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東京バレエ団の全国巡業公演で《バレエ・ガラ》を見てきた。
横須賀の京急の汐入駅前にあるよこすか芸術劇場まで遠征して来た。
お江戸の都心部に住んでいるので、横須賀はやっぱり遠いなと思った。

といっても東京公演では見られない演目があるから仕方ない。
それによこすか芸術劇場は、好きな劇場だ。ヨーロッパの歌劇場のような馬蹄形のオペラハウス。外観も内観も低予算で出来ているけど、低予算なりに頑張っているところが、なんとも愛らしい劇場だ。

今回のガラ公演はトリプル・ビル。

《テーマとヴァリエーション》
振付 : ジョージ・バランシン
音楽 : ピョートル・I・チャイコフスキー

渡辺理恵 木村和夫
西村真由美、奈良春夏、吉川留衣、川島麻実子
宮本祐宜、梅澤紘貴、森川茉央、松野乃知

あれれ。と思って良く見ると、下の方に吉岡美佳が怪我のため降板した旨が書いてあった。吉岡は楽しみにしていたので、落胆しながら見ていた。
渡辺理恵は、まだ主役を踊った事が無いので、大抜擢な訳だし。
登場すると、渡辺の西洋人のような白皙の肌の美しさが一際目を引く。
ベテランさんのような貫禄があって、技術的なものもクリアしていた。
ポワントの片足立ちのバランスこそ披露しなかったが、全体的によく消化して踊っていた。
最後のリフトも、もう一つだったけれど、ここまで表現してくれたのなら文句なしの良い出来栄えだった。
木村は、安定した演技を見せる。ヴァリアシオンではトゥール・アン・レール、着地と共にピルエット、続けてトゥール・アン・レール、着地と共にピルエット、これを5回くらい安定して繰り返していた。
パ・ド・ドゥの後半やリフトでは、ややバランスを崩すなどの、粗が時折目立ってしまったが、渡辺は代打なので、もしかしたら十分にリハーサルが出来なかったのかもしれない。
若手成長株の8人の男女ペアや、コール・ドの美しさは、とても素敵だった。
バランシンの繊細な美をつむぐ難しい振付を、ここまで高いレベルで見れるのは、やはり嬉しい。

《スプリング・アンド・フォール》
振付 : ジョン・ノイマイヤー
音楽 : アントニン・ドヴォルザーク

第一楽章  後藤晴雄
モデラート  宮本祐宜、梅澤紘貴

第二楽章  小出領子
テンポ・ディ・ヴァルス  西村真由美ー森川茉央、吉川留衣ー梅澤紘貴
               川島麻実子ー宮本祐宜、河合眞里ー原田祥博
               村上美香、河谷まりあ、氷室友

第三楽章  後藤晴雄
スケルツォ、ヴィヴァーチェ  宮本祐宜、梅澤紘貴
                  氷室友、小笠原亮、岡崎隼也、森川茉央、
                  安田峻介、永田雄大、原田祥博
                  小出領子

第四楽章  小出領子ー後藤晴雄
ラルゲット

第五楽章  全員
フィナーレ、アレグロ、ヴィヴァーチェ


ノイマイヤーの名作だ。スプリング・アンド・フォールだからと言って、春と秋と訳してしまってはならない。スプリング=春以外に跳ねると言う意味がある。フォール=秋だけでなく、落ちると言う意味がある。
まさに跳ねたり、落ちたりを繰り返す。
それだけでなく、グラン・アダージオや優雅なパ・ド・ドゥだってある。
跳ねる振付のあとに、落ちる振付があり、また跳ねたりを繰り返したりと、とても見ていて面白く、ノイマイヤーらしい独創性に富んだ良い作品だ。
後藤が、いつも以上に調子が良いように見えた。こういったプロットレスのモダン・バレエなんかを踊ると、とても生き生きとして、踊りに集中して、本領を発揮してくれる。
また小出の超絶的なリフトの美しさやヴァリアシオンやポワントの美しさは、特に印象に残っている。
宮本の安定した演技も、とても感心しながら見ることが出来た。宮本とペアの川島も、目をひいた。
若手の梅澤も、すごく良かったな。技術が安定してきた。


《ボレロ》
振付 : モーリス・ベジャール
音楽 : モーリス・ラヴェル

上野水香
宮本祐宜、柄本弾、梅澤紘貴、森川茉央

ベテランで、ヨーロッパのバレエ団でも主役を踊る東京バレエ団が世界に誇るプリマ、上野水香がボレロのメロディーを踊る。
赤い大きな円卓の上で踊るベジャールの不朽の名作。
この作品は何度見たか分からない。振付まで細かに頭にインプットされてしまった。
上野のファンだけど、上野のボレロを見る機会に恵まれなかったので、とても良いものが見れた。
驚異的な身体能力を誇る一部のダンサーにしか踊れない、とても難易度の高い振付だが、さすが上野、超人的な身体能力で、余裕に決めていくのは、本当にすごかった。
それに、作品としても、すごく面白い。
ボレロは、ベジャールが存命の頃は東京バレエ団と自身のベジャール・バレエ団にしか上演許可を与えなかった事は有名。さすがは世界の東京バレエ団だな~。そして、ここまで表現出来るダンサーがいるのは、やはりスゴイ。
リズムの4人も良かったし、コール・ドのリズムもすごく良かった。

シルヴィ・ギエムやニコラ・ル・リッシュのメロディも見たことがあるけど、今回の上野が一番感動したかもしれない。ギエムやル・リッシュは美しさに欠けるけど(バレエの世界では容姿の美しさも重要、プティパもバランシンもそう述べている。)、上野はスタイルが綺麗で整っていて、顔立ちも悪くないし、ギエムやリッシュのような荒々しさは無いけど、とても洗練されていて、決してオーバーにやり過ぎないところに好感が持てた。

それと個人的な意見に過ぎないが、男性ダンサーがメロディを踊ると、メロディーもリズムも男だらけになってしまって、なんだか美的に良いと思わないので、美しい女性がメロディを踊るのは、絵的にもマッチして、見ていて綺麗だと思う。

終演後は、われんばかりの万雷の拍手が沸き起こり、何度もカーテンが閉じたり開いたりを繰り返して、明るくなってからも、観客が帰るのを渋って、拍手を送っていた。

とても良い公演が見れて、遠征した甲斐があった。
どの作品も、もう一度見てみたいと思った。
とくに上野のボレロは、また見る機会があると良いな~。