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ウィーン国立バレエ団の来日公演を上野の東京文化会館に見に行った。

演目は《ウィンナー・ガラ》
ガラ公演だ。

パリ・オペラ座バレエを定年退職したばかりの元エトワール、マニュエル・ルグリ芸術監督を率いるバレエ団。

ルグリが着任してから、まず行った事は、極端に少なかった年間の公演回数を増やす事、比重の多すぎるゲスト・ダンサーの出演を減らす事、そしてプリンシパルなどのダンサーの階級を設ける事。

バレエと言うと、日本人はお年寄りを中心にヨーロッパのものと考えている人が多く、ヨーロッパのバレエ団は全部が一流レベルだと思っている人もいるようだが、実のところ、そうでも無く、ウィーンでは現代でもオペラや交響楽団が圧倒的に盛んで、バレエは副次的なものとして扱われている。そのため、忌憚の無い言い方をすれば、国立バレエ団でも二流レベル…、と言うか、三流レベルなのが現状だ。
マリア・テレジアの頃から続いているバレエ団で、かのルドルフ・ヌレエフも芸術監督を務めた事のあるバレエ団。歴史もある名門だけど、国民性、地域性だろうね。なぜか良いダンサーがまったく育たない。

しかし、ルグリが大改革をしたのだから、バレエ団がどう変わったのか興味があるし、ルグリも踊るしで、見に行くことに。
日本人が何人か出演している。
わざわざバレエ踊るために日本からウィーンに行かなくてもな~、なんて思うけど、まがりなりにも国立バレエ団だから、あちらの公務員な訳なので安定した生活が送れるし、今後はルグリ芸術監督のもとで研鑽が積めるようになったのだから正解かもしれない。
それに日本人ダンサーはヨーロッパでは重宝される。馬力は劣るものの、高い技術、しっかりした基礎、安定感、表現力、美しさ。
外国では日本車が高級車扱いされるのと似ているかもしれない。(…?)

ウィーンのダンサーは、中欧に位置するが、東欧の血が強いのか、なんとなく日本人からも好感が持てる顔立ちのダンサーが多くて、可愛いらしい子が多かったな~。つまり男女ともに比較的に日本人みたいな童顔なの。それで白皙の肌を持っているんだから、見た目は綺麗だ。

演奏は録音テープ。
東京シティ・フィルが演奏するものと思っていたけど、それはローラン・プティの《こうもり》全幕プロの方だけらしい。


《バッハ組曲第3番》
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:J.S.バッハ

マリア・ヤコヴレワ ロマン・ラツィク
橋本清香 ミハイル・ソスノフスキー

マルタ・ドラスティコワ アレクサンドル・トカチェンコ
アリーチェ・フィレンツェ ドゥミトル・タラン
澤井怜奈 ダヴィデ・ダド

バッハの音楽にノイマイヤーが振付けた作品。G線上のアリアがあるかと思えば、クラヴィーアとかフーガの技法とかも挿入されていたような…?バッハの曲って、有名曲以外は大体同じに聞こえるから、どの曲を使っているのかまでは、よく分からないけど。
ノイマイヤーの振付は好きで、この作品も、なかなか良い作品だ。
ガラ公演のオープニングに相応しい。
これを見て、バレエ団のレベルが引き上げられているのが、分かったけど、特に技術的な面や表現力で大いに感心する事は無く、‘可’と言った感じ。
外国で活躍する日本人ダンサーが出演したのだから、リップサービスでも過剰に誉めるべきなんだろうけどね。
思っていたよりはずっと良かった♪

《アンナ・カレーニナ》よりパ・ド・ドゥ
振付:ボリス・エイフマン
音楽:チャイコフスキー

アンナ:イリーナ・ツィンバル カレーニン:エノ・ペシ

3月に新国立バレエの公演で見逃したやつだ!
エイフマンのアクロバティックでめぐりめぐる難技の数々。これは、すごい!!
振付もすごいし、音楽の使い方もすごいし、何よりダンサーがすごい!
ピッタリと息のあった演技で、難しい振付が滑らかに進んで、うゎ~!と思った。
完璧なペアだった。

《マリー・アントワネット》より
振付:パトリック・ド・バナ
音楽:
ジャン=フィリップ・ラモー
ルイ・ミゲル・コボ
ヴィヴァルディ

マリー・アントワネット:オルガ・エシナ
ルイ16世:ロマン・ラツィク
運命:キリル・クルラーエフ

作品自体が、あんまり面白くないな~。
ダンサーは、まあまあの出来だった。

《スキュー-ウィフ》
振付・衣裳:ポール・ライトフット、ソル・レオン
音楽:ロッシーニ

イオアナ・アヴラム、ミハイル・ソスノフスキー、デニス・チェリェヴィチコ、マーチン・デンプス

始まって、すぐに、あ!セビリアの理髪師の序曲だ!って感じ。
滑稽味あふれるユーモアのある作品。
クラシックとは、全然違う振付だけれど、ダンサー達にとっては、高い技術力の要求される振付だったし、楽しそうに演技をする表現力も要求される。
これは良い作品だし、ダンサー達も技術、演技力、申し分の無い演技で良かったな~♪♪

