

Love from Paris
エトワール
フランス・バレエのエレガンス
と、ちょっと、こっぱずかしくなるようなタイトルの付いたバレエ公演に行ってきた。
世界一の伝統と歴史を誇るパリ・オペラ座バレエからエトワールが4人、プルミエール・ダンスーズ、プルミエ・ダンスール、スジェ、計10人が来日し、ガラを披露してくれた。
バレエは、生音楽で見るものなので、録音の音楽で見る事には躊躇したけれど、これだけ豪華なキャストで、短編作品や長編作品の良い所取りのガラのパ・ド・ドゥばかりを見れるのは、パリでもなかなか見れない贅沢な舞台。それに生オケで無い分、チケット代が比較的安い。
パリから東京までわざわざ出稼ぎに来ているのだから生オケにこだわる必要は無い。
エトワールとは、パリ・オペラ座の最高位のダンサーの称号で、他のバレエ団では主にプリンシパルに相当し、卓越した技術と観客からの人気によって与えられる。
プルミエールは、バレエ試験で上り詰められる最高位と聞いた事がある。つまり技術はエトワールと同じくらい。スジェは他のバレエ団ではソリストやアーティストに相当する。将来のエトワールの有望株の若いダンサー達だ。スジェと言っても、主役に抜擢される事もあるし、他の中堅バレエ団なら、最高位のプリンシパルに相当する技術を有している。
日本でのバレエ公演は大体7割くらいが女性客なのだけれど、今回の公演は9、5割以上が女性客だった。20人いれば19人が女性客と言った感じ。男性アイドルのライブにでも行ったみたいで、ちょっと肩身が狭かったな~。
笑っていいともに宣伝に出たのも男性ダンサー4人だったみたいだ。(画像、左から、ガニオ、オファルト、マニュネ、ビクントール)確かにイケメン達だから女性客が多いのも分かるけど、女性ダンサー達も美しい人や愛らしい人ばかりなのにな~。本当に美男美女の粒ぞろい。それにほとんどが20歳代の若いダンサー。
実は、去年の8月にもオペラ座バレエのエトワール来日ガラの予定があって楽しみにしていた。こちらは引退間近の30歳代以上の古株ダンサーを集めていたけど、震災や原発の影響で中止になってしまって落胆していた。
そして急遽、話しの決まった今回の公演で、会場が無かったためか、場所は三軒茶屋にある昭和女子大学内の人見記念講堂。初めて行った会場だ。
たまぁにクラシックやバレエ公演をしているらしいけど、今まで行く機会は無かった。駅からもけっこう歩いた。
1980年に開館した人見記念講堂は、カール・ベーム率いるウィーンフィルが演奏したり、カルロス・クライバーがオペレッタ『こうもり』を演奏したりと日本のクラシックの殿堂として君臨したが、6年後に開館したサントリーホールにその座を取って変わられ、その後も都内ではクラシックの専用ホールが次々とオープンするなど、世界一クラシック専用ホールを有する街へと変貌を遂げ、人見記念講堂のクラシック上演の役目は終えたように思う。
大学の講堂だから建物も安っぽい。
でも。ここしか会場が開いていなかったんだろうね~。
今回のバレエに話を戻して。
バランシン振付のソナチネに始まる。ここだけ音楽は生演奏。と言ってもピアノだけ。
バランシン振付は主に舞台セットも無く、ストーリーの無いプロットレス・バレエ。衣装も簡素なので、ダンサーの動きが如実に見える。まったく誤魔化しの利かないバレエとも言える。
すごく良いんだけど、バランシンのソナチネ自体が華の無い作品で、これと言った見所も無く、ちょっと退屈だった。最初の1作品目と言う事で、これから開幕だよ~って前座みたいな感覚なのかな。
エトワールのジルベールも出演しているのに前座ってのも変な感じだけれど、一発目はわざと地味な演目を選んだように思える。
そしてヌレエフ版のロミオとジュリエット、マクミラン版を基本としているけど、人間技とは思えないほどの卓越した動き。
素晴らしい振付で、すごく良かった。
ローラン・プティ振付の狼。
狼男と美女のパ・ド・ドゥ、プティらしい洒脱でユニークな作品。これも面白い。技術も、さすが卓越している。
バランシン振付のチャコフスキー・パ・ド・ドゥ、バランシンの代表作で、こちらはソナチネと違って見所が満載。グラン・パ・ド・ドゥ形式で、アダージオに始まり、男性ヴァリアシオン、女性ヴァリアシオンと続きコーダで締めくくり。
二人とも、まだスジェだと言うのに、本当に素晴らしい出来で圧巻だった。技術的な事を細かく賛美していたらキリが無いくらいスゴイ演技だった。
