食堂で思いっきり時間ロスして、午後9時。んでもって、まだここ。

午後9時
本当に、今日、帰れるのだろうか・・・・・
いや、時速20キロ見当で走れば、あと3時間はかからないだろう。
とにかく、走れ自分!

暗闇の中の湖
よく、チャリで遠出した、とか言うと「いい自転車持っているんでしょうねぇ。」
とか言われる。いえいえ、実はこの自転車、7、8年前、オークションで1万
で買った、超オンボロ折りたたみ自転車なんです。最近は寄る年波に勝てず、
クランク軸は中のベアリングが割れたか、グラグラ。その上、冗談のように
オフロード使用のぶっといタイヤをつけているので、ペダルが重いことこの上
ないのだ。いわば、「筋トレ」のための自転車。向かい風の時や、上り坂
の時は「負けるもんか!」というセリフが自然と出てくる仕様です。
これは、昔の柔道の人が、鉄下駄を履いて日常を送っていたのに近い。

でもこんな時は、心強いのだ。見よ、突然の砂利道。オフロードのぶっといタイヤ
で、まったく苦もなく走れるぞ。

途中の砂利道
途中、湖畔で不思議な建物発見。なんかの研究所に
見えなくもない。

怪しげな建物
表札は、と。なんか怪しい。ウルトラQや、怪奇大作戦に出てきそうだな。
ちなみに右のガラスに幽霊、じゃやなく、カメラを構えた私が写っております。

怪しげな表札
と、だれが買うのかこんなところに真っ白いダイドーの販売機。

カエルの販売機
白い→明るい→飛んで火にいる夏の虫→カエルのお食事処
世の中うまく出来ている。

アオガエルいっぱい
で、実はこの後が大変だったのだ。ココらへんで思いっきり道に
迷ってしまった。午後11時を回った頃だった。
サイクリングロードが途中で消え、訳の分からない田圃道みたいに
なった。というか、気がついたら、周りは田んぼだらけだった。
ほとんど、明かりのない中、湖と田んぼの区別はつきにくい。
せめて星がでていれば自慢の頭のなかの「天文コンパス」で
方向がわかるのだが、あいにく曇り空となっていた。
最終手段、水戸黄門様の印籠よろしく、「スマホ」を出してマップを
展開しようとするも・・・・・なんということかバッテリー切れじゃ~ん。
敵だらけ、危機一髪の黄門様御一行、最後の切り札に、印籠をだすも
「ごっめ~ん、葵の御紋シール、はがれちゃってた。」の世界。

いや、それどころか、自転車のバッテリーヘッドランプもだんだん暗く
なってきた。どうする俺!

迷った
ほぼ真っ暗闇のなか、すべての近代道具はバッテリー切れで役にたたず、
時刻だけは無慈悲に過ぎていく。おお、このなんという心細さよ!

ああ、この、お腹の力がすーーっと抜けていく心細さ、自分の座標軸が
消えていく感、遠い懐かしい記憶があるぞ。
そうだ、小学生の時、やっぱりチャリで遠出して、見知らぬ街で日暮れを
迎えた時の記憶。周りは見たこともない景色。それでも人に「柏って知りませんか?」
と聞いてひたすら走ったのだった。見覚えのある道に出た時の嬉しかった
こと。

山で原生林に踏み込み、やはり方向が全くわからなくなった時も、相当に
心細かったね。あの時は、ほとんど「命がけ」で帰投したのだった。

なんか、この消え入ってしまいそうな「心細さ」は、懐かしさもあいまって
嫌いじゃないのに気づいた。なにか、自分が試されている感じがいい。
「お前の力を見せてみろ。」ってね。
こう考えると、消え入ってしまいそうな心から、不思議と力が湧いてくる。
「まだだ。まだやれる。」ってね。

という訳で、真っ暗闇をひたすら走った。ライトは3灯つけているのだが、
一つにしてバッテリー切れに対処。

さて、深夜12時頃、やっとすこし広めの道に出る。すると・・・・・・
大きな農家の庭の端っこにある倉庫に、茶髪の若者たちが10人位
たむろしている。何やらダンプを横付けし、倉庫から黙々と荷物を運んで
いるぞ。お互い同士、まったくしゃべらない。

しかし、こっちもとんでもない状況で相手の様子にかまうゆとりなどない。
「すみませ~ん!ここどこでしょう?土浦方面はどっちですか?」と声を
かけた。しかし・・・・・彼らは、最初そうとうに怯えた表情をしていたが、
まったく返事をしてくれない。
こっちも必死で、「こ・こ・は・ど・こ?つ・ち・う・らはどっち?」と大声を
はり上げたのだが、蚊の泣くような声で「僕たちは、ココらへんの人間では
ないので、知りません。」と・・・・・

仕方ないので、その場を後にして、またチャリを走らせたのだが、
彼らは、何者たちだったのだろう?怪しい感、半端無かったのだが、
それはお互い様だったような気もする・・・・・・

で、どうにか、土浦方面の標識発見!
午後2時半、駐車場に到着。ああ、愛車がたった一台で、ご主人の
帰りを待っていてくれたのだった。ほとんど泣きそうである。
たぶん・・・・・本日100キロを優に超えて走ったね。120キロくらいは
走ったかもしれない。

到着
さて、柏の自宅に帰還、午前3時半。シャワーを浴びて、ほとんど汗で「塩」
だらけの体を洗い、エアコンの良く効かせた部屋で、ビールを流し込んだ。
これ以上にない、極楽。今朝からの長い、長い一日が酔とともに脳裏に
流れていく。たぶん、こういう時間が欲しくて、こんな馬鹿なことをやっている
のだね。今日、飲んだ水は4リットル。ほとんど尿もでなかっったので、
流した汗も、同量だろう。ドロでつまりかけた町内の側溝に一年に一度大量
の水を流して一気に「つまり」を取り、「流れ」を良くする、というのを「体」で
やったような気もする。
で、4時就寝。翌日はお昼まで熟睡であった。まあ、たまにはこんな日もいいさ。

                                      (終)