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上野の東京文化会館で英国ロイヤルバレエ団の来日公演《白鳥の湖》を見た。

正直、ひどい舞台演出だと思った。
2幕目と4幕目は聖域として、奇抜な演出は、ほとんど見られないが、1幕目と3幕目の演出が酷い。

1幕目に、ラ・フィーユ・マル・ガルデで使うような、大舞円のリボンが出て来るのまでは、まだ許せた。
1幕目終幕の電飾って何?なんなの?クリスマス??なんのために、使ったの?まったく意味が分からないし、センスが悪い。
3幕目では、わざわざ両脇にバルコニーを作っている。しかも、王子が誓いを立て、ロットバルトがオデットを指差し、オディールとあざ笑うシーンで、戦隊物のような火薬を使って真っ赤なライトを使ったり。
ひどすぎる。三流ミュージカルの演出だ。

演出と言えば、1幕目と2幕目の間に休憩が無い。
たしかに、ダンサーからすれば、一緒に演じても、それほどの差し支えが無いのかもしれない。
ジークフリート王子は1幕目のヴァリアシオンでは、2幕目に力をセーブしなければならないので、バランス崩しまくりの酷い演技だったが、これは休憩を挟まない演出が悪いのだ。

2幕目はグラン・アダージオ。ダンサー側だけで無く、観客側も、非常に体力を使って、見なければならない重要なシーン。
ここを1幕目と続けて、やられてしまうと、観客からすれば、2幕目を流して見てしまって、飽きてしまう。
1幕目と2幕目の間には、物語のあらすじから考えても、絶対に休憩が無ければ、舞台演出上、無理が出る。

まったく、バレエを分かっていない。
芸術監督の早期交代を、強く希望するとともに、イギリス人の極めて低俗な舞台文化を垣間見た気がした。
イギリス人て、こんなもので喜ぶんだな。と思った。
バレエを見に来る観客がミュージカルもどきの演出を見て、喜ぶと思うのだろうか。
心外である。

思えば、前回、来日した時は、ロミオ&ジュリエットとマイヤリングを持って来てくれた記憶がある。
そうそう英国ロイヤルバレエにはケネス・マクミランしか無いのだから、日本にはマクミラン持って来れば良いんだよ。
クラシックバレエの白鳥湖をミュージカル演出にしたものや、不思議の国のアリスなんてミュージカルもどきの下らないバレエを日本に持って来ないで欲しい。
バカにしやがって。

演出で言えば、1幕目のパ・ド・トロワに入るまでが、短かった。ここに関しては、特段、批判する要素は無く、さすがは英国ロイヤル、パ・ド・トロワから非常に安定した美しい演技だった。
女性二人は日本人と中国人、男性はイタリア人。多国籍バレエ団だ。

ジークフリート王子役は、黒人として始めて英国ロイヤルのプリンシパルになったカルロス・アコスタ。かっこいい。パ・ド・ドゥでのサポートも、軽やかで、自然で美しく、また、3幕目では、ピルエットをかかとを着けずに6回転高速で回るなど、超絶的な技術も披露。
ジュテでの、空中で静止したかのような、爽快なジャンプも綺麗。
独特な柔軟性や、表現力も印象的だ。

オデット/オディールを演じるのは、サラ・ラム。
オデットを演じるには、少々、気になるところがあった。例えば、トゥで立ち、サポートをされながら、もう片方の足を震わせるシーンを、もっとしっかりやって欲しいとか。細かな箇所である。
ただし、技術力は高く、片足のトゥで5秒以上ピタッと静止するなど、とても安定して綺麗だった。黒鳥のパ・ド・ドゥでは、文句無しの、技術力と表現力。黒鳥の方が得意なんだろうな。

3幕目のスペインの踊りでの4人も、すごく高い技術で、キレがあって、とてもかっこよかった。
ロットバルトが連れた、従者の小悪魔2人(おそらく1幕目にも出てきた、6歳くらいの男の子二人が骸骨の仮面を付けてる)が、気になって仕方なかったけど、これは、とても可愛かったから、良いかな。
女性にちょっかい出して、邪険にされてるのとか、面白かった。