前半で一番印象に残った作品だった。
そしてクランコ振付のオネーギン、エトワールのガニオとシアラヴォラのペアのパ・ド・ドゥで前半を締めくくり。素晴らしい演技だったのは言うまでも無い。オネーギンを全幕で、まだ見たことが無いので早くみたいな~。チャイコフスキーの音楽の使い方も良いし、振付もすごいし名作だな。
休憩を挟んで後半
後半はジゼルで開幕。第二幕のウィリーになったジゼルとアルブレヒトの墓場でのパ・ド・ドゥ、すごく好きなシーンだ。
きれいなアダージオ、やっぱり素晴らしい。抜群の安定感。
マルティネズ振付のドリープ組曲。バレエ音楽の父とも言われるレオ・ドリープの曲を組み合わせた作品。マルティネズは引退したばかりの元エトワールだな~。
これも作品も素晴らしかったし、ダンサーの技術も凄すぎる。
そして日本初演のドガの小さな踊り子、パトリス・バールの振付。
これも凄かった。
特に女性ダンサーが踵を床に付けずピルエットを5回転したのは初めて見た。
女性ダンサーって踵を床に付けないでピルエットするのって3回転までじゃなかったのか。3回転でも凄いダンサーしかしないのに。楽々とポワントでピルエットのクインティブル。凄すぎる。
しかもそんな超絶技巧を見せてくれた女性ダンサーのシャルリーヌ・ギゼンタナーは階級がスジェと言うから、オペラ座バレエ団と言うのは、怪人達の世界だ。
何もピルエットに限った事で無く、ジュテなんかの大技も、本当に凄かった。
そしてエトワール二人によるローラン・プティのランデブー。プティの美女と破滅の美学。
若い男性がパリの街で出会った美女とパ・ド・ドゥを踊るが、実は美女は死神。最後はパ・ド・ドゥを踊りながら、死神が扮した美女が若い男性の喉元をカミソリで掻っ捌いて凄惨な中、幕を閉じる。
すごく好きな作品だ。
目を見張るような難易度の高い技術。
そして、さすがはエトワールの二人、シアラヴォラとペッシュ、技術が優れているだけでなく、演技も凄く良い。
耽美的な雰囲気が良く出ていて、20世紀中葉の退廃的な世界観を感じる。この作品が発表されたのも、まだ第二次世界大戦中、プティは弱冠21歳の若かりし頃。若き天才の破滅の美学。素晴らしい。
最後は、マクミラン振付のマノン。
こちらもエトワール二人、ジルベールとガニオのペア。
やっぱり、すごく良かった!
マクミラン振付はダイナミックでありながら、自然な動きをしなければならないので、とにかく難しい。
ここで終幕となる。
前半も凄かったけど、後半はもっと凄かった。
大盛況だったのは言うまでも無く、カーテン・コールが何度も行われ、観客達も終わりを惜しむかのように、盛大な拍手をしていた。
本当に素晴らしい舞台だったな~。
Love from Paris
エトワール
フランス・バレエのエレガンス。
(E)=エトワール (P)=プルミエ (S)=スジェ
『ソナチネ』振付:バランシン 音楽:ラヴェル(E)ドロテ・ジルベール/(P)フロリアン・マニュネ『ロミオとジュリエット』第一幕よりマドリガル振付:ヌレエフ 音楽:プロコフィエフ(S)シャルリール・ギゼンダナー/(P)ジョシュア・オファルトローラン・プティの『狼』 “Le Loup”振付:プティ 音楽:デュティユー(P)ミリアム・ウルド=ブラーム/(E)バンジャマン・ペッシュ『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』振付:バランシン 音楽:チャイコフスキー(S)マチルド・フルステ/(S)ヤニック・ビトンクール『オネーギン』 より第3幕手紙のパ・ド・ドゥ振付:クランコ 音楽:チャイコフスキー(E)イザベル・シアラヴォラ/(E)マチュー・ガニオENTRACTE 休憩『ジゼル』 第二幕より振付:プティパ コラーリ ジュール・ペロー 音楽:アドルフ・アダン(P)ミリアム・ウルド=ブラーム/(P)ジョシュア・オファルト『ドリーブ組曲』振付:マルティネス 音楽:ドリーブ(S)マチルド・フルステ/(P)フロリアン・マニュネ『ドガの小さな踊り子』振付:バール 音楽:ルヴァイヤン(S)シャルリール・ギゼンダナー/(S)ヤニック・ビトンクールローラン・プティの『ランデブー』振付:プティ 音楽:ビゼー(E)イザベル・シアラヴォラ/(E)バンジャマン・ペッシュ『マノン』より寝室のパ・ド・ドゥ振付:マクミラン 音楽:マスネ(E)ドロテ・ジルベール/(E)マチュー・ガニオ