご存じでしょう。あの路線で行くと思います。後の時代に成立した百人一首だって「宮中での勢力関係がここにも反映しているようで、興味深い。」(p.127)ってなもんですし。

 

 

El que recopiló Ogura Hyakunin Isshu, antología de cien wakas por cien poetas, fue Fujiwara no Teika.

(百人の歌人の百首を集めた選集『小倉百人一首』を編んだのは藤原定家であった。)

 

 

『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 前編』

NHK出版

高さ:25.7cm 幅:18.4cm(カバー参考)

厚さ:1.1cm

重さ:500g

ページ数:219

本文の文字の大きさ:3mm