日本のバレエ・ファンから熱狂的な支持を受けるダニール・シムキンがメインのガラ公演《インテンシオ》を見てきた。
童顔で背丈も高くないので、まるで少年のようなルックスで、女性ファンがたくさん詰め掛けていた。

今回は、急遽、ロベルト・ボッレと吉田都が出演する事になり、ちょっとしたお得感。

ペーパーフリーのプレイビルには、振付家や音楽家の記載が無い。こんな事は初めてで驚いた。
有料のプログラムを買えって事なのだろうけど、オイラは、年間に50回以上は舞台を見に行くので、その度にプログラムを買っていたら、あっと言う間に寝る場所までもプログラムで溢れかえってしまう。
あれって買っても、あまり見ないで、本棚の肥しになるだけなので、まったく買う気がしない。
本音を言えば、内容も大した事は書いて無い。それで1500円て、ぼったくりも良いところ。1500円もあれば、中古で良質な内容の本が、何冊買えるのだろうか?

安っぽい映像と音楽で、オープニング。
シムキンが踊る映像を薄いスクリーンに映して、そのさらに後ろでダンサー達が何やら踊っている感じ。
今回は、音楽は全て録音テープ。


「Qi(気)」
ダニール・シムキン
コンテンポラリー作品。大きな抑揚なども無く、現代的な静謐な音楽と振付。
さすがだな~とは思うものの、終わると、ちょっと物足りない感じがした。
最初に踊る作品だから、こんなものなのだろうかな。

「葉は色あせて」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ
これは、アントニー・チューダーの振付だったと記憶している。
面白い振付だけど、これと言って心に響く事も無く、アダージオの美しさと、ダンサーの完成度も高いが、なんとなく、こちらも物足りない感じがした。
音楽が録音テープだからなのだろうか?
ケントのスタイルの良さは印象的だ。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
イザベラ・ボイルストン、ホアキン・デ・ルース
ジョージ・バランシンによる傑作。ガラ公演の定番作品だ。
オイラも、大好き。アダージオ部分は、今一つの出来だった。
ダンサー側も、流して演じている感じ。
ヴァリアシオンからは、本気モードで、デ・ルースはピルエットをしながらバロネをしたり、ドゥーブルのトゥール・アン・レールを、続けざまに決めるなど、安定した演技をしていた。

「白鳥の湖より グラン・アダージオ」
イリーナ・コレスニコワ、ウラジミール・シショフ
おそらくレフ・イワーノフ版の振付。コレスニコワの演技力は定評がある。本人もオーバーなくらいの演技をする。
足が美しく長く、グランド・スコンドやパンシェをすると、可憐な優雅さと気品を感じる。
シショフのサポートも良い。
ただ、全体的な完成度は低く感じた。

「椿姫」より、第3幕のパ・ド・ドゥ
ジュリー・ケント ロベルト・ボッレ
ノイマイヤーの振付。
一番、好きな場面だ。お互いの強い欲求をぶつけあうエロチックなシーン。
作品を良く理解した演技力で、超絶的な技巧を流麗に決めながら、息も止まるリフトと、絡み。
ケントとボッレのペアは、さすがだ。
音楽が録音テープである事を忘れてしまうほど、ショパンの音楽と一体となって、洗練された世界観を忠実に彩っていた。
ドラマチックな世界に、すっかり入り込んで見ていた。
終わると、鳴り止まないほどの拍手喝さいと、ブラボーの嵐。
これは、良い舞台を見れた。

「海賊」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン
今回のガラ公演メインのシムキンが踊る。
驚くような超絶技巧を駆使した妙技。ピルエット・ア・ラ・スコンドはトリプル(かかと着けず3回転)もすれば奇跡なのに、オクティブル(かかと着けず8回転)はして、そのまま続けざまにアン・レールして、着地と同時にピルエットてな具合に、すごい事を続ける。グラン・ジュテでの跳躍も高く、滞空時間も驚くほどながい。
コチェトコワも良い。
ただし、はっきり言って退屈だった。
シムキンを見るのも、何度目かだし、ピルエット・ア・ラ・スコンドのオクティブルなら熊川哲也やイワン・ワシーリエフも披露する。
なので、もうクラシックの超超超超絶技巧も、目が慣れてしまって、驚きようが無い。
そして、何より、技術を先行しすぎて、まったく演技や表現力を忘れてしまっている。
これなら、最初からプロットレス・バレエを踊れば良いじゃないか。
物語バレエを踊っている事を忘れないで欲しい。
アリは恋をしていなければならない。
海賊のあらすじを知っている人には、アリは誰に恋をしているの?と聞かれそうだが、数々の名演技を見ていると、たしかにアリは恋をしているのだ。
勇壮な男性的アピールには、やはり必須だと思う。
まったくスポーツ観戦みたいで、退屈になってしまった。

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