ヒューマン・トラフィック | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書

テーマ:

ヒューマン・トラフィック Human Trafficking



179分 米  2005年



監督 クリスチャン・デュゲイ


製作 クリスチャン・デュゲイ アイリーン・リチンスキー
    マイケル・プラパス
脚本 キャロル・ドイル アガサ・ドミニク
音楽 ノーマンド・コーベイル
撮影 クリスチャン・デュゲイ
出演 ミラ・ソルヴィノ ドナルド・サザーランド
    ロバート・カーライル ローレンス・レボーフ ほか


江戸の杓子丸


【完全ネタバレ】




あくまで敵はロシア(笑)。★★★★★





〔ストーリー〕
 I.C.E.(移民関税局)捜査官のケイト(ミラ)は、国際人身売買組織を追っていた。セルゲイ・カルポヴィッチ(ロバート)という男が、世界各地で拉致した女性を密入国させ、全米に点在するアジトで売春を強要しているのだ。

 彼女は組織壊滅に執念を燃やすが、狡猾なカルポヴィッチの前に、捜査は困難を極める・・・。



監督のクリスチャン・デュゲイ。

どっかで聞いたと思ったらこないだ観た「ヒットラー(2003)」の監督さんじゃないか。


なかなか手堅い人だ。
映画の方ではあまりさえないけど、TVドラマではいい仕事をする。

画面作りがどうもせまっこくて、もともとはTV畑の人かも知れない。




ミラ・ソルヴィノは「誘惑のアフロディーテ(1995)」で米アカデミー賞助演女優賞を受賞していて、大好きな女優さんの一人なんだけど、どうも作品に恵まれていない気がする。


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ミラはI.C.E.捜査官のケイト役なんだけど、全然捜査官に見えない。
ファンなんだけど他の女優さんの方が良かったかもなぁ、と思ってしまった。


第三幕、ケイトはおとり捜査で少しはすっぱなロシア女性になりすますんだけど、すると俄然らしくなるんだよなぁ(笑)

なかなかむつかしいもんだ。


監督の好みなのか、「羊たちの沈黙(1991)」のように決してたくましいわけではない新人女性捜査官ががんばっているのだ感を出したいのか、劇中ケイトが何故かダボダボのジャンパーを着たりしていて、しまりがない。


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冒頭から物語はわかりやすいし、役者さんのタイトで緊張感のある演技がホントにいい。


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これは監督の力量のはずで、撮影も兼ねているだけあって画作りも随所でがんばっている。


けれど、空回りしてるような、そんな風にがんばるかというような撮り方のシーンもある(笑)



ロシア人のセルゲイ(ロバート)はモデル・エージェンシーを隠れ蓑に、巨大な国際人身売買組織を作り上げ、あまたの売春宿を経営している。


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発展途上国の各地では、警察が買収されていて手入れ捜査もままならない。


少女達は逃げようとしても家族を殺すと脅されたり、どこに連れてこられたのかもわからず何も出来ない。



チェコ人のシングルマザー、エレナ。


ファッション・モデルになれると騙され拉致される16歳のウクライナ人少女、ナディア。


フィリピンで連れ去られる14歳のアメリカ人少女、アニー。


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また、彼らの身元を追う家族達。


ナディアの父親は以前のつながりからセルゲイの組織に入り込む。


アニーの母親はフィリピンに残るが金銭的な事もあり、帰国と離婚の危機に悩む。



今時、芸能人になれると騙し売ったり、売られたりする奴がいるかよ、と思うし、セルゲイの手下達もモロやくざルックでモデル・エージェンシーには全然見えない(笑)


このドラマではわかりやすく作っているんだろうなぁ。
実際は驚くほど巧妙なんだろう。



ナディアはエレナに励まされ命をつないだり、貧農の家から売られてきた12歳の少女を世話してあげるのは境遇になれたアニーだったり、舞台の切り替えや人物の絡ませ方がすごくうまい。


エレナは保護され重要参考人となるが、ケイトが少し目を離した隙に狙撃され死んでしまう。



自分を励ましてくれたエレナが殺されたと知り、ナディアが一人トイレで痛哭するシーンは必見。


彼女は父親に助けられるんだけど、これが観ていてホントに救いになる。


このナディア役のローレンス・レボーフがメチャクチャいい。
現在25歳のカナダ人女優。TVドラマで活躍しているようだ。


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尋問の際も「捕まえてみろ」といった風な挑戦的態度のセルゲイ。


ロバートが格好いいせいもあってか、不思議と彼に怒りの念は湧かない。



どっちかというと、少女達を米国へ密入国させるため道案内をする途中、少女をもてあそぶメキシコの汚職警官や、フィリピンまで行って少年を買うアメリカ人医師などお客や甘い汁を吸おうとする連中に憤りを覚えた。


けれど、自分自身風俗に行った事あるワケで、全く偉そうに何を言うんだ・・・。




狙撃シーンや嫌がる子供達に睡眠薬を注射するシーンなどそういうシーンがクオリティもテンションも高くていい(笑)


ラストはI.C.E.の宣伝みたいになるけれど、ミラがいい表情でしめてくれる。



チーフ捜査官ビルが言う。
「武器やドラッグは一度販売すれば終わりだが、女性や子供は毎日何度でも売れる。
犯罪組織にとって最も有望なビジネスなのです。」




セルゲイがおとり潜入のケイトを見て言う。
「どうして、こんな年増がいるんだ?」


つい笑ってしまった、失礼な・・・(笑)


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