続・見放題。 | 江戸むらさき 野村オフィシャルブログ『Men's クラブ』powered by アメブロ

続・見放題。

ホテルの一室。



けたたましく目覚ましの音が鳴り、ベッドに根が生えたような重い体引き起こし、シャワーを浴びる。



朝食をとり、ルームウェアから着替え、ロケに向かう。



技術さんが準備を終え、ディレクターがキューを振る。




しかし、言葉が出て来ない…。



頭では言おうとしている言葉が整理されているのに、言葉が出てこない…。





やはり…




昨日の事を引きずっているのか…。




目を閉じると、鮮明に蘇る俺の手の中でグッタリと横たわるポニーの、物憂げな瞳…。



ギュッと掴んだら潰れてしまいそうな、柔らかいポニーの体…。




ダメだ…。




こんな気持ちのままじゃ、仕事なんてできないよっ!




自暴自棄になり、駆け出しそうになった時に、俺の左側から温かく心地良い光を感じる…。




そうだ…。




このお方が、いつも俺の側で見守ってくれたじゃないか!





磯山先生。




AV界の雄、そして生ける伝説として今までAV迷宮に迷い込んだ多くの子羊達を正しき道に導いてくださった、磯山先生。




恥も外聞もかなぐり捨て、磯山先生に教えを乞う事に…。




野‘先生、昨日AVを観ようと入力切替を行ったのですが、全く映りませんでした…。やはり私の日頃の行いが悪いのでしょうか…?'




すると磯山先生は、温かく優しい瞳で真っ直ぐ私を見据え、こうおっしゃりました。






磯‘野村くん。AVは2チャンネルだよ。'




そう言われた僕に、一筋の光が差し、目に見える物、すべてが眩しいばかりに輝き出して、躍動し始めました。




そしていつの間にか、止めどなく涙が出ていました…。




俺は今まで何を難しく考えていたんだっ?!




簡単な事じゃないか!




TVのリモコンを持ち、2と書かれているボタンを押せば、それで済む事じゃないか!





何かを掴んだ俺は、スムーズに仕事を済ませ、スタッフさんとの飲みに興じ、部屋へと戻った。




昨日まで、嫌な思い出しか無い部屋には戻りたく無かった…。




でも、今は違う!



ハッキリと、そう言える。




テーブルの上に置かれたリモコンを手に持ち、先生のおっしゃっていた通り、電源を入れ、2を押す。




突如画面から流れ出す、躍動的な映像。



女性が歓喜の雄叫びを上げ、男性が本能のままに暴れ狂う。




男女が溶け合い、一つとなり、互いに快楽の壁を突き破ろうと切磋琢磨する。




食い入るように観ていた俺の耳に…





ヒヒィ~ン!ヒヒィ~ン!




鳴き声のする方へ目を向けると、今にもズボンを突き破ろうとする暴れ馬の神々しい姿が…。




その姿に、昨日までの弱々しく震えるポニーの面影は無かった。





神々しく暴れる馬の馬体に、振り落とされないように強くしがみつき、俺は走った!




走った!走った!走った!走った!走った!




画面の男女の動きに呼応するかの如く、スピードを上げる暴れ馬。





そして歓喜の、ゴ~ル!!!




頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなっていた…。




磯山先生…これでイイんですよね…?




暴れ馬と共に走った時間…それは一瞬だったのかもしれない、はたまた一時間だったのかもしれない…。




どちらにせよ、俺には掛け替えのない時間だった…。




最後に共に走ったお前にお礼が言いたい。




そう思い、辺りを見回したが暴れ馬の姿は忽然と消えていた…。




そして、さっきまで暴れ馬がいた場所には…









なぜかポニーがグッタリと横たわっていた…。