デング熱の感染経路は、少なくとも日本では「ヒトスジシマカ」に
限定されているといっていいだろう。というわけで、今回は
「ヒトスジシマカ」の生態、および、刺されない方法を書いてい
きます。
まず、写真を撮るために、庭にでました。いや~、出てくる
出てくる。まず、僕のカカトにとまりましたよ。
下はサンダルです。あまりにカカトが固いのか、口吻(針)
がささらなかったようです。で、注目点は、赤い円のところ。
ちょっとピンボケで悪いけど、ここに白い一筋の線がある
のがわかるりますか?だから「ヒトスジシマカ」
わかりやすすぎる命名・・・・・
で、そうこうしているうちに、カメラを持っていない方の手に
やっと上陸。で、撮影成功。ええ、このお見苦しい毛むくじゃらの
腕が僕のモノです。赤い円内、やっぱり「一筋の線」があるのがわ
かるでしょう。青い円内に僕の腕にぶっ立てた口吻(針)があります。
ロシアンルーレットのようですが、デングウィルスが入っていない
ことを祈ります。(良い子は絶対にまねをしてはいけません。)
それにしても(ほぼマクロ専門カメラリコーCXは本当に便利。
もう売っていないけど。)
さて、このヒトスジシマカ、別に人の血液を好んで吸血する
わけではない。イヌ、ネコ、ネズミの哺乳類から、鳥類、両生類や
カメ、ヘビ等の爬虫類まで動物ならなんでも吸血しまくる「超悪食
吸血昆虫」だ。(一部の情報では「魚の血を吸っていた。」なんて
のもあった。)だから、他の生物のウイルスを持ち込む危険性も
ある。実際、アメリカではこのヒトスジシマカが、鳥の体内の「西ナイル
ウイルス」をヒトに媒介して大問題になっている。また犬を殺す寄生虫
「フィラリア」を媒介しているのもこいつだ。
成虫になってからの寿命は約1カ月。その間に4回程度の吸血を行い、
吸血後5日くらいで80個程度の卵を水たまりに産む。だから生涯で
産卵を4回も行うのだ。血を吸うのは卵を作るためで雌のみ。
雄は花の蜜なんかを吸って生きている「完全菜食主義者」だ。
雌の一回の吸血量は2mg程度。ほぼ蚊の自重と同じ。だいたい、
血液1/20滴くらいだ。100匹に吸われても血液5滴程度だから、かゆく
なくて、変な病気を持ってさえいなければ、吸わせてやってもいいん
だが・・・・・・(実際に、「ヒル」には、変な病原性がないため、わざわざ
「ヒル」に血を吸わせる療法も存在するのだ。)
また、このヒトスジシマカ、意外だが、「昼行性」といって、昼に活動
する蚊なのだ。正確に言うと、彼らは、夜目が効かない。獲物に取り
つくとき、けっこう視力に頼っているので、真っ暗だとダメなのだ。
まあ、「昼行性」といっても活動のピークは朝方と夕方である。
(夜に枕元にプ~ン、とやってくる蚊はほとんどが「夜行性」のアカイエ
カだ。)
飛翔力もあまり強くなく、行動範囲はせいぜい100m。完全な「野外
待ち伏せ型」で木陰や草むらで、じっと獲物が来るのをひたすら待つ
典型的な「やぶ蚊」。飛翔力が弱いので、移動するときも風の弱い
「壁」や「塀」伝いがほとんど。
獲物感知能力は4~5メートルで動物の呼吸ででた二酸化炭素や
汗の匂いに敏捷に反応し、わさわさと集まってくる。だから、早朝や
夕方、短パン、ランニングなどで森林公園をジョギングする、なんて
のはもうヒトスジシマカにとって「かもねぎ」状態と言えるだろう。
以上より、ヒトスジシマカを避けるには
短期対策としては
①野外では、明るい色の長袖長ズボンを着用。(蚊は暗い色が好き。
また薄手の靴下や、ストッキング程度では口吻をぶっさして吸血します。)
②外出時は、虫よけ剤を!(有効成分はディートですが、日本の虫よけ
剤は規制により10パーセントと薄いので、2~3時間しか効きません。
野外活動が長引く際は、数時間おきに繰り返しの塗布を。また、
野外用携帯蚊取器を過信しない。もちろんあった方がずっと良い
ですが、経験上、つけていても必ず何か所か刺されました。昔ながらの
火を使った「蚊取線香」の方が効きが良いようです。)
③「プ~ン」と羽音が聞こえたら、そこから4~5m、蚊の隠れる場所の
ない方向に移動すること。壁や塀伝いに来るので、そういったものから
も離れる。彼らからすれば、とつぜん感知範囲から消え、獲物が「神隠し」
にでもあったように思うでしょう。
長期対策としては
とにかく、水たまりを無くす。ボウフラを食べる魚や昆虫のいる池や
沼より、天敵のいないちょっとした水たまりの方が蚊には好適。
今やアメリカにもヒトスジシマカはいるが、これは、日本の中古タイヤ
を輸入した時に、野ざらしだった中古タイヤ内の「雨水」に、蚊の卵
かボウフラが潜んでいた、という話があるくらいです。水が捨てられ
ないところは、ボウフラ用の殺虫剤があるので、投入してください。
さて、これからのヒトスジシマカは、最後の卵を産む季節に突入します。
後のない雌の吸血志向はマックスになり、通常よりずっとアグレッシブ
に襲ってきます。みなさん、ご用心!もう、デングウイルスを持った
ヒトスジシマカは、代々木公園だけにいるのではないのですから。
※10月下旬~11月初旬で成虫は死滅するはずなので、いったんは
「デング熱騒動」は沈静化するはずです。成虫から卵へはウイルス
はまず伝わりません。