かつて、福島の山奥に「不動湯」という温泉旅館があった。十分に「秘湯」

と言って良いだろう。その鄙びた感じが良く、私も何度か利用させてもらった。

以下、当時撮った写真の数々。

新緑、紅葉の季節は格別で、「癒しの湯」とはこういう所を言うのだな、と思った。

私が一人旅で利用した部屋。この感じもまた風情があるのだ。

女将も、まさに、まんま女将なのだった。それ以外、想像することすら「不可」

なのだった。

かつて、かの高村光太郎も宿泊した部屋。

ちゃんと宿帳にも智恵子と一緒に記載している。

芸術家夫婦は、この部屋で、いったいどんな会話をしていたのだろうか・・・・・

さて、そこで原発事故。私は、矢も楯もたまらず、営業していることを確認

すると、宿を予約して駆けつけた。原子力発電所から70キロの距離だが、

線量と距離は、必ずしも一致しないことはホットスポットの柏にいて十分に

骨身にしみていた。当時ははっきりしたデータもなく、状況を確かめるには、

自分で行って線量を測るしか、他に方法はなかった。

実測すると・・・・当時の柏よりずっと低くてびっくりした。その測定値を写真に

撮って、後で送付してあげた。「いろいろ風評被害もあるかもしれないから、

その時はこの写真を見せて下さい。」と一筆添えて。

 

ところが・・・・・これは全国ニュースでも流れたので、知っている方も多いと

思うが、原発事故の2年後、まさにこれから復興というときに、不動湯は火事で

全焼してしまったのだ。上記の写真に写っている建物は、すべてなくなって

しまったのだ。

不動湯のHPは「休業」を示したまま凍結した。

ああ、この空虚感は、なんなんだ!それから、いったい何度、変化のない

HPを開き続けただろう。なんど「不動湯」で検索をかけたことだろう。

もしかしたら、復活しているかもしれない。またあの女将が元気で迎えて

くれるかもしれないと。

 

先日、いつものように、また「不動湯」を検索にかけたら・・・・・

なんと、見たこともない不動湯のHPが出てきたのだ。

http://www.naf.co.jp/fudouyu/

 

読んでみると、「日帰り温泉場」として再開した、と書いてある。久しぶりに、

胸がときめいたぞ。これはすぐに行かねばなるまい!

 

続く