夕刻、例の、教室の前にある桜の大木の横を通る時、幹の高い所
に羽化しようとしているアブラゼミの幼虫を見つけた。しかし・・・・やけに小さい。
いや、抜け殻が普通の大きさなのに、羽化中の体が普通のセミの半分くらいの
大きさにしか見えないのだ。薄暗かったし、距離もあったので、私の目の錯覚か
なにかだろう、と思った。次の瞬間、「ブンッ」と、私の顔の横を何かがすり抜けて
行った。それが、その羽化しようとしている「小さな」セミにピタリと張り付いた時、
私はすべてを理解した。
それは、アシナガバチだった。普段はイモムシ等、比較的小さく、肉団子にしやすい
柔らかい昆虫を獲物にするのだが・・・・・(下の動画は自宅玄関で昨年撮った
イモムシを肉団子にしている動画)
しかし、大型昆虫アブラゼミといえど、体の柔らかい、それもまったく抵抗できない
羽化の時だと獲物になってしまうのだ。小さく見えていたのは、腹部がすでに肉団子に
加工され、持ち去られていた後だったのだ。アシナガバチにしてみれば、この状態の
無抵抗なセミはかっこうの獲物なのだろうな。
しかし、何年も土中で幼虫として過ごし(7年と言うのは実は俗説で、通常のセミは
それよりはかなり短いようですがそれでも2~5年。)、やっとこれから、と言うときに
生きたまま、無抵抗なまま肉団子にされていくって、強烈に残酷だ。
だが、このアシナガバチにも、この肉団子を待っている子供たちがいるわけで・・・・・
結局、僕は傍観者に徹して写真を撮り続けたのであった。セミ、ごめん。
翌朝、固くなり、肉団子にできなかった部分は路上に落下し、たくさんのアリ
が群がっていた。こうして一つの命がたくさんの命につながっていくのだね。
自然の摂理というものなんだろうね。