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幻の生のポルチーニ茸

ポルチーニ(ヤマドリタケ, Boletus edulis)は、「イタリアでは松茸の扱い」というキャッチコピーの下に日本でも知名度が上がりつつあるきのこである。最近では、国内のレストランや居酒屋のメニューでも見かける機会も増えてきた。松茸と同様、ポルチーニも菌根菌のため栽培が難しく、流通しているきのこはすべて天然品のため高価である。特有の香気は醤油を思わせるものがあり、旨みも強い。パスタやリゾット、オムレツ、バターソテーにすると相性が良いが、炊き込みご飯にも良いらしい。

乾燥ポルチーニの小売価格は100g2,000円から5,000円であり、通常は20gから市販されているので、利用している人も比較的多いだろう。冷凍品の小売販売価格は100g800円から1,000円であるが、通常は1kgからの業務用のため、一般家庭ではあまり馴染みがない。生のポルチーニともなると、国内で市販品を見つけるのは非常に困難となる。国内にも発生するらしいが、市場に流通しているようすはない。近縁種のヤマドリタケモドキやムラサキヤマドリタケは低地の広葉樹林にも比較的多く発生するが、前者は虫食いが酷く、後者は香気がないため利用価値が低い。一部の海外居住者や美食家、およびマニアを除き、生のポルチーニを料理して食べたことのある日本人は極めて少ないはずである。

 いつか本物の生のポルチーニを食べてみたいと思っていたところ、2006年の11月初旬に広尾の某高級スーパーで発見することができた。価格は100g1,000円と比較的高価なもので、イタリアから空輸されたものだった。古いせいか、色は白く抜けているようで、傘の裏のところが妙にねっちゃりと潰れていた。このきのこの属するイグチ科のきのこは足が速いことが知られているので、やや危なそうにも思われた。しかし、腐ってもポルチーニである。特に危険そうな場所を取り除いて、毒見をしてみることにした。


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 何しろイタリア産のため、産地に合わせてイタリア風の料理にしてみた。オリーブオイルでニンニクを炒めて、ポルチーニをソテーしてからバター、塩で味をつける。


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味は、「何じゃこりゃー!!」と、うまい叫びであった。食感は傘がマシュマロ、柄のほうは例えようがないが最高であった。どちらにも、上品で温和なうまみが閉じ込められており、きのこの良いところ取りであった。次は、ポルチーニの天麩羅を試したいと思いつつも、実現しないまま4年以上の歳月が流れてしまった。あれ以来、生のポルチーニを見かけることはない。