以前、石川県七尾市にある市民センターの駐車場で突然、空から多数のオタマジャクシが降ってきて、町中が大騒ぎになったことがある。2009年6月4日のことだ。

 ところが翌日、このニュースが地元新聞で報じられると、広島や静岡、鹿児島、宮崎でも同様の現象が起こっていたことが次々と報告され、全国的なニュースになったものだ。

「その場にあるはずのないもの」が空から降ってくる現象は、「ファフロツキーズ現象」と呼ばれる。

 

 そして現在もなお、世界各地で同様の事例が数多く報告されている。気象研究者が語る。

「落下物に明確な共通性はないものの、その多くが魚やカエルといった水棲生物であるため、竜巻に巻き込まれ上空で放り出された説のほか、群れをなす鳥が上空で咥えた獲物を吐き出したのではないか、という説もあります。ただ、七尾市のケースは駐車場付近にのみ100匹以上が落ちていたこと、台風や竜巻など発生していなかったことから、どちらの仮説も該当しない。非常に不可思議な出来事です」

 火のないところに煙は立たず、とは言うものの、原因が見当たらないにもかかわらず、生き物が降ってくる。

 

 歴史を紐解けば、アメリカのケンタッキー州では水棲生物どころか、なんと肉の断片が空から降り注ぐ事件が起きたことがある。1876年3月3日の「ケンタッキー肉の雨事件」だ。

 

 前出の気象研究者が解説する。

「この現象が起きたのはまだ肌寒い、よく晴れた日でした。突如として空から落ちてきた肉塊の多くが、5センチ角前後の大きさですが、中には10センチのものもあった。断片はさっそく地元の大学で分析され、羊や熊、鹿などの肉である可能性が高いと判明しました。大学の研究者によれば、肉には肺組織だけでなく、軟骨や筋肉繊維が含まれていたことから、おそらくは付近を飛んでいたハゲワシなどの猛禽類が、飲み込んだ肉を吐き出した可能性があると推察されました。ただ、そうなると、集団で肉を吐き出したことになりますからね。結局、断定するまでには至らなかったわけです」

 確かに「ハゲタカなどの嘔吐物」だったとすれば、広範囲で大量に、という現象をどう解釈していいかわからない。

 

 地元では飛来した肉を焼いて食したという住民が少なくなかった、という後日談がある。