「荒野の七人 The Magnificent Seven」
128分 米 1960年
監督 ジョン・スタージェス
製作 ジョン・スタージェス
原作 黒澤明 橋本忍 小国英雄
脚本 ウイリアム・ロバーツ
音楽 エルマー・バーンスタイン
撮影 チャールズ・ラング
出演 ユル・ブリンナー スティーブ・マックイーン ホルスト・ブッフホルツ
チャールズ・ブロンソン ジェームズ・コバーン イーライ・ウォラック ほか
【完全ネタバレ】
正義とは、死ぬことと見つけたり。☆☆☆★★
〔ストーリー〕
無法者の被害に嘆くメキシコの寂れた田舎町では用心棒を雇うことになり、クリス(ユル・ブリンナー)をリーダーとしてヴィン(スティーブ・マックィーン)やブリット(ジェームズ・コバーン)ら7人のガンマンが集結した。農民に自衛の策を教えるなどし、襲撃に備えるが・・・。
黒澤明監督作品「七人の侍(1954年)」の舞台を西部開拓時代とし、リメイクした作品。
「七人の侍」をしっかりと踏襲しつつ、西部劇らしいシーンも多くて面白かった。
誰もが聴いたことがあるあのテーマ曲が冒頭から流れ、テンションが上がる(笑)
双方でもっとも違うところはクライマックスの銃撃戦前。
「七人の侍」では、侍と農民たちは一緒に野伏せりと戦うけれど、メキシコの村人たちの用心棒となった荒野の七人は村人らが臆病風を吹かせ盗賊団に寝返ってしまい、お役御免となってしまう。
村を出た七人はこのままではいけないと引き返し、正義のために戦う。
メキシコ人(弱い者)のために、正義のために戦い散っていく、この辺がアメリカらしい。
「七人の侍」に登場した寡黙な剣豪の久蔵にあたるキャラクター、ナイフ使いのブリット役をジェームズ・コバーンが演じているけれど、不毛な決闘をするシーンもちゃんとある。
こっちではナイフ対拳銃なので、西部劇らしくてなお面白い。
メイキングで、ジェームズ・コバーンが好きだった久蔵にあたる役を演じることになって、最高の気分だったと笑顔で無邪気に語るところが印象的だった。
物語が始まってすぐのシークエンス。
メキシコに近いテキサスの辺境の町で、先住民(インディアン)の死体を町の墓地に葬るのはタブーだと荒くれ者たちが立ちはだかる。
そこへユル・ブリンナー演じるクリスとスティーブ・マックィーンのヴィンが馬車に死体を載せて墓地まで運んでやると買って出る。
墓地へと進む馬車は二階の窓から突然銃撃されたりするが、その緊張感をじっくり時間をとってたっぷり味わわせてくれるんだけど、この辺がいかにも西部劇らしいシーンで楽しくなった。
チコ(「七人の侍」では勝四郎にあたるキャラクター)は村の娘と恋に落ちるが盗賊を蹴散らした後、村に残る選択をする。
この辺は、よりロマンチックで若者の未来を感じさせる。
ただ、最後に笑ったのは農民であり侍はむなしいものだ、というあの悲哀をあまり感じることが出来ないのが残念。
正直、目を見張る広大な自然や、ハッと息を呑むような銃撃シーンといった西部劇の魅力をあまり感じることが出来なかったな。
馬で行く七人の向こうにそびえる山々、入り乱れるアクションシーンも勿論あるんだけど、どうも面白味に欠けた。
「七人の侍」では村の全体地図を使って俯瞰で理解できる地理と作戦を説明してくれるけど、こちらでは村やその周辺の説明やどんな作戦で敵を迎え撃つかといった展開がなく、どこでどう戦っているのかわかりにくかった。
ナイフ使いのブリットがクライマックスでナイフを使って活躍するシーンがないのも残念。
ただ、騎馬で駆ける画はやっぱりカッコイイ。
日本は負けちゃうな、やっぱり。
ハットからブーツまで全身黒でキメたユル・ブリンナーのクリスがやはり強く印象に残る。
実は、特典のメイキングが一番面白かったかも(笑)
権利に関する訴訟や現場におけるユル・ブリンナーとスティーブ・マックィーンの確執、村人のメキシコ人たちがみすぼらしく見えないように衣装の汚れをなくせといった横やりを入れてくるメキシコ政府との争い、などなど赤裸々に制作の苦労が語られる。