《グロウ・ストップ》
振付:ヨルマ・エロ 
音楽:モーツアルト フィリップ・グラス

オルガ・エシナ、イリーナ・ツィンバル、リュドミラ・コノヴァロワ、アリーチェ・フィレンツェ、仙頭由貴、アンドレア・ネメトワ、キリル・クルラーエフ、ウラジーミル・シショフ、アッティラ・バコ、エノ・ペシ、イゴール・ミロシュ

これも、良い作品だったな~!グラスの、あのピアノの有名な旋律に振付けるのもセンスが良い。
それに全体的に完成度が高くて、うっとりしながら見た!
これは、バレエ団としても、力を入れて演じた作品なのかな。すごくまとまって綺麗だったし、美しい世界観だった。

《イン・ザ・ナイト》
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:ショパン
ピアノ:イーゴリ・ザプラヴディン

ナタリー・クッシュ 木本全優
アレーナ・クロシュコワ ロマン・ラツィク
ニーナ・ポラコワ マニュエル・ルグリ

これだけは、ピアノ独奏の生演奏。
クッシュと木本の演技は良かった。
クロシュコワとラツィクのペアは、あんまり良くなかったな。
ポラコワとルグリのペア。何これ!すげぇ~!!と思って、感動しながら見ちゃった!
遠い席から見てたし、たいしてプログラムも見てないものだから、最初はルグリだと思わずに見てた訳だけど、踊りを見て、あまりにも今までのダンサーと格違いにずば抜けてるのでビックリ!すごいな~と思って感服しながら見ていた。こんなすごいダンサーがいたんだな~と。で、ハッと気づいて、オペラグラスで、よくよく見るとルグリじゃん!!!
ポラコワも、すごく綺麗で、良いサポートもあって、すごく踊りやすそう!
見ていて、サポートが良いから、あんなに綺麗なプロムナードやフェッテ・トゥールが出来ているのも、素人目にも分かる。もちろんポラコワもレベルが高いわけだけど、何よりルグリが、何一つをとっても動きの全てが完璧に凄すぎる!

《精密な不安定なスリル》
振付・衣裳・照明:ウィリアム・フォーサイス
音楽:シューベルト

リュドミラ・コノヴァコワ、玉井るい、橋本清香、木本全優、デニス・チェリェヴィチコ

フォーサイスの作品にしては、パッとしない作品だけど、悪くは無い。
どことなく、力の入っていない演目に感じた。

《ルートヴィヒ2世-白鳥の王》(世界初演)
振付:パトリック・ド・バナ
音楽:ワーグナー

ルートヴィヒ2世:マニュエル・ルグリ
エリザベート皇后:マリア・ヤコブレワ
湖の貴婦人

こちらは世界初演、正直、作品として良い作品とは思わなかった。
マリー・アントワネットと同じ振付家。
ん~やっぱり似たような印象。
もう少し、面白い作品を考えて欲しいな。まだ若い振付家だから、成長するのを悠長に見ていれば良いのか。
ルグリには、特に大技を見せる振付は用意されていない。一歩ひいた感じの演技。
何よりマリア・ヤコブレワのアチチュード・プロムナードの美しさには心惹かれるものがあった。軸足と逆の足の高さが異様なまでに高く、しなやかで美しい。あんなに足を高く上げながら、ゆったりと余裕の笑顔でプロムナードをしてしまうなんて。もちろんルグリのサポートがあってこそだが、それにしてもすごいと思った。
ルグリがすごいのは当たり前だし、この演目では特にルグリに注目するような振付は無かった。なのでヤコブレワの美しさが、より際立った。

《ライモンダ》よりグラン・パ
振付:ルドルフ・ヌレエフ(プティパ版にもとづく)
音楽:グラズノフ

ライモンダ:オルガ・エシナ
ジャン・ド・ブリエン:ウラジーミル・シショフ
アンリエッテ:アレーナ・クロシュコワ
パ・ド・カトル:アッティラ・バコ、グレイグ・マチューズ、ドゥミトル・タラン、アレクサンドル・トカチェンコ
クレメンスと二人の女性:マルタ・ドラスティコワ、マリア・アラーティ、澤井怜奈

最後にクラシック・バレエの定番。
あ~ここに、これを持ってくるのか~。クラシック・バレエは、まったく誤魔化しが利かない。
パ・ド・カトルの無残な事。
ブリエン役のシショフも、まだまだだ。まったく安定していない。
ライモンダ役と二人の女性は、まあまあの高い技術を持って丁寧に踊っていたけど、大いに感動する事もなく。

正直、全幕プロのプティの『こうもり』をルグリが踊るなら行こうか迷っていたけど、この最後の演目で、全体的な粗が丸見えだったので、行こうと思う気が失せてしまった。

東京バレエ団や新国立バレエの方が、遥かに高い技術で美しく踊るし、これなら牧バレエすらずっと格上のバレエ団に見えてしまう。
地元民の欲目とかは一切要れずに、あくまで客観的な評価だ。

次回の来日までには、もう少し踊れるようになってから、来て欲しいな。