さてさてGW、やっぱり星見にでかけようと
栃木に向かったのでありました。
夕刻5時ごろ、山頂はまさに「嵐」でございました。
土砂降りの雨、横殴りの風。ただ、天気予報は
夜半から晴れると言っていたので、それだけを
頼りに車中でじっとしていたのでございます。
もちろん、山頂には僕1人。と、言いたかったが
なんと、バイクが置いてある!乗っていた人間は
この嵐の中、何をやっているんだ?まさか、山の
中をさまよっているのではあるまいな。心配では
あったが、この嵐の中、車中からでるわけにも
いかず、様子を伺っていたら、バイクの持ち主が山の
中からかえってきた。ずぶ濡れの濡れ鼠状態。
で、バイクですぐにこの場から撤退しようとしたのだ
ろう。一生懸命エンジンをかけるのだが、これが
まったくかからない。風雨はますます激しくなる。
日はどんどん落ちて暗くなる。車中からこの状態
を眺めていた私はさすがにかわいそうになった。
で、土砂降りの中、私も外に出て、救助の真似事
をはじめたのだが・・・・・・・・
その男は、おそらく40過ぎの、ポニーテールの方で
あった。よほど寒かったのか、ぶるぶる震えている。

私はまず、バイクのバッテリーを疑って、私の車のバッテリー
と直結してみる。けど、一向にエンジンはかからない。
これは、簡単な故障ではない。少なくともこの極限
状態でどうにかできる故障ではない。
「私にはどうすることもできません。携帯をお持ちですか?
JAFに応援を求めましょう。」すると
「僕、携帯もってません。」
「え?僕もPHSは持っているけど、山中では通じません・・・
ここにいたっては二つしか方法はありません。この極限
状況で朝まで待つか、私があなたをとりあえず、電話のある
所まで連れて行くか、どちらかです。」

彼は躊躇無く、後者を選んだ。日はもうとっぷり暮れていた。
助手席に満載だった荷物は外に出し(雨だけは上がった)
彼が座るスペースを確保してポニーテールのおっちゃんを
乗せ、車はふもとに向かったのだった。
「電話は、県民の森に有りそうな気がします。」
彼は簡単にこういったが、ここから15キロはある。舗装されて
いるとはいえ、相当に曲がりくねった道なので片道30分以上は
ゆうにかかる。あああ、貴重なお休みが無くなっていく。
ここで私はある種の違和感を覚え始めていた。
そう、彼はまったく他人事のようなのだ。あの嵐のなか、
一生懸命私が電源ケーブルを接続していた時も感謝の言葉を
言う事も無く、まるで私がお手伝いする事が当然、という
感じなのだった。う~む。

で、なんとか、ふもと近くの公衆電話にたどり着いたのだった。
標高がかなり下がったので、外気はかなり暖かく感じる。
雨はとっくにやみ、風も相当に穏やかになっている。
あの嵐は山頂のみ限定のものだったのだな。
彼は、電話で長い事なにやら話していた。するといきなり
「牽引車が来るのに相当長くかかるみたいです。」と・・・・・
「来るまでいっしょに付き合ってくれ」と当然のように考えて
いるのは明白だった。

彼と、この貴重な今宵、二人で過ごすのは絶対に避けたい。
何のために栃木くんだりまで来たのかわからなくなる。

「あなたにはやはり二つの選択肢があります。このまま私と
山頂に行き、バイクの傍らで牽引車を待つ。ただし、あの極限
状況に耐えねばなりません。後一つの選択肢は、ここで待つ
ことです。電話ボックスの住所は分かるでしょうから牽引車
はここを目印に来られるでしょう。また、ここはかなり暖かいし
電話ボックスに入っていれば凍える事もないでしょう。ただ、
その場合、私は、さすがにここで待つわけにはいきません。
荷物も山頂におろしたままになっていますし。」
彼は躊躇無く後者を選んだ。私が彼から解放された瞬間だった。
「では、私は山に戻ります。お気をつけて!」と言ったら、その時
初めて「ありがとうございました。」と言った。どうやらこのセリフを
知らなかったわけではないようだった。まあ、万一牽引車が来なく
ても、ここからふもとのコンビニまで1~2時間で歩いていけるだろう。
キャンプ場までなら20分だ。
で、山頂に戻る。山頂は、雨こそ止んでいたが、風は猛烈で、
もちろん誰もいなかった。これが、山頂に残されていた彼のバイクだ。
バイク
さて、あまりにも風が強い。本当に台風並だ。
仕方ないので、場所を移す事にした。この山頂のちょっと
下に、森に囲まれた風からの避難所みたいなところがある。
そこは、山頂がどんなに風が強くても、周りの木々のおかげ
で弱風になり、なんとかなるのだ。その代わり視界はあまり
良くなくて低空の星空は見えないのだが・・・・

早速そこに移動して望遠鏡を組み立て、車中で夕飯。
ああ、あのポニーテールのお兄ちゃんにご馳走して
やればよかったか。しかし、そうすると彼とともにあの地獄の
山頂で牽引車を待つ事になったか。それに、彼は当たり前
な顔でこのステーキを平らげただろうなぁ。
今日はエリンギとピーマンとタマネギを付け合せにした
「肩ロースステーキ」でっす。各食材ごとに熱の通りが違うの
で投入するタイミングが大切です。
食事
このエアポケットのような避難場所
ですら、外では恐ろしい風の音がなり響いている。
今日の風は尋常じゃないぞ。
そのうち、外で「バキッ」という音が鳴り響いた。
あわてて外に出てみると・・・・主砲46センチのフードが
破損してぶっ飛んでいってしまっている。
これを製作して25年、こんな事は初めてだ。
フード
ちなみにこれが破損したフード。
望遠鏡破壊
後で作り直さねばならないなぁ。
しかし、フードが無くても、星は観測できるのであった。
ガンダムが首を飛ばされた時、アムロが「まだだ!たかが
メインカメラをやられただけだ!」 と言った心境。
ここまで来て、星を見ないで帰るわけにはいかないので
あった。
空を見ると、星が出てきている。強風は相変わらず
だが、時々風が弱くなる。その時を見計らって鬼のように
集中して星を見るのだ。われながら病気だと思うぞ。
で、偶然風が凪いだ時に撮った写真。さそり座とか、たて座
とか、天の川とか写っています。今のカメラは10秒でここまで
撮れるのです。
星空
え?わからない?では例によって星座線を引いてあげ
ましょう。
星座 
真ん中の明るい光る雲みたいなのが、夏の天の川。
空はすっかり夏の空だ。

で、朝。相変わらず、強風。上空の雲が風の強さを
現しているね。
朝 
帰り、体力も尽きそうだったが、いったん山頂に戻る。
バイクは無くなっていた。無事に帰ったのだな。

途中、喜連川に寄る。大学の先輩がお店をやっている
で立ち寄ったのだが、運悪く会えなかった。
だけど、この景色は心にしみるなあ。日本の原風景、
という感じがする。この右側には町営の温泉がある。
こんど、ゆっくり入りに来よう。
喜連川風景

今回は、なかなか凄まじい星見であった・・・・・