“闇に香る嘘”
今回はかなり輝かしい受賞の数々を獲得した、間違いない作品。
“江戸川乱歩賞受賞”
“このミステリーがすごい!3位”
“週刊文春ミステリーベスト10 2位”
その作品とは…
下村敦史の“闇に香る嘘”です。
さて主人公なんだけど、70歳手前のおじいちゃん、しかも盲目、しかも中国残留孤児だった。
その主人公、村上がある時、同じく残留孤児で母親と住んでいる兄は、本物の兄かどうか疑問に思い始める。
そこに、密入国してきた中国人、透析を受ける孫娘、自分には身に覚えのない自分を見たという人、見る事は出来ないが確実にそこにいる無言の人、嘘を付く残留孤児支援センターの人…
こんなんが絡んで来て、謎!謎!謎!
頭の中に謎が溢れ出す。
そんな数々の謎を一つ一つ、丁寧に回収していくのが見事!
主人公が“見えない”ってのが、キーポイントなんですね。
しかし、ミステリーを進めたいから“見えない”事にしよう!なんて安易な感じじゃなくて、視覚障害のディティールがものすごく丁寧。
途中から盲目になった人が生活する上での恐怖。
その事によって、周りへの疑念、嫉妬、責任転嫁、心の歪みなんかが、細かく描かれている。
“きっと俺でもそうなるかもな…。”
なんて考えさせられながら、上質なミステリーが展開されていく。
これは、沢山の賞を受賞するに値する本です。
よかったら、読書の参考にしてください。