英語をどう教えるかについては様々な議論があると思います。特に文法について、古典的な教え方にこだわり、例えば仮定法現在の指導において、要求、命令、…等の動詞が目的語としてとるthat節内の述語動詞が原形もしくはshould+原形をとることについて原形が元でイギリス人がshouldを使うようになったという話や逆にshouldが省略されたという説明があります。どちらが歴史的に見て正しいのかは調べていただければ判断がつきますので、私はあえて事の正誤を申しません。私がいいたいのは、英文法の研究者になるのでなければどちらで説明しようが別に構わないのではないかということです。


文法には2つのものがあると考えます。


一つは母国語話者が母国語を正しく用いることができるようにしている文法です。私達の多くが日本語の文法について(中学校で教わったことは微かに覚えてはいるけれども)ほとんど意識しないでコミュニケーションをとれている訳ですが、やはり脳に正しい日本語を話すためのルールが何らかの形で存在しているのでそういうことが可能なのです。このような研究をはじめたのが生成文法という概念の提唱者ノーム・チョムスキーです。


もう一つは、いわゆる文法で、注意深い観察者が母国語話者たちのアウトプット(言語現象と呼びましょうか)を見ていて、こういう時にはこういう表現をするのだということを体系的に考えて記述したものです。


英語を教えている時に一番教えている感が醸し出されるので予備校の英語の講師で英文法のクラスを持ちたがる人が一定数います(これは余談ですね)。


母国語話者でもなく、幼少でもない者が英語などの外国語を学ぶ時には、やはり後者の文法の知識に頼らざるを得ません。しかし言語学者を目指すのでなければ、結果としてその言語を用いて正しいインプットとアウトプットができればよいと私は考えています。特にある現象に対する説明がいくつもあるならば、オッカムの剃刀で、最もシンプルな説明が一番良いのではないかと思います。


予備校業界等で成功されている方は、それぞれ最もシンプルな説明を極めていらっしゃるのだと拝察しています。ただ、オーバーな単純化は危険だということだけは申しておきたいと思います。


私はテキストエディターを用いてコーディングや文書作成をしているのですが、優秀なテキストエディターは、ある関数を用いる時にその引数についての示唆を与えてくれます。この機能を英語学習に使えないかと考えました。


英語の学習のキモは動詞の語法の理解です。そこで動詞を関数だと考え、主語や目的語、補語を引数だとみなすようなエディターを使ってプログラミング言語を学ぶように英語を学べないかと考えました。


まず自分がいいたいことを表すのに使う動詞を選択します。その動詞を選択すると、左側に名詞(主語)と後ろ側にその動詞が要求する目的語や補語の入力を促すヒントを与えるのです。基本的な動詞についてはとるべき引数にバリエーションがありますが、その場合にはそれらの一覧が表示され選択できるようにします。


例えばsayと入力すると、someone/something say something (to someone)という表示が現れてこの場合2つ(もしくは3つ)の引数として名詞を要求するプロンプトが現れ、それらを与えるという形で英文を組み立てることができるようにします。利用者は引数として求められた名詞を入力します。初めの段階では名詞と関連する冠詞や単数・複数についての知識は補完するか、当面放っておくかは意見が分かれると思いますが、英文を構成する上でより本質的なことから理解させていけば良いので、Maggie hello Johnという引数を与えれば、Maggie say hello (to John). という英文が生成されます。これはこのままでは正しくありません。sayの時制が問題となります(三人称単数現在のsがないことも問題になるかも知れませんが英文の内容から考えて現在単純形を用いることはレアケースだと思われます、脚本とか実験のプロセスを述べる時などに現在単純形が使われることがあることは承知していますが)。しかし、それは後から修正すれば良いこととして、情報の並べ方がものをいう英語であれば、一応統語論的には正しい文に近付いています。まずはいくつかの動詞の使い方をプログラミング言語における関数と引数という概念になぞらえて初学者に教えることには意味があると思います。動詞の引数として名詞及び形容詞(叙述用法)を認識させるというお話です。初手で統語論を重視して英語の導入をはかるというのはいかがでしょうか?この続きはまたあとに投稿しようと思います。