“ジャッジメント”
早いっ‼︎
自分でも思ったのだが、読むのが早い!
もう読んだのかい?野村よ?
はい、もう読んだのです。
もう少しで10月の舞台の稽古が始まるから、そしたら本より台本読む時間のが長くなる。
だからこそ、今ガガッと読んでます。
今回、ご紹介する本は…
小林由香の“ジャッジメント”です。
なんと、この小林さん、これがデビュー作。
しかも1歳だけ年上。
ハァ〜小林さん!俺を楽しませてくれ!
さて、なぜこの“ジャッジメント”って本をチョイスしたかというと“好きな作家の本だから。”って訳じゃない。
そりゃそうだよ、だって小林由香のデビュー作なんだから。
じゃあ、なんでかというと俺は“新しい法律”がテーマの本が好きなのよ。
例えば高見広春の“バトル・ロワイヤル”。
これはBR法によって、高校生が殺し合う話。
とか、山田宗樹の“百年法”。
不老不死ウィルスによって人びとが死ななくなった世界で、世界の人口が爆発的に増えてしまう為、100年後には安楽死させるという法律がある設定。
こうゆうのの何が好きかって、高校生が殺し合うとか国が安楽死させるとか、あり得ない世界観をどう細かいディテールで作り込んで、読者に入り込ませるか?納得させるか?それがシッカリしてると、その仮想現実の世界に入り込めて面白いんだよね。
さて、今回ご紹介する“ジャッジメント”。
これもその新しい法律の話です。
だから、購入しました。
犯罪が増加する一方の日本で、目には目を歯には歯を…治安維持と公平性を重視した法律が生まれた。
“復讐法”
復讐法は、犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できるもの。
ただし復讐法を選んだ場合、被害者またはそれに準ずる者が自らの手で刑を執行しなければならない。
要は、親や子、旦那や奥さんが例えば加害者に胸をナイフで刺されて殺された場合、その被害者の身近な人が犯人の胸をナイフで刺して殺す事ができる、しかも合法的に…という話。
俺は最初、本屋でその内容を知った時、この復讐法を施行する上での政治家の苦悩や葛藤、さらには施行後の社会の混乱…なんてのが描かれてると思ったのよ。
ところが、読んでみたら、まぁ〜裏切られたね!
良い意味で!
そうゆう難しい話じゃなくて、もっとシンプルに殺された遺族の心の揺れ動き、そして殺した加害者の真の理由なんかがあって、なんと…
すげぇ泣けるのよ。
復讐法の5つの判例があって、事件も様々。
・サイレン…リンチされ殺された少年の父親と主犯格の少年。
・ボーダー…おばあちゃんを殺した孫娘と母親。
・アンカー…無差別殺人を行った犯人と、殺された3人の被害者の近親者。
・フェイク…孫を救う為に、孫の友達を殺した宗教家と殺された子供の母親。
・ジャッジメント…5歳の娘を餓死させた母親と内縁の夫と、その母親の息子でもあり餓死した子の兄。
色んな殺人事件のパターンがあって、読んでて飽きない。
泣けるからって、復讐法を選びながらも、結局は加害者をみんな許すのか?というとそんな事はない。
5つの話で、復讐法絡みで4人死んでます。
この“絡み”ってのがポイントなんだけど、詳しく話すとネタバレになるから伏せときましょ。
この5つの話の中で、俺が好き……というか、すげぇ泣いたのが…
おばあちゃんを殺した孫娘と母親の“ボーダー”。
事件の概要だけしか分からない序盤は、孫娘・エレナの冷血な部分が垣間見えるエピソードが並ぶ。
しかし、後半にそのエピソードの全てに理由があり、序盤のエレナのイメージがどっこい覆る。
そして、オチ…。
ボーダーってのも、かなり良いタイトルだね。
“タイトルが良い”って意味では、その次の無差別殺人の話のタイトルが秀逸だね。
“負のバトンを次の人に渡さない”
本当はバトンを渡さなければ自分も苦しいし、相手も許せないんだけど、歯を食いしばってアンカーになるっていう、かなり考えさせられるお話。
復讐法っていう設定はかなりぶっ飛んでるけど、中身は人間の脆さや弱さを描きつつ、結局は身近な人への愛や想いってのがいかに大事か…っていう事が読み取れた本でした。
よかったら、読書の参考ににしてください。