アウトレイジ ビヨンド。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


「アウトレイジ ビヨンド OUTRAGE BEYOND」

2012年 日  112分

監督 北野武

製作 森昌行 吉田喜多男
脚本 北野武
音楽 鈴木慶一
撮影 柳島克己
出演 ビートたけし 小日向文世 西田敏行 三浦友和
    加瀬亮 中野英雄 松重豊 ほか


【完全ネタバレ】




キタノ・ブルー封印。★★★☆☆




〔ストーリー〕
 5年前、ヤクザ界での生き残りを懸け壮絶な権力闘争に明け暮れた暴力団「山王会」は関東の頂点を極め、政界にまで勢力を広げていた。彼らの壊滅を目指す刑事の片岡(小日向文世)は、関西最大の「花菱会」と対立させるべく策略を練る。

 そんな中、遺恨のある木村(中野英雄)に刺されて獄中で死んだはずの大友(ビートたけし)が生きていたという事実が持ち上がる。その後、出所した大友だったが・・・。




兄貴がビートたけしを好きで本を読んだり、以前お昼にやっていた「スーパージョッキー」とかをビデオに録って見てた。

僕は別に好きじゃなかったし「その男、凶暴につき(1989)」も芸能人が作った映画なんか・・・と思っていたんだけどたまたま観て、もう一夜でビートたけし(北野武)が大好きになった。



物語の主人公は、大友(ビートたけし)というより大友の学生時代の後輩であり、いわゆるマル暴の刑事・片岡といっていい。

片岡は自分の出世のために、大きくなり過ぎ政財界にまで手を伸ばす山王会をつぶすべく引退を考えていた大友を引っ張り出し利用する。


この「アウトレイジ」シリーズではストーリーテリングに集中し挑戦していて面白い。

中尾彬や加瀬亮が土下座してわびを入れるところも、正面からアップやバストカットでずっと捉えたりと北野武監督の役者さんへの心配り、やさしさが感じられる。



画そのものはやや単調で単純だとは思うし、編集も「インファナル・アフェア(2002~2003)」シリーズの緊迫感や「グッドフェローズ(1990)」の緊張と緩和に比べるとやや魅力に欠けると感じる。

なんか真面目(笑)
ビートたけしが真面目というのも変だけど、北野武監督は真面目なんだね、やっぱり。

自身、もしかしたら反面教師にしてきた、たとえば「仁義なき戦い(1973)」のような真面目な
ヤクザ映画をやってみた、という構図になるのかな。

突発的で瞬発力のある暴力や映画そのもののトーンに力がないのがちょっと残念だなぁ。

ちょっとしたギャグや暴力と笑いの表裏一体性、場面(時間)の飛ばし方など、らしいところは
あるんだけど。

終幕の潔さは、さすが(笑)


北野武監督作品らしさ、みたいなものは実際「ソナチネ(1993)」以降なくなってしまった。
「HANA-BI(1998)」ですら、あんまり好きじゃない。

「その男、凶暴につき」の恐ろしいまでの鋭利な暴力性。

「ソナチネ」は「どうせ結局死んじまうんだよ。ほら、死んだ。あ~ぁ、もう俺も死んじまおうかなぁ。」みたいな虚無感というか生の不条理への怒りやあきらめみたいなものが映画そのものから溢れまくっていた。

「HANA-BI」では尋常じゃない編集のセンスとお遊びがカッコよかった。

キタノ・ブルーといわれる青を基調とした寒々しい世界の中にある、一見凡庸ながら死を超える力強い愛情というものを大きく照らして見せてくれた。

また、花々のカットの挿入やモンタージュ効果が映画そのものに落ち着きを与えてくれたのだと思う。

寄せては返す海の波、その反復は紡がれていく命や、もしくは終わらない暴力や不条理さを連想させた。


それでもこの「アウトレイジ」シリーズはやはり面白いので、是非続けてもらいたいな。

今作の見所は、関西の巨大暴力団花菱会会長・布施の策略で、山王会会長・加藤が若頭の石原に対し疑心暗鬼になる。
花菱会会長・布施に会って帰ってきた加藤が、下の者を殴っている石原に対し見せる眼差しがすごい(笑)

この加藤役は三浦友和さんなんだけど、物凄い顔。
あのさわやかな三浦友和が・・・(笑)
必見。


片岡の後輩である刑事・繁田役は、「孤独のグルメ(2012~)」の松重豊。
ヤクザ顔の松重さんがいいデカ役という所がいい。

それをいったら、小日向文世さんが最悪のデカ役という所が最も面白いのだけど。