みんないうよね、「言語はツール」 | El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

2015年1月4日から「Diario de Libros」より改名しました。
メインは本の紹介、あとその他諸々というごっちゃな内容です。
2016年4月13日にタイトル訂正。事務机じゃなくて「事務室」です(泣)。

12年分もたまった私のブログ記事をご覧いただければお分かりかと思いますが、私は語学専攻でした。卒業後も何かしら語学の関わる仕事をしておりますし、興味の分野に語学もデンと鎮座しております。

せっかく大学でしっかり学んだ外国語を活かせる仕事をしたい! それは外国語学科卒の学生なら誰しも思うこと、なんですが……

 

面接者「外国語学科の人でそれ言う人結構いるんだけど 言語ってのはあくまでツールだから…… そのツールを使ってどんな仕事をしたいか、説明できますか?」

(p.7)

 

ハイッ、人によってはピキッと来る一言がスタンダードな世の中の難題を扱ったのが『外国語をつかって働きたい!』です。「第1~4章は筆者自身のエッセイ漫画、第5章は取材漫画です。」(p.3)との通り、前半と後半に分かれております。

 

作者の小島さんの特異な経歴はそれ自体が外国語をつかって働く難しさを体現しています。半面、幅広い発見もあります。

個人的にアンニュイだったのはネイティブの翻訳スタッフの、誤用。句読点の使い方が全然なっていないのを恐る恐る注意したら、自分はネイティブだ、外国語話者に文句言われたくない!と逆ギレされたのです。大事な仕事の文書なら正しい用法に従う必要があるのに、なまじネイティブだから始末に負えません。彼女と同じ母語話者の同僚に同情されたのが救いでしたが。

仕事の助けになったプラスアルファのスキルも興味深かったですね。外国語学科卒に限らずMOSは取って損はないかも。そういえば昔、ネイティブが流暢な日本語でパワポで資料作ってくれない?と頼んでたCMが流れてましたよね。

 

後半の外国語をつかう仕事取材漫画、担う方々は経歴からしてさまざま。感じ入ったのは司法通訳者の細かな気遣いですね。小島さん自身がかつて彼女の通訳講座を受けたのですが、選ぶ動詞(中国語なので漢字にして一文字!)で印象が恐ろしく違うのには驚きました。

本当に「言語はツール」と就職してから外国語を学んだ工場SE(システムエンジニア)の方の知見も興味深い。SEって実は現場とプログラマーの橋渡し、“通訳”に近い仕事なんだとか。日本人同士でも通じないことがある一方、双方に技術の知識があればカタコト英語や単語の羅列でも意思疎通はできる、「「技術」が共通言語みたい」(p.145)には納得。半面、コロナ禍で直に接することができなかったために語学の大事さを痛感していたのに驚きました。やっぱり、できた方がいいんですよね。

そして、後進の方へのメッセージには仕事の魅力を伝えようとする意気込みが全インタビューに共通して見られました。

 

現在はイラストレーターの仕事をしている小島さんですが、翻訳的「思考」が今の仕事に活きているかも、との言葉も興味深い所でした。外国語で広がる仕事の世界はとても広く、その点でも本書は必読です。

 

 

Deseo aprovechar mi capacidad de idioma en el trabajo.

(仕事で自分の語学力を活かしたいです。)

 

 

『外国語をつかって働きたい!』

小島さなえ

左右社

高さ:18.8cm 幅:13.1cm(カバー参考)

厚さ:1.5cm

重さ:232g

ページ数:175

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