ローラ殺人事件。 | 江戸の杓子丸

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「ローラ殺人事件 Laura」

88分 米  1944年 

監督 オットー・プレミンジャー

製作 オットー・プレミンジャー
脚本 ジェイ・ドラトラー サミュエル・ホッフェンシュタイン
    エリザベス・ラインハルト
音楽 デイヴィッド・ラクシン
撮影 ジョゼフ・ラシェル
出演 ジーン・ティアニー ダナ・アンドリュース
    クリフトン・ウェッブ ヴィンセント・プライス ほか


【完全ネタバレ】




ローラが帰ってきたのは、レッド・ルームからか実家からか?。★★★☆☆



〔ストーリー〕
 有名な女性デザイナー、ローラ・ハントが、何者かに顔面を撃たれて殺されるという事件が起こった。事件を担当した刑事は、三人の容疑者に的を絞って捜査を開始するが・・・。
 殺人事件を追う刑事の活躍を描いたミステリー。




「ローラ」、「殺人事件」と聞くと、「ツイン・ピークス(1990~1991)」を思い出してしまう。

聞いた事ないけど、「ツイン・ピークス」やデイヴィッド・リンチ監督に影響を与えた映画かな、とイチオー観てみた。

おそらく一切関係ないようだけど、「ダイアン」という名も登場する。

この映画では被害者の名で、「ツイン・ピークス」ではクーパー特別捜査官がテープレコーダーに録音する時、呼びかける秘書の名前。


この頃の映画を観ていて楽しいのは、やっぱり美術や衣装。

へそ上あたりでベルトをしめるようなウエストの高いパンツのスーツやハット、
そのシルエットがカッコいい。

車のデザインや、たばこにマッチで火をつけるところ、黒電話の一コ前くらいの古い電話・・・。

格好いいなぁと憧れてしまう。



第17回アカデミー賞撮影賞受賞。
監督賞、助演男優賞(クリフトン・ウェッブ)、脚本賞、美術監督賞ノミネート。

この第17回のアカデミー賞では、「ガス燈(1944)」も作品賞などにノミネートされている。
「ガス燈」は面白かったもんな。

ウィキによると、

「1940年代のフィルム・ノワールの中でも、特に後年までカルト的評価の高い作品で、1999年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。」

とある。

なるほど、今の映画を創った映画なんだろうな。

でも、正直何とも・・・(笑)
今見てみると、残念ながらあまり驚きはなかった。

ミステリーなので最後まで緊張感を持って観る事が出来たけど、どうもストーリーも淡々として画も撮影賞を獲るような、それほど面白いカットはなかったように思う。


気鋭の美人女性デザイナー、ローラを殺害した真犯人は観始めて大体わかるけど、もっとフリが欲しいなと思った。

この映画の最も面白いところは、殺害されたはずのローラが実は生きていて突然登場するという展開にある。

名のある批評家でローラを育てたといっていい初老の紳士ライデッカーは、ローラを愛していて彼女に言い寄ってくる若い男たちを貶め誰も近づけないようにしていた。

しかし、ある男との結婚を決めたローラを、ライデッカーは殺してしまう。

↑ローラ役 ジーン・ティアニー


顔を散弾銃で撃たれたというトコが、「実はローラは生きていた」の展開につながるワケだけど、トリックとしてだけでなく、顔を狙うという情念のこもった犯行をもうちょっと強調してもよかったのに。

女性が女性を殺す時、顔を損壊させるケースがよくあると聞くけど、ライデッカーは「美人」のローラに、その顔に執着していたというようなフリがもっとあれば説得力あると思うんだけど。


ライデッカーとローラの出会い、そしてどのようにライデッカーは彼女を育て有名にし、一流の女にしたか、が回想で語られる。

このローラの変わるさまも、僕にはよくわからなかった。

ドレスなどを見ればわかる人はわかるのかも知れないけど、最初っから最後までローラは素敵なんだよね(笑)

遺体の画は登場しないので、こんな素敵な人がこんな目に遭わされて・・・みたいな怒りの感情も起こらないし。


ローラの部屋には彼女の肖像画が飾ってあり、刑事マクファーソンは次第に亡き彼女に惹かれていく。

この辺は、ノワールの退廃的なロマンチック感がいいんだけど、どうも説得力にかけるというかあんまり感じ取れない。

アップはあってもドアップがある時代じゃないし、全体的にどうもメリハリを感じにくい。



ローラ自身に魅力を感じる事が出来なかったのも大きい。
もっと何かあればいいんだけど。

ローラはぶっちゃけライデッカーが邪魔だったんだけど、恩師だから付き合っていた。

その辺のまっすぐなところや、純粋さやデザイナーとしての情熱をもっと感じ取れれば良かったな。

最後、警察に撃たれ崩れ落ちるライデッカーに駆け寄るローラのカットがある。

自分を殺そうとした人間であると同時に、やはり恩人である。

この辺にローラの人間性が出ているし、ライデッカーを抱きかかえるようなカットはなく駆け寄るカットだけでさらりと終幕にするところが余韻を残してて格好いい。


ローラの婚約者カーペンターを演じるのは、ヴィンセント・プライス。
あのマイケル・ジャクソンのショート・フィルム「スリラー」でナレーションをやってた人。

この映画ではホラースターの影もない、さわやかな二枚目だ。