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初台の新国立劇場オペラパレスで牧阿佐美バレエ団《ノートルダム・ド・パリ》を見た。

オペラパレスでの牧バレエの公演は初めて見たかも。
普段の新国バレエとは、客層が違って、せせこましくて優雅な感じがしなかった。ゆうぽうとホールに来たような気になった。

《ノートルダム・ド・パリ》はローラン・プティの最高傑作と言っても良い作品。
舞台セットは巨大なパリ・ノートルダム大聖堂を象ったり、ノートルダムの鐘の屋根裏が出たりと、舞台装置が凝っている。抽象的なデザインでそれほどお金はかかっていないが巨大なため、おそらく東京で上演可能な劇場はオペラパレスだけであろう。

こういったコンテンポラリー作品は、コール・ドのレベルが如実に出るのだが、コール・ドのレベルに関してはさすがは日本のバレエ団。素晴らしいアンサンブルだ。技術的にも表現的にもクリアしている。もう少しピッタリと揃って欲しいところだけれど、悪くはなかった。コール・ドは日本のバレエ団の強みだと思う。

まず始めにコール・ドの事を書いたのは、この作品の見所の一つはコール・ドの使い方。
もともと、レビューやミュージカルの振付を手がけたプティだが、持ち前のバレエ団だったマルセイユ国立バレエは、こじんまりとしたバレエ団だったので、比較的に少人数で構成された作品が多かった。
では何故この作品では、こんなにもコール・ドが登場するかと言うと、大バレエ団のパリ・オペラ座バレエ団に委嘱されて作った作品なので、意識してコール・ドを多様しているとオイラは考察している。
序盤の不具者をよそおい物乞いをしているパリの民衆や、夜のパリの街から這い出てくる赤い服の奇妙な動きをする人々はパリの怨霊みたいなものを表現している。

そしてボリショイ・バレエから客演のエスメラルダ役のマリーヤ・アレクサンドロワ、腕のしなりが素晴らしく滑らかで、パッとすぐに思い出したのが白鳥湖のオデット姫。
そう言えば、ボリショイ・バレエでは、白鳥湖の好演で話題をさらっていた。オイラは日程的に行けなかったので、ルンキナを見たが、ルンキナはまったく腕のしなりが良くなくて、2幕目のグラン・アダージオはあまり良いと思わなかった。
アレクサンドロワの腕を見たら、アレクサンドロワの白鳥湖がやっぱり見たかったな~と思ってしまった。
また、パ・ド・ドゥでのリフトの難易度の高い事、高い事。
ヴァリアシオンでも、クロワゼのポーズ一つ取っても、腰の入れ方が違った。しなやかにくねらすと言うか。足の上がる角度も綺麗。
ただ全体的に技巧的な面に関しては、意図的にややレベルを落としていてようにも思う。
相手役の菊池研にある程度合わせていたのだろう。

菊池研は16歳の時にプティに見出されて主役に抜擢された経緯を持つ。
何度か見ているダンサーで上手かったので、期待していたけど、あんまりだった。
カジモド役は片腕を上げて曲げながら奇怪な動きをする役だけど、まったく奇怪な動きが出来てなかった。
それと見せ所のヴァリアシオンもカットしていた。
ドゥーブル・トゥール・アン・レールの連続も良かったけど、カジモド役となると美しく決めては行けないが、ただわざと軸をぶらしてバランスを崩せば良い訳では無い。
もっと違った解釈と独特のテクニックが必要だろう。頗る高い表現力が要求される役なので、さらに研磨する必要がある。
リフトのサポートは良く出来ていたと思う。
ロマンティック・バレエなんかは上手いと素直に思うダンサーだけれど。

フロロ役の中家正博は、ジャンプの時に足が200度以上も開くのが凄かった。中家の得意技なのか、何度か披露してくれた。
何気ない所作なども含めて、男性ソリスト3人の中では、一番、際立っていた。
パ・ド・トロワでも中家の動きに注目して見た。
ただ見せ場のヴァリアシオンはカットされてていた。

フェビュス役の逸見智彦、まったく印象に残っていない。特に何も思わなかったので、逆にエスメラルダとのパ・ド・ドゥのサポートは、悪くなかったんだろう。こちらも見せ場のヴァリアシオンはカットしていた。

今回の公演をビデオとかで見返して確認している訳では無いので、正確な事は言えないが、
カジモド、フロロ、フェビュス、の男性3人が主要人物だけれど、それぞれの見せ場のヴァリアシオンがカットされてしまっていたと思う。

原版よりも終演時刻が早いので、もっと他にもカットされてしまっていたのかもしれない。

パリ・オペラ座バレエ団の好演した映像を持っているが、こちらはイザベル・ゲランがエスメラルダ役、男性3人はニコラ・ル・リッシュ、ローラン・イェール、マニュエル・ルグリと言ったエトワール達4人の競演で、素晴らしい映像だ。
日本では牧バレエのみで上演されている。
オペラ座のエトワールと同じ事が出来ると思ってはいなかったが、見せ場のヴァリアシオンは、せめてカットはしないで、出来るところまでやって欲しかったな~。

パリ・オペラ座バレエのピットでよくタクトを取っているデヴィッド・ガルフォースが指揮。
楽団は、東京ニューシティ管弦楽団。
やはり綺麗に演奏してくれた。細かな事を言えば金管の音がたまに上ずってしまっていたけど、それほど気にはならなかった。
綺麗にまとめていた演奏で、楽団員からも信頼されているのがよく分かったし、なかなかの演奏だった。

バレエ公演の出来としては、期待していただけに疑問符の付いてしまう内容だったけど、
マリーヤ・アレクサンドロワの好演が見れた事。イブ・サン・ローランの舞台衣装や巨大な舞台セットを生で見れた事。演奏が良かった事。コール・ドが良かった事。
十分にチケットの元は取れたと思う。

あとの牧バレエのソリストの成長は、我々観客側は実に気長に悠長に見て育てて行かなければならないのかな。

牧阿佐美バレエ団《ノートルダム・ド・パリ》
振付:ローラン・プティ
音楽:モーリス・ジャール

指揮:デヴィッド・ガルフォース
東京ニューシティ管弦楽団

エスメラルダ:マリーヤ・アレクサンドロワ
カジモド:菊池研
フロロ:中家正博
フェビュス:逸見智彦