



外観はライトアップも綺麗で、丁寧に出来た歴史ある外壁。
中もオペラハウスみたいな造りで、ミュージカルを演じるには贅沢な劇場だと思った。
この劇場で、初演より27年間、上演し続けているミュージカル‘オペラ座の怪人’を見た。
この作品、好きだ。音楽もストーリーも。
オペラ座、とか、怪人、とかって非日常的に感じる。でも、不思議と自分に置き換えて楽しむ事が出来る。
ファントムがクリスティーヌに感じる感情は、片想い。
片想いは誰しも経験した事があると思う。
悲痛な片想いと恋心に感情移入してしまう。
またクリスティーヌがファントムに抱く想い。
それは歌の先生としてファントムを尊敬している事。
また一人の人間としてファントムが好きな事。
でも、あくまで、それは恋心では無い。
オイラも、そんな経験がある。相手の事を人間として好きで友達付き合いは続けたいけど、恋心では無い。しかし、相手は恋心で…。
葛藤であった。
そして音楽の素晴らしさ。
3つほど軸となるメロディがあり、場面により、アレンジや変調しながら繰り返す。
そのメロディも好き。
ファントムの苦しみと悲しみを歌ったアリア、ミュージックオブザナイト、この曲も変調とアレンジで、クリスティーヌの明るい曲調の歌になったり、さらに変調とアレンジを効かせて、なんとクリスティーヌと恋人の甘いラヴソングになったりもする。
ここまで、音って遊べるし、自由なんだ。ミュージカルって、すごい。
オペラ作曲家で、こんな風に音で遊んだ人って、いない。
作曲の仕方がオペラはオーケストレーションありき、だけど、ミュージカルでは、まずメロディが先にあって、そこに伴奏をオーケストレーションとして挿入するから、音の作り込み方が違うし、遊びの幅やアレンジの方法が違うんだ。
そう思った。
よくオペラとミュージカルの違いに、オペラは生音だけど、ミュージカルはマイクやスピーカーを使う。
なんて言う人がいるけど、それは間違いだと思う。
ミュージカルだってオフブロードウェイでマイクやスピーカーを使わない事もある。
バーンスタイン作曲のミュージカルでは、マイクやスピーカーを使わない作品もある。
違いは作曲方法と音の作り込み方。と答えるのが正しいと思う。
オペラをマイクやスピーカーを使って演じたからって、オペラがミュージカルになる訳では無い。
これウィキペディアも分かってない。(怒)
そしてファントムの有名なラントモチーフ、パイプオルガンのゴシックな音色。
このライトモチーフに合わせたファントムとクリスティーヌのデュオ。
完璧。
ファルセットまで美しい美声。
クリスティーヌ役の人の声量と高音に、ただただ感激。
それに演技力。
微妙な心の襞や機微まで絶妙に投影して、クリスティーヌの心情や想いや、いろんな事が歌やセリフから伝わって来るようだった。
ファントム役の人の、響き渡る、の太く力強い歌声。そして時折見せる美しいハイC。
演技力からは、悲哀と苦痛、世間に対する恨み。クリスティーヌに対する届かぬと解りきってるのに、抑えられない張り裂けそうな恋心が、まるで手にとるように伝わってきた。
うーん。お見事。
バレエもレベル高い。ミュージカルで、ここまで高いレベルのバレエを見れるなんて。
プリマバレリーナ役で、クリスティーヌの友達役の人が可愛い。
しかも踊りのレベル高いし、歌も上手いし雰囲気も良い。
男性のバレエダンサーが一人いるけど、この人はプロでロイヤルかナショナルで現役で踊ってる人だ。
ファントムが嫌う下手なプリマドンナのカルロッタ役。
わざと無理なファルセットを出して汚い声を出すけど、こういう声って基本の声がしっかり出せないと出ないし、難しいコロラトゥーラも歌い上げてる。
良い歌手だな~と思った。
うーん。ただただ感動で恐れ入った。
NYではプレイビルと言って、本日の配役表をくれるけど、ロンドンには無かった。
あまりにも感動して休憩時間中、カウンターの女性に、
「プレイビルをありますか?」
と言うと、
「いいえ、ジェントルマン、これならあります。」
とプログラムを出される。
「オイラ、今日の配役が知りたいんだよ。良い役者さん達だから。」
と言うと、プログラムを広げ
「ここに配役表があるけど、今はトリプルキャストで、この3人のうち誰か。そうね…。実は私も今日の配役が、この中の誰なのか知らないのよ。ごめんなさい。サー。」
なるほど。ロンドンではミュージカルの役者って、そんな扱いなんだ。
これじゃプログラムを買う意味が無い。
念のためホームページを見るけど、やっぱり配役は載って無さそう。
すごく良い役者さん達で名前くらい知りたかったのに。
始めて見た作品では無いのに、オペラ座の怪人で、こんなにも感動するとは思わなかった。役者が違うだけで、こうも作品の完成度と、印象が変わるんだな~と、目から鱗だった。