東京・春・音楽祭の目玉とも言える公演。
ストラヴィンスキー・ザ・バレエ
を見に行った。
東京文化会館にて。

まずは、パトリック・ド・バナによるアポロ。
ミューズを率いるアポロと言えば、バランシン振付が至高とされ、
当時は好評を博したらしいが、現代人のオイラが見ると、やや退屈な作品だ。
ダンサーが汗びっしょりで踊っていて、厳格なバランシンスタイルの大変な振付なのは、分かるが、さほど感心した事が無い。
一つには、ストラヴィンスキーの晩年の作品なので、音楽が丸くなってしまって、退屈だと言うのもあるのだろう。
悪い音楽では無い。お茶をする時のBGMなら、最高の音楽では無いだろうか。

バナによる振付は、まず演出に目を引く。
一緒に見に行った友達と、開幕前は、ピットにオケがいないなんて変だよな~と言っていたが、幕が上がって納得。
オケが舞台上にいる。
しかも舞台上の、更に高い所に、舞台よりも10メートルくらいも高いところに舞台を造っていて、そこで演奏している。
アポロ役のディモ・キリーロフは、超人的なリフトを難なくクリアしていたし、少ないヴァリアシオンも良かった。気味の悪い感じとかも、よくかもし出していた。
秋山珠子のボーイッシュな役作りも良かった。
舞台衣装に袖の長い衣裳があったが、あれは良くなかった。
退屈とも思える作品を、ここまで表現してくれたのは、それなりに面白かった。
しかし、終演後に友達達と話してみると、正直、この作品に好感を抱いた人は居なかったようだ。

そして、ベジャール振付による春の祭典。
バレエは生演奏で見るものだ。そう痛感させられた演目。
オーケストラの奏でる生命の息吹が、そのままダンサー達を躍らせる原動力となる。
都響による演奏は、さすがで、木管や金管が、ピアニッシモからフォルティッシモまで、完璧なほど安定した不協和音を情感迫力豊かに演奏していた。
そして、東京バレエ団によるベジャールの強烈な振付。
ベジャールの振付を、ここまで高い水準で見られるのは、贅沢だ。
東京バレエ団は、ベジャールを躍らせたら世界最高峰と言っても過言では無い。欲目を抜いて、客観的に見ても、最高峰だと断言しても良いと思う。
生贄役の梅澤紘貴は、注目していたダンサーだ。
ベジャール版くりみ割りの猫のフェリックス役では、ベジャールを踊るには今ひとつに感じたが、今回は、完璧なまでにベジャールを昇華して、複雑なヴァリアシオンも、非の打ち所が無い名演技だった。
また、梅澤なりの表現力を身に付けて、自分の踊りを、踊ろうとしているところに、強く好感を持った。まだ若いダンサーなのに、これからの活躍がますます楽しみになったダンサーだ。
生贄役のヒロインは、奈良春夏、まったくノーチェックだったダンサーだが、素晴らしい出来で、鼓動や躍動の一つ一つが、木霊すように伝わり、不思議な魅力のあるダンサーだった。
そしてコール・ド・バレエのレベルの高さ。

ベジャールの作品は、録音で演じられるが、やはり、生演奏だと、まったく迫力も感動も違う。強烈な音楽に強烈な振付。しばらくは終演後も現実の世界に戻る事が出来ないくらい、強烈な世界観に圧倒されてしまう公演だった。

またベジャールの春祭、生演奏でやってくれないかな。
 
ボレロとか、生演奏で出来るものは、なるべく生演奏にシフトして行って欲しいな。

《アポロ》
振付 : パトリック・ド・バナ(新作)
音楽 : ストラヴィンスキー≪ミューズを率いるアポロ≫
ドラマトゥルク : ジャン=フランソワ・ヴァゼル
舞台美術 : アラン・ラガルト
照明 : 喜多村貴
衣裳 : シュテファニー・ボイエルレ
バレエ : 
ディモ・キリーロフ (スペイン国立バレエ プリンシパル)
秋山珠子 (スペイン国立バレエ プリンシパル)
橋本清香 (ウィーン国立バレエ)
アレーナ・クロシュコワ (ウィーン国立バレエ)
演奏 : 長岡京室内アンサンブル

《春の祭典》
振付 : モーリス・ベジャール
音楽 : ストラヴィンスキー
生贄 : 梅澤紘貴、奈良春夏
バレエ : 東京バレエ団
演奏 : 東京都交響楽団
指揮 : ジェームズ・ジャッド