梅雨直前のこの時期、桜の老巨木たちに、気味の悪いオレンジ色の

物体が取りつく。

 

 

これは、「ベッコウタケ」と言って、生きている桜に寄生して、枯らしてしまう

キノコ。まさに桜の「死神」だ。温暖化の影響か、この10年くらいの間に、

思いっきり繁茂するようになった。これを食い止める方法は、残念ながら

まだ無い。ただ、各地の研究者や桜愛好家たちがこのベッコウタケとの

死闘を繰り広げている。そして、何かのとっかかりを見つけてはネットで

情報共有をしている。

で、私も出来るだけの事はするのであった。まずは見つけ次第、ドライバーで

オレンジ色のキノコ(子実体)を剥ぎ取る。

剥ぎ取りまくった「ベッコウタケ」の子実体。

 2本の桜から5キロ以上取れた。

もちろん、桜の幹に出ているのは、「ベッコウタケ」の子実体であって

本体である「菌糸」は、樹木内部に巣くったままである。

で、ベッコウタケの対抗菌種登場。

この緑色のものは「トリコデルマ菌」と言って生きたキノコに寄生するカビ

である。シイタケ栽培の時にこの菌が入り込むと、「全滅」することもある

くらいキノコ類にとっては天敵である。これをベッコウタケに仕込んでやる

のである。

剥ぎ落したベッコウタケの菌糸部分に穴を開け、スポイトでトリコデルマ菌

を注入。あとは、ベッコウタケとトリコデルマ菌との闘いを見守るだけだ。

その時の菌の密度やら、温度やら、湿度やらで菌の勢いは違ってくる。

桜の内部には圧倒的な量のベッコウタケの菌糸が入り込んでいるので

トリコデルマ菌にはそうとうに分が悪いと言えるだろう。

大した効果を得られないかもしれないが、少しは延命できると信じたい。

春に、あの荘厳な桜の花が見られなくなるのは、あまりに惜しい。