ナポリの踊りの2人も、すごく旨いけど、ナポリの踊りで、タンバリンを持つ意味は、分からなかった。こういう、派手にすれば良いんだろ、的な事は止めて欲しい。

ジークフリートの母は、さすがロイヤルバレエ団。
衣装と言い、物腰と言い、実際のイギリスのロイヤルファミリーを彷彿とするほど、気品と気高さと親しみが感じられ、ロイヤルファミリーを良く観察しているんだなと思った。

1幕目と3幕目に、道化役がいると良いなと思ったが、もともと道化役は、プティパ&イワノフの初演には存在しなかった役だったから、無くても仕方ないかな。

全体的に、コール・ド・バレエも、関心しながら、見る事が出来、レベルの高さを伺える。

演出や、振り付けは、もっとアカデミックに改定して欲しい。

ちなみに、ナポリの踊りは、フレデリック・アシュトン振付らしい。うーむ。
演出はアンソニー・ダウエル。このお方、踊る才能はあったのに・・・。

演奏は、バリス・グルージン指揮による東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、この楽団にしては、良く演奏してくれた方だと思う。金管楽器に、やや難ありだが、たまあに音を外したりする程度だったので、特筆する事は無い。むしろ、とてもゆっくり演奏していたので、演奏者側も大変だったのだろう。

踊りを見ていても、「あ。そんなにゆっくり動いたら、間に合わないよ。」と思うけど、実際には、演奏がゆっくりなので、丁度良くなっている。

踊る側からしても、ゆっくり演奏されると、一つ一つのポーズの時間が長くなるので、キープしなければならない時間が必然と長くなり、難易度は、とても高まる。

少しテンポが遅いだけで、難易度は数倍にもなる。演出上、わざとバレエ団の技術力を見せ付けるため、遅めに演奏しているのだろう。

そう言う意味では、やはりモンスター級に高い技術力を誇る、世界一流のバレエ団だと思った。


英国ロイヤル・バレエ団2013年日本公演
《白鳥の湖》
振付 : マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ
ジークフリート王子 : カルロス・アコスタ
ジークフリートの母 : エリザベス・マクゴリン
悪魔、ロットバルト : ギャリー・エイヴィス
ベンノ : ヴァレリー・ヒリストフ

第一幕
パ・ド・トロワ : 金子扶生、崔由姫、ヴァレンティノ・ズケッティ
侍女 : ナタリー・ハリソン、デメルザ・パリッシュ
将軍 : デヴィット・ピカリング
ワルツ : クリスティーナ・アレスティス、ナタリー・ハリソン、ローラ・マカロック
       クリステン・マクナリー、平野亮一、ヴァレリー・ヒリストフ、
       蔵健太、ダヴィット・チェンツェミエック
       エマ・マグワイア、ポール・ケイ
       
第二幕
白鳥のひなたち : エリザベス・ハロッド、エマ・マグワイア
            ロマニー・パイダック、サビーナ・ウェストコーム
二羽の白鳥 : 小林ひかる、イツァーク・メンディザバル

第三幕
式典長 : デヴィット・ピカリング
六人の姫君たち : オリヴィア・カウリー、金子扶生、エマ・マグワイア、マヤラ・マグリ
             ローラ・マカロック、デメルザ・パリッシュ
スペインの踊り : クリステン・マクナリー、イツァール・メンディザベル
            ヨハネス・ステパネク、平野亮一
チャルダッシュ : ヘレン・クロウフォード、ジョナサン・ハウエルズ
ナポリの踊り : ラウラ・モレーラ、リカルド・セルヴェラ
マズルカ : クリスティーナ・アレスティス、ヘイリー・フォースキット、メリッサ・ハミルトン
        ベアトリス・スティックス=ブルネル、蔵健太、エリコ・モンテス、
        ドナルド・トム、トーマス・ホワイトヘッド

第四幕
二羽の白鳥 : 小林ひかる、イツァーク・メンディバル

指揮 : ボリス・グルージン
オーケストラ : 東京シティフィルハーモニック管弦楽団