いや~もうね。大変ですわ。

一応、「天文台まで装備の理数塾」を標榜している以上、月食なんて天文現象を無視するわけにもいかず、しかし、天文関係は、その日の天気しだい、という事もあって告知は前日から。当日もそろばん教室の方(そろばん教室も併設しております。)は生徒さんのうちに電話かけまくって告知です。

屋上には、たくさんの人に見てもらえるように、自作の20センチ長焦点ニュートン反射望遠鏡と、初登場の15センチ屈折望遠鏡を設置。(残念だけど、新型コロナへの対策から完全三密になってしまう「天文ドーム」は使えません。)

で、夜を迎えました。

いや、実はこの日は授業があったのですが、「悪いが俺はちょっとの間、屋上で月食を見せてる。見たい人は来てね。勉強したい人はしていて。ちなみに今日はこんな感じだから授業はノーカウントでかまいません。今日の分の授業は他の日に振り替えてもいいからね。」と、実に勝手な事を言って教室を出た。生徒は「いつもの事だ。」みたいな顔をしてもくもくと勉強をしている。

ドアをあけると、教室前には、( ;∀;)・・・・・・・

おそらく50人以上はいるのではないか、という人・人・人・・・・

しかし残念なことに今日は観望をサポートしてくれる人がいない。

で、屋上。もう、泣きながら写真撮ったけど、こちらも心臓バクバクでぶれまくり。

よく、屋上の床が抜けないよね。

ええ、そんななかでも根性出して、月食の写真も撮りましたよ。ぶれて、ピンも甘くて情けないけど、あの状況でこれだけ撮れた自分をほめてあげたい。

↓どんどん欠けていく月。

会期直後の赤い月。これはプリントしてきた生徒みんなにあげよう。

さて、さすがに、天王星食まではこれだけの生徒たちを屋上に残すわけにもいかないので、「すみませんが、授業中なので、今日はこれまで。天王星食は、実はゴマ粒みたいな小さな星が月に隠されるだけなので、そんなに面白くないですよ。」などと言って帰ってもらった。この時午後7時半。天王星食は午後8時40分ぐらいだし、だいたい、天王星が月に入りこむのは一瞬。とてもじゃないが、50人以上に見せられないしね。そんなことをしたら「天王星食」の一瞬の間で望遠鏡の壮絶な取り合いが生じそう。それにたぶん、素人さんがみても、あまり面白くない現象だと本当に思うしね。

(そろそろ電子観望を本格的に取り入れて、大きなモニターでみんな一緒に見られるシステムを構築しますね。ごめんなさい。)

 

だけど、さすがに私自身は天文マニアだけあって、ついつい、授業中、天王星食が起こる8時40分ちょっと前にはそわそわしだす。生徒には、「ちょっとだけ出てくる。すぐ戻る」とことづけて、走って誰もいない屋上へ。自動追尾されている望遠鏡をのぞくと、まさに天王星が月に隠される寸前。ああ、間に合ったあ!と思ったとき、すぐわきで

 

「ド~ン!」

と大きな音がした。同時に振動で見ていた画面が大きくぶれ、私は思わず音の方に目をやると、近所に住んでいる塾生が、いきなりジャンプして乗り込んでいた!(屋上のふちは立ち上がっていて、階段はそれを乗り越えるために下りで入るようになっている。つまりちょっと高いところから屋上に飛び降りた形)これをやられると、①高倍率観測時、望遠鏡が揺れまくり、観測できなくなる。②階下の住民に多大な迷惑をかける。下手をすると苦情がきかねない。

「お前、何をしているんだ!屋上でそんなことはしてはいけない、と小学生でもわかるだろう!」と怒ったが、「あ!」と天王星食を思い出して望遠鏡を覗いた時には、もちろんすでに「天王星」は月の影に隠れてしまっていた!

終わった。すべて終わった。400年ぶりの天文現象は終わってしまったのだ。「まるで狙いすましたかのように」という表現が、これほどぴったりだった瞬間を私は知らない。

 

おそらく・・・・あの「ド~ン!」は、勝手に一人で天王星食を見に行った私への天罰の音だったのだろうなあ・・・・・そう、それはまさに

「笑うセールスマン」の「例の声」によく似ていた気がするのだった。ああ、「お笑い天王星食」。人生って何だろう。