おや、利根川に向かう、変わった鳥居。木でできた相当大きなものだ。
帰って調べてみたら、昔、神様がこの川岸から上陸したという言い伝え
があるのだそうだ。目をつぶると、この川岸から巨大な神様がのそっと
上がってくるのが見える気がする。こういうのって本当に面白いね。
ここら辺から、本格的に向かい風になる。ペダルの重いこと重いこと。
利根川越しの茨城県がわにたくさんの風車の群れが。この風の
強さがいつも吹いているのなら、そりゃ電力半端ないだろうね・・・・・
さあ、あと19キロ先に海がある。もう少しだ!
いよいよ向かい風が強くなる。渾身の力でペダルをこぐも、なかなか
前に進まない。時間は刻一刻と過ぎ去っていく。こうなると、もう秘密兵器、
妄想モード。無事に宿について、たらふく御馳走を食べて、温泉にまったり
つかっている自分を想像するのだ。不思議と笑みがこぼれてくるぞ。
そのうえ、なぜだかサイクリングロード自体が喪失。ううううう。まじですか。
たまたまランニングしていたおじさんに「サイクリングロード
どっかにありませんでしたか?」と聞いたら、
「あ?ここでサイクリングロードおしまいです。あとは国道
走ってください。」とのこと。ううううう。
探しに探して、やっと国道にでる。道幅狭く、車に轢かれそう
なことこの上なし。
そしていよいよ銚子市に入る。だけど、本当にここからが大変だった。
この時点で夕方午後5時40分。宿には6時に着、とか言っている。
すぐに電話すると「犬吠埼の食事処は夜8時には閉まっちゃいますよ。」
い、急がねば。
しかし、この後、とんでもない「罠」に陥ることになる。国道を海に向かって
東に進んでいると、何やら殴り書きしたような立札が・・・・
「犬吠埼こちら」と北に向いている。おかしいなぁ?犬吠埼はどちらか
というと南だよなぁ?とか思うが、疲労で頭が回らない。そのまま立札
どおり北に向かった。ああ、それがこんなことになろうとは・・・・・
結局、道は浜をぐるっと回って遠回りして犬吠埼に向かっていた。
青い道が、最短コース。赤い道が今回「罠」にはまったコースである。
そんなこととはつゆ知らず、港だ港だ、と騒いていたときの写真。
この時、すでに午後6時30分。まだ実は利根川である。
途中で気づくも後の祭り、一時間近くのタイムロスを覚悟して強風の中
走り続けた。おお、遥か彼方に目標の犬吠埼灯台を発見!午後7時15分。
早くしなければ夕飯を食いはぐれる!
信じがたいスピードであの灯台の向こうにある「犬吠埼駅」に到着。駅前の
魚処に滑り込む。午後7時30分。ぎりぎりセーフ。足ががくがくで、まともに歩けない。
お店の人が「大丈夫ですか?」と気遣ってくれた。
で、とりあえず、ビール。このビールの美味いこと!
しかし、写真に入っているデータを見ると、上の灯台の写真を撮ってから
下のビールを飲むまで本当に15分しかたっていない。無意識に瞬間移動
でもしたのだろうか・・・・
で、刺身定食!2,160円なり。いや、この鮮度、この分量でこれは安い!
「刺身」というのは、二種類の食べ方がある。わざと時間をおいて、たんぱく質
がアミノ酸に分解して「味がおいしくなる」のを待つ食べ方。もう一つは、鮮度に
こだわってとにかく新しいうちに食べる方法。これだと味は淡泊になるが
たんぱく質がそのままなので、歯ごたえはプルンプルンである。
この刺身は明らかに後者。これまででこれほどの弾力性のある魚は初めて
食べた。まあ、厚さは2センチくらいあったしね。2~3キレあれば、ごはんが覆
えるほどでかかったし。とにかく、ほぼ、刺身だけで腹いっぱい。幸せぇ~
体の中はすっからかんの状態だったが、今食べたものが、みるみる
消化されて体に吸収されていくのがわかるようだった。つい先ほどまでの
極限状況を考えると、これはまさしく極楽浄土だ。「幸福」とは、体験の下限
から上限へのコントラストの差の大きさなのだとつくづく思う。極寒の雪の日に
何時間も歩いて来た後のお風呂なんか、最高でしょ?
言ってみれば数学で言うところの「正の傾きの大きさ」「正の微分係数の大きさ」
ですな。(「負」だと地獄を感じますがな。「幸せの絶頂からどん底に叩き落さ
た」ということになるから。)
もちろん醤油は・・・・・「ヤマサ」ですよね。銚子ですから。
いつも行く江戸川沿いは、野田の近くで「キッコーマン」ばかりです。
で、いったん宿に入り、近場のホテルで、屋上展望大浴場があるというので
いったん外出。(俺も元気だねぇ)温泉で完全に生き返った!
で、今日の全行程。よくここまでこれたなぁ。けど、明日はまた自転車で
帰らなければならないのだ。
怒涛の帰路に続く