「グロブスター」という名前を耳にしたことがあるだろうか。

 

 正式名称は「グロテスク・ブロブ・モンスター」。

 

 これは、「オーパーツ」や「ファフロツキーズ」という用語を作ったことで知られるアメリカの動物学者、アイヴァン・サンダーソンによる造語で、いわゆる海岸に漂着したグロテスクな謎の肉塊を指すものだ。

 アメリカの太平洋沿岸から南米、ニュージーランド、そして中国沿岸と、世界各地の海では時折、そのおぞましい姿を晒しているグロブスターだが、その正体は未知の生物の死骸であるとも、クジラの死骸の脂肪部分が剥離し漂着したものであるとも。

 

 様々な説があるものの、いずれのケースもきちんとしたDNA検査が行われたことがないため、その正体を確定するには至っていないのが現状だ。

 各地の海岸で打ち上げられているグロブスターは、形はまちまちだが、小さいもので5メートルほど、大きなものでは30メートル近いものもある。

 

 重さ10トンを軽く超えるものも発見されているが、その多くは全身が毛のようなもので覆われ、皮膚は繊維質。

 

 全体がブヨブヨのコラーゲンをまとっているものあり、とにかく悪臭がヒドイため詳しい調査ができず、翌日には波に流されて跡形もなく消えている場合が多い。

 

 そのため、正体は不明のままだという。

 世界的に有名なグロブスターは、2006年8月にロシア・サハリンの海岸に打ち上げられた、体長7メートルに及ぶ首長竜のような巨大な死骸。

 

 あるいは2013年5月、ニュージーランドのプレンティー湾で発見された、海竜を彷彿させる生物の死骸だ。

 

 これは体長が9メートだったという。さらに2017年5月には、インドネシアにあるセラム島の海岸で、体長15メートルの巨大生物の死骸が打ち上げられ、血液と思われる赤い液体が大量に流出していたとして、地元紙「ジャカルタグローブ」に大々的に取り上げられた。

 実は日本でも奄美大島で幾度か漂着事例が確認されているのだが、近年では2021年1月、千葉県の銚子海岸で不気味なグロブスター発見され、メディアで報じられた。

 報道によれば、グロブスターが発見されたのは、君ヶ浜東部にある駐車場下の岩場で、異臭に気付いた地元民が近づくと、全体的に白っぽい、大きさ70センチから80センチほどの生物の死骸があり、内臓が見えていた。

 

 ただ、夜遅かったこともあり、翌朝に同じ場所に行ってみたところ、すでに波にさらわれたのか、謎のグロブスターは姿を消していたというのである。

 これは多くの生物の遺体の集合体で、海中の有機成分が凝縮した「マリンスノー」という物体ではないか、とする研究者もいるのだが…。

 

 なんとも不思議、としか言いようがない。