ヒューゴの不思議な発明。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書



「ヒューゴの不思議な発明 Hugo」

126分 米  2011年

監督 マーティン・スコセッシ

製作 グレアム・キング ティム・ヘディントン
    マーティン・スコセッシ ジョニー・デップ
原作 ブライアン・ セルズニック
脚本 ジョン・ローガン
音楽 ハワード・ショア
撮影 ロバート・リチャードソン
出演 ベン・キングズレー エイサ・バターフィールド クロエ・グレース・モレッツ
    サシャ・バロン・コーエン クリストファー・リー ジュード・ロウ ほか


【完全ネタバレ】



ハートという鍵がなければ、動かない。☆☆☆★★



〔ストーリー〕

 1930年代のパリ。駅の時計台にひそかに住む孤児の少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の友達は、亡き父が残した機械人形だった。壊れたままの人形の秘密を探る過程で、彼は不思議な少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)とジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。

 
 やがてヒューゴは、機械人形にはそれぞれの人生ばかりか、世界の運命すらも変化させてしまう秘密があることに気付き・・・。




ブライアン・セルズニックの小説「ユゴーの不思議な発明」を原作とするマーティン・スコセッシ監督初の3D本格ファンタジー映画。

第84回アカデミー賞撮影賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響編集賞の5部門を受賞。



冒頭、タイトルまでの10~15分がなんとも見もの。

なんというかディズニー作品を連想させる展開。
「美女と野獣(1991)」で、主人公ベルが街を行くシークエンスを思い出した。


大時計を動かすひしめく歯車から凱旋門を中心としたパリの街へのモンタージュ。

エッフェル塔が向こうに見えるパリ上空の画からカメラはモンパルナス鉄道駅へとスーと降りていき、ホームの列車の横を地面と平行に滑り駅舎内へ。

駅構内のごった返す乗客をすり抜けながら、階上の大時計とその裏に隠れる主人公ヒューゴへのアップショット、ここまでの1カット。

そのヒューゴの目に映る階上の冷酷な鉄道公安官は寒色の青い光に包まれ、階下の乗客たちはオレンジの暖色に包まれている、その対比。

夜の街並みやヒューゴが一人暮らす駅裏を照らす青の寒色と駅構内やカフェの暖かいオレンジの光がきれい。

色の使い方がすごくて、カフェでくつろぐ夫人と彼女に心惹かれるムッシュ・フリックの二人は色鮮やかで周りの客たちの色は落とされセピアの写真のようになっている。


ヒューゴは駅にある大時計のねじを巻いて回っているんだけど、別の時計へと移動する際の長い1カットがある。

これは「レミーのおいしいレストラン(2007)」の実写では不可能だろうものすごいカットがあったけど、あれに負けない滑らかで自然な作りはすごかった。



そして、また時計裏から覗き見ると玩具屋のジョルジュ・メリエスがいる。
カメラは滑り下りながら店先の正面へ。

そして、ジョルジュのアップショット、瞳のクローズアップと紡いでいく。

この映画のテーマでもあるんだろう、映画という魔法の楽しさ面白さ美しさをあの手この手でお魅せしようという監督のハイテンションが結晶化してるような冒頭の10分。


パリの美しい街並みや駅舎、駅内や機関車に立ち上がる蒸気、乗客の群衆、大時計の歯車などなど・・・、視覚的に作りこまれていて、とても楽しい。

けれど、どうもテンポが間延びしているし物語がブレている気もする。


ヒューゴは父が遺した機械人形を修理しているが、この機械人形によって玩具屋の、かつては映画製作者であったジョルジュへとつながっていく。


世界初の映画監督であり、数々の撮影技術を生み出したジョルジュ・メリエス。

彼は映画製作をやめすっかり忘れ去られ、映画や自分の過去を消し去っていた。

ジョルジュの凝り固まった心を溶解するのはヒューゴなんだけど、ヒューゴは特別映画に思い入れはない。


ここは単純にヒューゴが映画好きで・・・という方がすっきり進むと思うんだけど。


ジョルジュを研究しているルネ・タバール教授がヒューゴとジョルジュをつなぐ役割をするんだけど、丸い眼鏡にひげもじゃ姿が「レナードの朝(1990)」のロビン・ウィリアムズを連想させた。


演じたマイケル・スタールバーグはもしかしたら、キャラクター作りの参考にしたんじゃないかなぁ。

ロビン・ウイリアムズの映画がまた観たくなった(笑)



クリストファー・リー演じる本屋さんのムッシュ・ラビスも必要なのかどうなか・・・(笑)



実存主義というのか、ヒューゴがいう

「機械に不要な部品はない。使われてる部品すべてが必要なものなんだ。
だから、もし世界がひとつの大きな機械なら・・・僕は必要とされる人間のはずだ。」

フィルムの一枚一枚、歯車や連なる列車や枕木。

そして壊れた機械人形はジョルジュであると共に、ヒューゴでもあるはず。

こういったイメージは、孤児であるヒューゴの「ひとりぼっちじゃない。僕だって必要とされているはずだ。」という願いのような想いを表すのかなと思った。


126分でやや冗長に感じるけど、少し古い洋服やテーブル、椅子のデザイン一つとっても面白いので観ていて苦にはならない。

スコセッシ監督も少し出演している(笑)


ジョルジュという監督の映画は観たことないので、「月世界旅行(1902)」くらい観てみないと。







ジョルジュ・メリエス (Georges Méliès)


出生名マリー・ジョルジュ・ジャン・メリエス(Marie Georges Jean Méliès, 1861年12月8日 - 1938年1月21日)は、フランスの映画製作者で、映画の創成期において様々な技術を開発した人物である。パリ出身。

“世界初の職業映画監督”と言われている。SFXの創始者で、多重露光や低速度撮影、ディゾルブ、ストップモーションの原始的なものも開発した。

また手で色づけしたカラー映画も作っている。撮影を通して現実を操作し変換する能力から、最初の "Cinemagician" とも称される。


Wikipedia より)