「クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望」
94分 日 1995年
監督 本郷みつる
製作 茂木仁史 太田賢司 堀内孝
原作 臼井儀人
脚本 原恵一 本郷みつる
音楽 荒川敏行
撮影 高橋秀子
出演 矢島晶子 ならはしみき 藤原啓治 佐久間レイ
浦和めぐみ 富山敬 玄田哲章 ほか
【完全ネタバレ】
しんちゃんが大人になっちゃう。☆☆☆★★
〔ストーリー〕
劇場版アニメシリーズ第3作。
野原一家を待つのは戦国時代へタイムスリップしてしまう事件。時間犯罪者が日本の戦国時代の歴史を変えようとしていることを知ったタイムパトロール隊員のリング。
だが何者かの攻撃を受けた彼女は何と1995年の日本、それも野原家に不時着してしまう。
リングの話を聞いた野原一家は、彼女に協力して戦国時代へ発進。そこでは謎の支配者・雲黒斎が待ち受けているのだった・・・。
ストーリー展開がやや強引と思うけど、振り返って物語を追うとあれこれ詰まっているし、無理を通せば道理は引っ込む「理屈より気持ち良ければそれでいいのだ」というテイストが楽しい。
それまでの展開を放り投げるような終盤2,30分の展開が面白い。
悪ノリのような何でもありのメチャクチャ感は、タイトルが象徴的(笑)
しんちゃんが顔をケツのようにする「ケツ顔マン」をやり出したり、やっぱり(ビー玉といった)タマタマが登場。
そう言えば、今作はオカマらしいオカマが登場しなかった。
物語はSFなんだけど、クライマックスまで真面目に時代劇をやっている。
タイムパトロール隊員のリング・スノーストームは時空間をパトロール中、戦国時代に異変が起こったことを知る。
緊急事態ゆえ、しんのすけをはじめ野原一家に助けを求めることに。
しんちゃん達は16世紀の戦国時代へタイムトラベルし、雲黒斎(うんこくさい)によって攻め滅ぼされた春日部城で城主となるはずだった吹雪丸と出会う。
しんちゃん一家と吹雪丸は協力し、雲黒斎の刺客を蹴散らしつつ雲黒城天守へ。
すると、雲黒斎の正体は歴史を書き変えるべく未来からやって来たヒエール・ジョコマンという犯罪者なのであった。
戦国時代の中盤がどうもダレる。
キャラクターや状況説明があり、雲黒斎の刺客との対決もあるんだけど、一つ一つが間延びしてるのかな・・・。
どうも不思議と入っていけなかった。
何が悪いのだろう。
しんちゃんらしい細かいギャグもあるんだけどなぁ。
わからない。
文字通り鳥瞰のショットや、木々がそよぐ中、朝日を浴びた吹雪丸がヒュッと抜刀した白刃に青空と白雲が映るショットなど抒情的なショットが「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦(2002)」の、あの運命への憂えや移り行く無常への切なさといった情感を与えてくれる。
蝶が吹雪丸の周りで度々登場するけど、あれは押井監督が「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984)」で引用したという「胡蝶の夢」なのかな。
しんちゃんらを乗せた吹雪丸の愛馬“えんじ”を駆って、雲黒城の天守へと駆け上るシーンはスピード感があってかっこいい。
最終対決への緊張感や気分も駆け上がっていく。
そして、雲黒斎ことヒエール・ジョコマンを倒しちゃんちゃんと思いきや、物語は急展開。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989)」を連想させる、現在が別の世界へと変貌してしまったパラレルワールドへ。
それは、ヒエール・ジョコマンが実は生きていたからなんだけど、クライマックスにはヒエールは自身の城がロボットになり、しんちゃんらはカンタム・ロボを操作する巨大ロボット対決になる(笑)
もうめっちゃくちゃ。
劇中、自分で言っちゃうんだけど、ご都合主義のいかにものロボット対決でしんちゃんらはヒエールを退ける。
前作「クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝(1994)」でもそうだったけど、巨大クリーチャーや巨大ロボットの動作が少しゆっくりになるやや大袈裟な演出にこだわりを感じる。
やり過ぎじゃないの?というくらいタメを作る(笑)
設定デザインは、湯浅政明。
球を基調とした鉄アレイのようなタイムマシンや雲黒城天守でヒエールが乗るロボット。
とりわけ、クライマックスのヒエールが支配者となった現在の世界における、子供が描いたような自由奔放な全体のデザインが強烈な印象を残す。
ヒエールが大統領となったもう一つの現在の世界では、まつざか先生がモテモテになっていて笑った(笑)