上野は東京文化会館にパリ・オペラ座バレエの来日公演《椿姫》を見に行った。
この作品は、東京でもバレエ・フェスのガラ公演では、お馴染みの作品。オイラの持っている映像コレクションにも、もちろん全幕があるけれど、生で全幕を通しで見るのは、実は初めて。
この作品は、現代バレエ振付家で、最高峰とも言える、ジョン・ノイマイヤーの出世作と言える。
シュツットガルト・バレエで大成功を納めた。
東京バレエ団も、何度も上演許可を要請しているが、なかなか許可が出ないらしい。
初演は1978年。高評価を聞きつけたパリオペラ座から上演の要請があっても、なかなか許可せずに、パリ・オペラ座バレエへ上演許可が、やっとおりたのが2006年の事だから、けっこうな年月である。
ノイマイヤー先生にとって、思い入れが強い作品なのだろう。
日本には、椿姫のような女性がいないから、東京バレエ団には、許可が出せないと佐々木忠次先生におっしゃった事があるらしいが、それは日本を、あまり知らないだけ。
斎藤 友佳理と木村和夫のペアなら、良い公演になりそうだけどな~。
上野水香と柄本弾のペアも、10才以上も年下の男性って所が、物語に忠実に退廃的な雰囲気が出て、本人達の成長にもなるし、すごく面白くなりそうなのに。
バレエは、フィギュアや体操の世界と違って、ただ難易度の高い技術を披露すれば、それで良し、・・・と言う世界では無い。そう改めて、思い知らせてくれる作品。
見に行った3月22日の公演は、マチュー・ガニオとイザベル・シアラヴォラのペア。
シアラヴォラは、今のオペラ座バレエの女性エトワールでは、一番好きなダンサー。
あの表現力の豊かさは、素晴らしい。ただただお見事。
30歳を過ぎてからのエトワール昇進は、遅咲きのエトワールと言われているけれど、シアラヴォラの魅力は、30歳を過ぎて、やっと醸し出せる、大人の女性の気品。30歳代は、本来、女性として一番美しい盛りなのだろう。
ガニオは、エトワールに若いうちから就任して、良いダンサーだけど、手堅い所で、昇進以来、あまり技術も表現力も、成長が無い、とすら思っていたが、今回の公演では、まったく違った一面を見せてくれて、ちゃくちゃくと成長していたんだ、と思った。
技術的な所も、細かなところまで、気を抜いてなかったし、表現力も身につけて、シアラヴォラとのペアが、すごく良いと思った。
オペラが有名な本作だが、アレクサンドル・デュマ・フィスの原作に、オペラよりも遥かに忠実に出来ていて、オペラとは、まったく関連性の無い、別のストーリーになっている。よく作品を研究して創作した事が、よく分かる。
音楽にショパンを起用する所も、さすがセンスが良い。批評家の中には、ショパンの音楽を起用した事を批判する人も中にはいるが、それは、あまりバレエを知らないからだと思う。
たしかにショパンの音楽は、もとはバレエ用の音楽では無い。しかし、ショパンの時代は、まだバレエ音楽が、音楽として大切に扱われていなかったのだから、仕方無い事である。(この頃は芸術家と言うより職業的な座付きバレエ作曲家がいて、いくらバレエ作品がヒットしても、音楽として有名にはならなかった。宝塚のベルバラがヒットしても、座付きの作曲家の名前を、普通は知らないのと似ている。)
ショパンの音楽は、実にバレエとの相性が良い。
バレエ・ピアニストが、レッスンにショパンを演奏する事からも、相性の良さが、よく分かる。ワルツからロンド、アダージオまで、ショパンのピアノには、舞踏音楽が凝縮されている。
全幕を通して生で見た感想としては、やはりピアノの美しさと迫力と豪華さ。
2幕はピアノだけで、オーケストラがいないって言うのも、演出として、新鮮だった。
舞台演出やセットも、すごく考えられていて、面白い。
シンプルなんだけど、簡素では無い。
本当に。この作品を上演できるパリ・オペラ座が、羨ましいと思った。
また見に行きたいな~。
パリ・オペラ座バレエ、日本公演《椿姫》
音楽:フレデリック・ショパン
振付・演出:ジョン・ノイマイヤー
美術・衣装:ユルゲン・ローゼ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:ジェームズ・ダグル
ピアノ:エマニュエル・ストロセール、フレデリック・ヴェス=クニテール
マルグリット:イザベル・シアラヴォラ
アルマン:マチュー・ガニオ
デュヴァル氏:アンドレイ・クレム